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三年目の事業

天文十七年に武田家が出兵を行ってる裏で、四郎が行ってた出来事です。

 四郎が昨年初めて指導した穂坂惣郷は、今年は昨年よりも新しい農業技術すなわち新型農機具とか正常植えや消石灰を肥料として田畑に撒く事で、去年程の収穫量には達しなかったがそれでも例年よりも二割程多く、穂坂惣郷の代官長井次郎衛門から、父晴信と太郎兄上の元に報告が入っていた。


 また去年から四郎が高遠家の領地の事を差配し始めたので、伊那で取れる山塩とかを使って、食用以外にもいろいろな工業用の利用法を見出したので、もっともっと塩が沢山欲しいと言う話になった。


 例えば武田領内全体に種籾の塩水選と消毒を広めたいが、まだまだ数が少ない貴重な山塩を使って行う事には躊躇するし、同盟国の駿河や相模から購入するとしても甲斐まで運ぶ手間もあり海沿いでは、購入する価格の三倍やら五倍は当たり前で取り引きされていた。


 どうにか安くて沢山塩が欲しいのだが、こればっかりは海と燃料が無いと欲しいだけの塩が手に入らぬので、この先もずーっと悩まされるだろう。


 そう言えば木曽家に従属している遠山三塊の領内に、亜炭がが取れる炭鉱の記録があったな。何とか炭鉱を開いて、そこから亜炭が手に入れば、燃料問題も一気に解決するかも?


 或いは遠江国相良の油田か越後の油田から原油を調達できんかな? 


 遠州なら今川家を通じて手に入れる事も出来るかもしれんな。もし入手出来るなら、伊那路から馬か牛に樽を載せて高遠まで運ばせようか。


 燃料を安定的に手に入るなら、蒸留酒の製造も行えば使い道も多いからなるべく早く手を付けたいが、まず先に清酒から作らないと。


 ただ清酒作りするには、米が多く収穫出来て食料事情に余裕が出来ないと、作るのに賛同してくれる者は中々いないだろうな。


 そうなると米より、大麦でウイスキーを作らせるならどうか?


 昔、テレビドラマでウイスキー作りのやつをやってたが、凄く時間をかけてやってて、その間に林檎とかのジュースや酒を造って繋いでいたっけ。


 試しに小型の蒸留器を作って、実験してみようか。


 この実験に向いた人材は、どんな奴なんだろ? いっそ明国人を高額で雇って蒸留器や蒸留酒を作らせれないかな?


 そうだ!! 武野紹鴎と中嶋四郎次郎に人材を斡旋してもらえないか、聞くのはどうだ?


 タダでは動かんから、何か取り引きする物がいるな。


 どうせ武田勢が出兵してて、人が沢山いる事業は中々進められないなら、永田徳本先生と一緒に石鹸作りをやってみようかな?


 石鹸作りを行う材料の消石灰もあるし、猪を捕らえて数を増やしたのがいるから、肉食用に捌いた猪の脂肪を使って、石鹸を作れそうな感じがする。


 徳本先生も医療用に石鹸は欲しがると思うし、安定した数の石鹸を毎月生産してやれば、新たな資金源にもなるな。


 ならば高遠領に、石鹸職人を専属に育成するか。確か関東や甲州の有力な河原者の元締めは、山王原弾太郎左衛門だったな。


 ああゆう元締めは、誰が上手く交渉出来るのか? 


 この前帰国して農耕牛を連れ帰った木下日吉丸に交渉に行かせるか。そして春日大和守重慶には、農耕牛の生産管理をさせて、牧畜で牛を増やさせよう。


 鶏と猪の家畜化の方は、別に任せた方がいいけど、畜産はすぐに結果出ないから、長い目でやれる人物がいいな。



 ___________________________________________________________




 十一月になり、晩秋となった甲斐では、躑躅ヶ崎館の主である武田大膳太夫晴信は、来月にも農作業を終えた足軽達を総動員して、北信濃の村上周防守義清を討伐する予定だった為、家臣一同は連日評定を開き、作事奉行や輜重の用意を行う勘定奉行などは、大忙しであった。


 そんな忙しい中、四郎は父晴信に御願いすると、短い時間ならば聞いてくれると言うので、父上がいる奥御殿の父晴信のいる部屋に入ると父晴信と正室の三条円姫(つぶらひめ)がいた。



「四郎よ。儂は忙しいが、其方(そなた)はまた新しき事を思い付いたのであろうから、その話を聞きたいので、こうして時間を作った。して今度は、何を行いたいのだ?」



 父晴信は連日の政務に忙しくしてながらも、四郎の顔を機嫌良く受け入れてくれた。



「父上、この忙しい中、僕に時間を割いてくれた事に誠に感謝します。父上には、(いく)つかの御願いがあるのです。」


「ほう、資金の方や人材や物資の手配か?」


「父上の(おっしゃ)る通りで御座います。まず東美濃の情勢が落ち着いたので、遠山三塊の地に眠ってる燃える石か今川治部大輔殿の領地にある燃える水を買って欲しいです。」


