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百姓は、尊いのです

兄弟相手に、お米や作物の大切さを語る四郎

 父上から、たくさんの家臣達を俺の傍に付けられて数日後、兄弟姉妹相手に第一回目の講習を行う事にした。もちろん俺は母上に抱きかかえながら語るので、まるで俺は腹話術人形みたいに見えてると思う。(実際母上から、言葉使いとかの修正をされていた。)



「太郎兄上、二郎兄上、それに昨日居なかった三郎兄上、梅姉上もまずは、我が武田家にとって一番大切な話から始めます。」


「「「はいっ!!!」」」



 三人は、声を合わせて俺の言葉に返答する。ちなみまだ赤子の見姫は、不参加だ。


 初回は、俺も人を指導した事がないので、まずは一番大事な食料の事を語ろう。俺達の後ろには傅役の跡部攀桂斎と乳母の比呂夫婦が控えており、父兄参観みたいな環境で行う事になった。


 まあ、前世の俺にそんな経験ないけどね。



「兄上姉上達に聞きます。生きるのに一番大切な物とはなんですか?」



 すると積極的に手を挙げたのが三郎兄上。



「あい、いちばんたいせつなのはおいしいごはんでしゅ」



「うんうん、それは本当に大切だよね。でも他に何かありませんか?」



 続いて、梅姉上が手を挙げる。



「それは、神様仏様です!もし罰当たりな事をやったら、天罰が下ります。」


「それはとても恐ろしい事ですね。でももっと大切な事があります。」



 すると二郎兄上が言う。


「それは金銀銅銭のお金かな?貧しいと何も買えない・・・・」


「兄上、凄く惜しいです。それは二番目です。」



 太郎兄上が最後に言う。



「ここは嫡男の(それがし)が当てないとならないな。四郎よ、一番大切なのは領民だ。」



 流石太郎兄上、真っ先に領民保護を考えておられる。



「太郎兄上、正解です。僕はこの甲斐や信濃の領民が苦しむ姿を見たくありません。さてここまでは師範や傅役から学べる事。僕が知った知識は、領民が幸せにする方法です。」


「はっきり言って、武士同士争いが起きる原因の一つは食料の奪い合いです。特に太郎兄上が誕生した頃から、甲州を始め日ノ本各地が飢饉に陥り、不足した食料の奪い合いが戦いを引き起こしているのです。」


「甲斐や信濃の中に、たくさんの流民が周辺国から流れ込み、河原者や山家者も増大してます。さらに人買いも横行してて、各国人衆も綺麗事など言えない程、酷い事を民衆にやってきました。」


「それもこれも人が生きる上で最低限な条件、食べ物が絶対的に不足しているからです。だから僕は食べ物を増やす知識を最初に兄上姉上に教えたいと思います。」


「「「「はい、わかりました。」」」」


「現状、食料増産の為には様々な事が不足しておりますが、まず田植えの事です。」



 すると後ろにいた跡部攀桂斎がぼそりと独り言を言う。



「田植え? 何か問題でもあるのかな。」


「田圃の苗は、条間隔一尺づつ開けて苗付けしていくと、それだけで秋には稔豊かな稲穂が成ります。それを正常植えと言いましょうか。百姓にも銭をかけず作れる道具、正常植定規の作り方を教えます。これを三月までに百姓に製作させます。」


「「「「はい、わかりました。」」」」


「土を耕すのも重労働です。この辺りの百姓は平鍬(ひらくわ)が多いですが、粘土質や湿地向きの備中鍬と言うのも使われておりました。西国では農耕牛を導入して、それに大型の(からすき)を引かせて、労働力の軽減を行ってますが、畿内より東の地方はまだまだ普及がしておりません。」


「あと百姓が苦労するのが除草ですが、横にした円筒に釘歯を付けて、稲を痛めぬように覆い板を円筒に被せた器具を作ってもらいたいです。そして兄上姉上には、僕の代わりに職人に作り方を指導して、武田家の領民の暮らしを知ってください。」


「「「「はい、わかりました。」」」」


「あと秋になって収穫期も脱穀とかで大変ですが、大陸で開発された唐箕(とうみ)で風の力を応用して籾殻と玄米と塵に分別したり、徐草具の応用で櫛歯に稲穂を引っかけて種籾を取る千歯扱き等を職人に作ってもらい、百姓の労力を軽減させます。」


「これらの事やったのに、領主に年貢として半分、酷い領主だと七割も年貢として持っていきます。これだけだと百姓は餓死するものも出てきますので、百姓も隠し田などを作り、自己防衛を行ったりする者も出てきます。」


「百姓のやった事は武田の法では重罪となりますが、本来なら武士が百姓を保護する役割を放棄してるとも言えます。」



 そこで太郎兄上が腑に落ちない表情で質問してきた。



「四郎、武士の役割は他国の軍勢から、領民の命を守ると言う事で年貢を貰っておる。その約束が領国を形成してるのだから、百姓が隠し田で年貢を誤魔化すのは、百姓が不義を働く事になるんじゃないかな?」


「確かに武士は百姓の命を守ってる自負がありますが、百姓自体痩せ衰えるまで搾取するとなると、百姓も必死になって領主へ一揆を起こします。もし武士が百姓を切り捨ててしまったら、我々武士にも跳ね返って武士も餓死します。つまり我々が豊かになりたいならば、百姓など民衆達も豊かにしてあげることこそ、武士の務めに繋がるのです。」


「武田領問わず、日ノ本では食料問題が逼迫です。僕がみんなに新しい事教えたくても、お腹を空かせては、何も先に進めません。太郎兄上が元服するまでに、今よりもっとみんなが飢える事ない国造りをやりたいと思います。」


「そうそう、攀桂斎は僕が言った事を記録に残してください。」



 やれやれ人に教えた事ないから、みんなはチンプンカンプンで話した意味は解ってないと思うが、根気強く伝えていくしかないな。













百姓貴族は、ほんと面白いね

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