表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/155

誤算だらけ

 いよいよ木曽谷に集めた秋山伯耆守虎繁が率いる伊那・春近衆兵三千と木曽谷で動員完了して、木曽中務大輔義康が率いる木曽勢兵二千を窮地に堕ちてる美濃明智城へ援軍を送ろうとした矢先、飛騨国との国境を護る家臣村井忠左衛門から急使がやって来た。


「殿!、先程飛騨との国境から、桜洞城主三木右衛門督直頼が飛騨勢兵千五百を率いて、長峰峠を突破して西野砦を攻撃しております。西野砦の村井様は、長くは持ちそうもないので、至急援軍をとの事です。」



 出陣しようと談笑してた隠居の木曽左京大夫義在と木曽中務大輔義康、秋山伯耆守虎繁、明智十兵衛光秀、それに家老山村三河守良利が三木勢の侵入に驚き、そして明智城への救援へ出陣する予定だった兵二千を三木勢に対処しないと、木曽家の本拠地木曽福島城まで侵攻を受けるのは目に見えていた。



「殿、明智城侵攻と三木勢の木曽谷への侵入は、斎藤城州の連環の計かと。明智城への救援を阻害するのと同時に三木右衛門尉の野心が合致したのでしょうな。」



 山村三河守が三木勢の侵攻に憂慮しながら、敵の行動を推察してみせた事で、木曽左京大夫と中務大輔は、(うな)りを上げた。



「むむっ、蝮め。そう簡単に明智城に向かわせてくれなんだ。」


「父上、三木勢を無視して、明智城に兵達を向かわせても、動揺してまともに戦ってはくれないでしょう。」



 二人は斎藤城州が差配した手により、東美濃を取るか木曽を取るかの王手飛車取りの立場に落とされた事実を知って、木曽左京大夫と中務大輔はとても済まなそうにして、明智十兵衛を見て苦しそうに言葉を漏らした。



「・・・・・・明智殿、誠にすまない。木曽勢兵二千は、明智城へ向かわせるには、三木勢を先に追い払ってからになる・・・・・」


「十兵衛殿、(それがし)其方(そなた)に必ず木曽勢を向かわせると言ったが、それが難しくなってしまった。・・・・・本当に申し訳ない。」



 二人が余りにも辛そうにしてるので、明智十兵衛も何と声をかけていいか分からなくなった時、隣にいた秋山伯耆守が、十兵衛に話かけた。



「十兵衛殿、(それがし)が率いてる武田勢は、問題なく明智城救援に迎えるから、安心してくれ。それにこの事を御屋形様に急報し、対応策を練って貰えばさらに援軍も期待出来るかもしれん。」



 秋山伯耆守は、武田勢の増援の事は期待度を含んでの言葉であったが、それでも十兵衛の心に通じて少し表情が明るくなった。



「善右衛門殿、(それがし)はまだ明智城への救出が終わってない事を改めて、善右衛門殿に教わった。ここで諦めたら、本当に陥落してしまうので決して諦めない事にした。」


「十兵衛殿、ならばやる事はただ一つ。幸い武田勢はいつでも明智城に進軍出来るし、武田勢のみの進軍の方が移動速度は速い。木曽勢との連合軍なら二十八里の道を五日はかかりますが、我等は三日で到着してみせましょう。」


「本当ですか!普通の軍勢なら、一日四里から五里が常識。それを一日二倍の速度で移動するのですか!!」


「はい、山国生まれの武田勢は他国と違いまして山道を山伏の如く移動出来ますので、山岳戦などで迂回戦術や包囲戦術を武田の秘術としております。」


「善右衛門殿!!そしたら行軍速度で、斎藤城州を出し抜けるかもしれん!!」


「そうです。ならば一つ御願いがあります・・・・」



 秋山伯耆守が率いる武田勢は、明智十兵衛に一足先に東美濃に入り、ある御願いを了承して貰った上で、翌日早朝に木曽谷から出陣した。



 ____________________________________________________________




 秋山伯耆守が率いる伊那・春近衆は明智十兵衛に先行して東美濃に入ってもらった後、三月十八日の夕方には、恵那郡に入り岩村遠山家の家中の者達へ迎い入れられた。


 岩村遠山家当主遠山左衛門尉景前が明智城救援で不在の為、留守を預かった嫡男大和守景任は約束の木曽勢が来てない事に落胆したが、武田勢を率いてる秋山伯耆守等をささやかに持成(もてな)してくれた。