「その様な物、木炭とかではいけぬのか?」


「木炭ばかり使うと山林が荒れて災害の原因にもなりますし、木炭を作るにも限度がありますので、なるべく燃料資源は分散して使いたいのです。」


「なるほどな。して次はどの様な人材を欲しているのか?」


「実は、百姓だと足軽として軍役があったりして、僕が必要としてる作業を(はかど)らなくなってきてます。そこで関東有数の河原者の元締め山王原弾太郎左衛門と知己を得て、河原者達から石鹸作りの職人や様々な事業を行う人手が欲しいのです。」


「なるほどな。して後は欲しいのはなんだ?」


「今年、武田家と知己になった武野紹鴎殿や中島四郎次郎殿に、海外の貿易品や人材をこの甲州に送って欲しいのです。」


「どの様な物なのだ?」


「僕が記録してる知識の中で、数年後から何年か続く飢饉が訪れます。その時、どこの大名も他家を攻めて、食料を奪い人を奴隷として売る状況が訪れるのです。その為にも飢饉に強い作物や救荒蔵を作って、保存食を貯め、商人に高値で売れる特産品を作り生産して大金を得たいのです。そしてその金で飢饉に備えて、海外や他国から、米や穀物を買い揃えたいのです。」


「四郎が考えてる銭になりそうな特産品は、何かあるのか?」


「職人次第ですが、ギヤマンの器や石鹸と言う医療や身体の汚れを落とす生活品などは作れます。後、着物の汚れを落とす洗濯板は、大工職人ならすぐやれそうだと思います。また南蛮の作物で、砂糖を生産できる甜菜と言う作物なら、冷涼な地域を好むので作れるようになれば、塩よりも高価に取り引きされると思いますよ。」



 砂糖がもしかするとこの甲斐で作れるかもしれないと聞いた奥方様は、話を聞いた瞬間に思わず四郎に話かけた。



「四郎殿よ、もし甲斐で砂糖が作れるのなら、いつぐらいになるのでしょうか!!」



 四郎は、奥方様の甘い物好きに驚いたが、それでも推測の範囲で答えてあげた。



「もし堺や小浜湊に訪れてる南蛮商人などに注文したら、一旦本国に戻ってからこちらに舞い戻るので、二年後ぐらいに入手して、その作物を栽培して砂糖に加工とかするならば、三年~四年後でしょうか?」


「そんなにかかるのですか。もし南国のサトウキビなどを入手して、甲州で栽培など出来ないのでしょうか?」


「サトウキビは温暖な土地を好みますので、甲州では無理だと思います。」


「そうなのですか・・・・」



 残念そうに奥方様は気落ちしたので、四郎は少々悪い事した気分になった。


 その隣にいた父上は、再び四郎に話かけてきた。



「四郎よ、あと希望する物や人がいるのか?」


「言えばキリがないですが、ここ甲斐では蚕を育てて絹糸を生産しておりますので、恐らく上質な絹糸を生産出切るになれば、上方などに高価な値段で売れると思います。他にも磁器や陶器を生産したり、南蛮の薬品作りなど、南蛮人、明国人、朝鮮人の職人を報酬を払って武田家に出仕させたいと思います。」


「四郎よ、そうなると上方に窓口が必要になるな。」


「父上、僕は父上から不興を買った赤口関左衛門を上方に送って、それらの入手先の窓口にしようと思いました。そして今後、関左衛門に物や人材集めの為に使おうと思いますので、是非活動資金と補佐の者を送ってやってください。」



 父晴信は、少し考えた後、甲州三ツ目衆の富田郷左衛門を呼んだ。



「御屋形様、富田郷左衛門、只今参上しました。」



 物音立てずに現れた、武田家忍軍の最高指揮官富田郷左衛門は、父晴信からの指示を待った。



「郷左衛門よ、此度(こたび)お主を呼んだのは、四郎の元に乱破を十人ばかり派遣して欲しいのだ。条件は、上方で商人とかに扮して仕事を行える者。そして数人は四郎の身を護り、四郎の指示に従って、手足となれる者達だ。」


「御屋形様、承知しました。数日後にでも人選が済んだら報告しますので、(しば)しお待ちを。(しか)らば、御免で御座る。」



 郷左衛門は、父晴信からの命を承ると父上、奥方様、。そして四郎に挨拶を済ませて再び消えてしまった。


 そして父晴信からは、今後の活動費として甲州金五百両余りを用意するので、必要な事に使えと言われたので、早速赤口関左衛門の活動資金として、金二百両を送ってやる事に決めた。










山王原弾太郎左衛門 関東や甲州などの穢多・非人身分の頭領。 代々弾左衛門と名乗り、関東の被差別民の統括する実力者。江戸時代に入ると徳川幕府から命じられて、全国の被差別民を号令する権限を与えられた。代々長吏頭(ちょうりがしら)矢野弾左衛門と名乗る。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ずっと前から気になっていましたが言ってなかったのですが今言うと、この時代に「僕」という一人称は無いので知ってる方に取っては違和感を覚えるかもしれません。この時代にある一人称なら「俺」が…
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