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四郎、初めての高遠入り

 堺にいる原蹴煤を高遠に迎い入れる準備の為、四郎はまだ一度も訪れた事が無い高遠城へ向かう事になった。


 四郎は、義父の高遠紀伊守頼継、傅役の安倍加賀守宗貞、陰陽師の小笠原源与斎、三ツ目衆忍び頭の窪谷又五郎家房、それに近侍衆や小姓の赤口兎丸や藤沢松千代を伴って高遠領へ向かった。


 途中諏訪に寄り、叔父上の諏訪刑部大輔頼重と嫡男諏訪寅王丸に会い、一晩宿泊してから翌日高遠城に入った。


 高遠領には、高遠家家臣や領民達が久し振りに義父の高遠紀州が戻られたのと、現当主高遠四郎が初めて高遠城に入場した事に大い湧いて、まるで城下町ではお祭り騒ぎになっていた。


 四郎は何故大騒ぎしているのか、義父の高遠紀州に聞いてみた。



義父上(ちちうえ)、何故こんなに城下の者達が我らの高遠入りを歓迎してくれてるのでしょうか?」



 すると高遠紀州は、逆に四郎が何故驚くのだと言わんばかりに答えてくれた。



「四郎よ、其方(そなた)が一昨年当主になられた後、高遠領内に新しき農業技術や新式農機具が入り、農耕用家畜を殖やす牧場も作られて、近いうちに百姓達に農耕牛などが貸す事になるだろうし、山塩の生産や新しく焼煉瓦窯やギヤマン工房や椎茸栽培などを去年から行うようになったので、徐々に領民の暮らしが楽になった事を実感しているのだ。」


「それは、武田領内全体に広がっていますので、今後皆の生活をもっと豊かにしたいですし、今後訪れる飢饉への対策も普段から怠る事ない様に民衆に広めたいです。」


「なるほどな、四郎は今はまだ道半ばであるのだな。儂が生きている間にもこの高遠領には、桃源郷の様な生活が訪れる事になれば良いと思ってる。」



 義父は四十を超えてる為、高遠領の将来が明るい事にとても羨んでた為、四郎も義父に励ましの言葉をかけた。



義父上(ちちうえ)はまだ若いのだから、これからも政務に力を発揮して未熟なこの俺を支えてもらいたいのですよ。」


「四郎は、儂にまだまだ隠居を許さぬぬと言うのか?」


「この地を豊かに変えてゆくには、義父上(ちちうえ)の力が絶対に必要です。戦うばかりではなく、この地をどこにも負けぬ豊穣な地に出来るのは、義父上(ちちうえ)がいるからですぞ。」



 その様な話を親子で行ってる間にも高遠城の大手門を潜り、二の丸に入った所で高遠家宿老の保科弾正忠正俊等高遠家家臣団が高遠紀州と四郎を待ってて、出迎えてくれた。



「若殿に大殿、お帰りなさいませ。我ら高遠家家臣一同は、この日が来るのを一日千秋と御待ちしていましたぞ。」



 そう言うと出迎えてくれた高遠家家臣達は一斉に平伏したので、義父上(ちちうえ)は満足そうに(うなず)いていたが、四郎としてはそこまで(かしこ)まってる家臣達に驚いてしまった。



「四郎よ、皆が我らを歓迎してくれているので、そんなに驚く顔を見せるでない。この後、城で我らの帰還の宴を行うので、家臣達の前では堂々としておるのだぞ。」



 高遠家の宴は、それ程豊かな食材など出てこず漬け物や干し魚などが主流だったので、今後そういう宴も増えるのなら、前世で記憶してた何か新しい御馳走なども考えておけば良かったと、四郎は思ったが後の祭りだった。


 前世では寝たきりだった為、食事になど興味が向かず、今更ながら食に対しての興味が湧き始めたので、いずれ上方の料理やあちこちの名物など集めてみようと、この宴に参加して思ってしまった。


 それでもこれらの食材は、戦国時代の片田舎の酒盛りにとっては御馳走だったらしく、家臣一同は本当に美味しそうに平らげてしまい、出された大皿には一つも食材が残っていなかった。


 宴が終わると、その後解散して明日から新たな日常がやって来る事になる。


 四郎は、明日から原蹴煤がやって来るまで、受け入れ準備を行い、城下町には四郎が連れてきた家臣達や原蹴煤が暮らす屋敷の普請も指示しなければいけなかった。


 また燃料問題で一つ解決する情報が解った四郎は、伊那谷の奥深くの泥炭を採取して、乾かす事で燃料なる事が前世の記憶の中で解った為、明日にでも家臣と領民を動員して沢山泥炭を集めて、暖房や鉄炉や耐火煉瓦窯やギヤマン炉等の燃料に使う事にした。


 比較的近くで泥炭が取れるので領民には乾燥させた泥炭を十貫(37.5kg)運べば、銅銭五文で購入すると発表したら、百姓は担いだり馬の背に乗せて、(たちま)ち数日で一万貫以上の泥炭が集まり、泥炭を一度集めるのを止めて領民に三貫近く銅銭を支払ってやった。


 集めた泥炭は、天日干しにしてさらに乾かして水分が無くなった泥炭を燃やしてみると燃料として十分使えるので、これからは定期的に集める事にした。


 四郎が乾いた泥炭を燃料として使う内に高遠領民達も真似して、木炭や薪よりも豊富にある泥炭を燃料にして、木炭や薪は別の事に使えるようになったので、森林資源も無駄に燃やして減らす事が少なくなっていった。


 四郎は、数日後座光寺左京進頼近と越後守貞信親子を呼び作事奉行、以前鉄炉や石灰窯を作るのに諏訪家から耐火煉瓦を購入していたが、今度は高遠家で耐火煉瓦作る土窯を製作するように命じた。


 また山田伯耆守頼実、山田弥助親子を高遠領の薪奉行に任じて、泥炭が沢山あるので、これを使って塩釜を増やしい塩の増産に励むように命じておいた。


 続いて、木下日吉丸を呼び出して、冬場に手が空いてる百姓を集めて、四郎に付いてき日吉丸も含む家臣達の家屋を作る様に命じ、普請奉行補佐として高遠領で家族が暮らせるような物を作る様に命じた。


 その時日吉丸は尾張にいる残された家族の事で、四郎に聞いてきた。



「四郎様、もし家臣達の家屋が完成したら、最近おいらの継父が亡くなったので、高遠に呼んで良いですか?」


「勿論、家族いや親戚一同呼んで構わんよ。日吉丸も今は十三だろう、家族が高遠に呼んだら元服をしてやろうじゃないか。そして一家の大黒柱になるんだぞ。」


「しっ、四郎様!! 大変あり難き幸せです!!」


「四郎様!! 皆の家屋を立てるに当たって、おいらのおっかあの従兄妹に戦場で怪我して、武士を廃業した鍛冶を知っております。もし宜しければ高遠に連れてきて宜しいでしょうか!?」



 ・・・・・ん? もしかすると秀吉軍団の誰かをここに連れてきてくれるのか? それは大歓迎だな・・・・

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