 遠山大和は、初めて会う武田勢の一行に気負いを感じながらも明智城救出に来てくれた武田の諸将に聞かれた事をありのまま答えた。


 まず武田勢を先導してた木曽家家臣千村掃部助家政が遠山大和に、三木勢が木曽谷へ侵攻して迎撃の為に明智城救出に遅れる事を大いに謝罪した。



「遠山大和殿、本当に本当にすまない。木曽勢兵二千を率いてくるはずだった殿は、斎藤城州の悪辣な計略により、以前より我が木曽谷を狙ってた三木右衛門督の侵攻を受け、迎撃に廻ざるえない事になってしまった。誠に申し訳ない。」



 千村掃部助は、地べたに頭を擦り付けながら、自分より年下の遠山大和に土下座して謝罪した。


 それを見てた秋山伯耆守は、遠山大和に問う。



「木曽勢が参戦出来ないのは非常に残念ですが、しかしまだ負けた訳ではありませぬ。遠山大和殿には、先行した明智十兵衛殿より頼まれてたと思うのですが、明智城や東美濃の地理に詳しい者達はこの場にいますか?」


「はい、昨日来た明智十兵衛殿に頼まれて、山家者や狩人それに修験者にも集まって貰いました。」



 遠山大和から、案内役(あないやく)を手配して貰った秋山伯耆守は、遠山大和に感謝の意を表して、武田勢は明日早朝に出陣すると伝えた。



「遠山大和殿、(それがし)は大和殿が集めてくれた者達に連れて、斎藤勢の側面から討ち駆けますので、遠山左衛門尉殿に斎藤勢が崩れたら、すぐに明智城救出に動くように御伝えください。」


「承知しました。それまで我々遠山勢は、斎藤勢が明智城を力攻めさせない為に時間稼ぎするよう父上に御伝えします。」



 翌日早朝、予め頼んでおいた山家者や狩人や修験者など十名ばかり集めて、斎藤勢の裏側への道案内を頼み、武田家が勝利した暁には褒美を取らすと伝えてから、すぐさま出陣した。


 山道の行軍に慣れた武田勢でも木々の中を漕いで、獣道と言わんばかりの細道の移動に、数人が滑落して負傷したが、なんとか二日の夕方には斎藤勢が見届けられる小山の林の中に伏せていた。



「大将、ここから明智城を包囲してる斎藤勢が見えますぜ。城下の惣郷は燃やされて焼け野原になってて、こりゃ民百姓から斎藤勢は恨まれますなぁ~。」


「鉄平よ、ここまで苦労かけたな。お前達十人分、一人銅銭一貫文で全員で十貫文を渡す故に、今後も何かしら頼む事もあるかもしれん。ここから先は、戦が始まるうえ、お前達は避難しろ。」


「分かりました大将。大将や皆様も御武運を。」



 案内した者達が武田勢から離れるのを確認したら、秋山伯耆守は副将を務めてる保科弾正忠正俊に軍勢の状態を確認した。



「甚四郎殿、伊那衆、春近衆共に将兵達は壮健でござるか?」


「我々は、まだ大丈夫です。」


「そしたら只今より斎藤勢へ突撃を敢行する。全員ここに食料や炊具を置き身軽にしてから、攻めるぞっっっっっつ!!」


「「「応っっっっっつ!!!」」」



 武田勢兵三千は、明智城を包囲してる斎藤勢兵六千に向かって声を張り上げて突撃し、哨戒中の斎藤勢の足軽達数人をあっと言う間に討ち取り、斎藤勢は地響きの様な武田勢の声が判るようになってから、敵襲だと理解し始めた。





















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