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斎藤家の確執

 天文十七年二月から四月にかけて、武田家は村上家と小笠原家に痛打を与えて、多くの国人衆を離反させて武田家に臣従させた為に、信州の半分以上の地を版図にするに至った。


 さらに斉藤家と木曽家の紛争に木曽家から救援を求められて、斉藤家を追い払い戦前までの勢力図に収めた為、斉藤家から講和の使者牧原牛介政倫が甲府を訪ねてきたが、武田方が朝廷と幕府に講和の斡旋を依頼したせいで一度稲葉山城に話を持ち帰り、再び躑躅ヶ崎館にやってきたのは五月下旬の頃だった。



「武田大膳大夫様、暫く振りでございます。御身体の方は御壮健如何でしたか?」


「うむ、身体の方は無事健やかだ。ところで斉藤城州殿は、朝廷や幕府を間に入れた講和を承諾するのか?」


「大膳大夫様、(あるじ)斉藤山城守はその話は全面的に受け入れるとの御話でした。」


(しか)らば、これで武田家と斉藤家の和議成立で宜しいかな?」


「はい、宜しいでございます。そしたら誓詞を交わしましょう。」



 そう言うと駒井高白斎昌武が、誓詞を持ってこさせてお互い花押を書いて講和が成立した。


 その後、晴信は使者として来た牧原牛介を饗宴(きょうえん)を開いて持て成してやると、牛介は晴信に向って、斉藤家の姫を娶りませぬか?と話かけてきた。



「儂を斉藤城州殿の婿になれと?」


「はい、我が主君が武田家と友好を結びたくて、大膳大夫殿を婿にしたいとの事です。」


「なんと! 斉藤城州殿はそこまで武田と仲良くしたいとな。斉藤城州殿は、今年始めに織田三州殿の嫡男に娘子を娶らせたと聞いてるが、もしやこの前の小豆坂合戦に織田三州殿が敗れた為、尾張にでも色気を出し始めたのか?」


(それがし)めには、殿の考えは解らぬでござるが、恐らく親戚の織田三州殿を支援するのに大膳大夫様と争う事を避けたいと御考えになられてる様です。」


「・・・・・なるほど、今川家の脅威は、織田家・斉藤家共に共通課題なのだな。」


「はい、(おっしゃ)る通りでございます。」


「ただ儂も今川家には姉が嫁いでるし、今年始めに禰津家から姫を側室に迎えておる。儂に嫁ぐともなれば、斉藤城州殿の娘子も側室となさるぞ。それでも宜しいとなら(うけたまわ)るけど、それよりも儂の弟孫六信廉は今年十七なのだが、まだ嫁を迎えておらぬ故その方が良いと思うが如何(いか)に。」


「弟君で在られるけど、孫六殿に嫁げば正妻になりますな。私の一存で決めれませぬが一考の余地があると思いました。それでは、早速主君に大膳大夫様の考えを御伝え参ります。」



 それから牧原牛介と講和の細かい内容をお互い擦り合わせを行い、その後設けられた饗宴(きょうえん)を行った後、美濃へ帰国していった。



 ____________________________________________________________



 甲州から二度目の帰国を果たした牧原牛介はすぐに稲葉山城へ登城して、斎藤城州に武田家が講和に承認したのと、武田家への縁組の話を振った所、大膳大夫本人は側室を迎えたばかりなので、大膳大夫の弟孫六信廉なら未婚で適齢期でなので、縁組を行うのはどうかと言う話になった事を伝えた。



「なるほどな、我が斎藤家との縁組は大膳大夫から警戒されてるな。だが武田方は縁談を否定した訳ではないなら、当面我が家とは争いを避けたいとの思惑と見たな。」



 そこで斎藤城州と牧原牛介の話を聞いていた、堀田孫右衛門正定が話をし出した。



「そうですな。武田家の只今の関心事は、信州での敵対勢力の屈服が重視されております。我が家の事には、不審な印象を感じてる武田大膳大夫だが西への安全が確保されるのなら、縁談を結びたいはず。後は殿が武田方の出した条件を飲まれるかどうかにかかりますな。」



 その中で、嫡男の新九郎高政だけが縁談を反対し始めた。



「父上、武田と結ぶと木曽や遠山三塊との事を認める事になります。美濃守護を持つ我等の大義名分は、武田と結ぶ事によって、他の国人衆も離反や独立を行う者達には我等の命を効かなくなりますぞ。」


「ならば新九郎よ。東美濃で揉めながら、美濃の経営を拡大する手腕は其方(そなた)にはあるか?」


「父上が今すぐにでも隠居してくれるなら、(それがし)は尾張や東美濃など平らげてやりますぞ!!」



 新九郎が斎藤城州に隠居しろと言葉に出したので、評定に参加してた家臣達に(たちま)ち緊張が走った。



「わっ若君、それは殿に対して御言葉が過ぎますぞ!!」



 猪子兵助高就は新九郎を(とが)めたが、新九郎は猪子兵助の言葉にも全く聞き入らずにいた。



「父上!! (それがし)は、織田三州の嫡男に帰蝶を娶らせる事に反対しておりました。その意見に耳を貸さず織田家と縁戚関係になったと思いや織田三州は小豆坂で今川に敗れてしまうし、全く斎藤家の為に成らぬ同盟ばかりだ。 織田や武田とも結んで、美濃の国人衆を満足に従えれない斎藤家は、今後どのように舵取りをなさるのですか!!」


「儂の代では、美濃繁栄の基礎を作るのに精一杯だろう。斎藤家の飛躍は其方(そなた)が行う事業になるので、斎藤家の実力を高めて領内を豊かに変える事が儂の役目だ。」


「ならば父上!!我が家として織田三州との縁を持ったが、このままでは今川家に尾張が食われてしまう。この新九郎に尾張への出兵を許可してくださいませ!!」


「それはならぬ。其方(そなた)は、帰蝶が織田に嫁いで半年経たずに攻めるなどと、妹の事が心配にならぬのか?」


「帰蝶は大切な妹ですが、あ奴は父上が離縁した前正室小見の方の娘ですぞ。妹よりも斎藤家の行く末の方が大切なのは当たり前です。実際、此度(こたび)東美濃を支配出来なかった事で、他の国人衆にも動揺が広まっております。そして国人衆が斎藤家は、頼みに足らずと見捨てられたら、国人衆は斎藤家から離反を招きますぞ!!」


「新九郎よ、ならば言うが其方(そなた)は考えが性急過ぎる。今の斎藤家を過大評価すると、足元救われるぞ。」


「父上こそ、蝮と呼ばれた若かりし頃より衰えてござる。何を守りに入って、おられるのか!? 織田三州が去年と今年大敗をして、尾張での求心力が低下してるのですぞ!!」


其方(そなた)こそ、尾張が熟した柿の如く奪えると思うてかっ!! 織田家を舐めるな!!」



 斎藤城州は、新九郎に激怒すると傍にあった硯石(すずりいし)を新九郎の顔に投げつけて米噛(こめか)みに当てて、評定の間から新九郎を追い出してしまった。この出来事が親子相克(おやこそうこく)の始まりとなった。


 一方、部屋から追い出された新九郎は、この日を境に父利政の打倒を心の中に秘めて、斎藤家家中の主導権を奪う事を決めたと言う。






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