四郎、予想外の出会いに驚愕する
やっと商人?に出会います。
父上と太郎兄上が志賀城攻めを行ってる頃、四郎は自分がやりたかった耐火煉瓦製作や新型鉄炉製作などやりたかったが、武田領内の領民は武田勢が出兵してる間、人手が足りなくなった惣郷に手が空いてる流民や河原者を武田家当主の命により、賃金又は食料と交換で労働者として雇う事を布告された。
それにより、夏場の雑草が増殖する時期に、戦場に男手を取られていた百姓達は大いに救われたと言う。
さらに春に保坂惣郷の鍛冶屋広瀬紹徹斎が見慣れない形の鍬を太郎様より製作する依頼を受け作られ、試しに保坂惣郷の百姓が使うと、その鍬は特に深い水田の泥起こしに使い勝手が良いとの評判が立った。
さらに夏になると、また鍛冶屋の広瀬紹徹斎が見慣れない農器具を百姓達に試用させた。
その器具は、二本の軸の先に短い歯が付いた二個の車輪か付いてて、水田の稲と稲の条間を人力で押していくと車輪が雑草を引っかけて取っていくと言う仕組みの器具を春先に太郎様から製造依頼されたと紹徹斎は聞かれた時に言ってた。
これにより、他の惣郷の百姓や金の匂いを嗅ぎつけた商人達が、秋ぐらいから保坂惣郷に出入りし始めた。
すると一人の行商人に不思議な光景が目に入る。
百姓達は、収穫した稲穂の束を沢山の細い剣を付けた器具に稲穂を引き通して、脱穀してる娘達に聞いてみた。
「娘さん、娘さん、ちょっと訪ねたいのだが。」
「何でしょうか、丁稚さん。」
「その農器具は何だね?」
「これは太郎様がここの鍛冶屋に頼んで作らせて、我々にどのような使い勝手か確認して欲しいと頼まれて、使っています。」
娘達は、楽しそうに脱穀を行ってるので、行商人は農器具を作った人に会わせて欲しいと頼むと惣郷の外れにある鍛冶屋の広瀬紹徹斎だと教えてくれた。
商人が商いの匂いを感じて、真っ直ぐ広瀬紹徹斎の鍛冶屋に向かうと、丁度新式鍬(のちに保坂鍬或いは四本鍬と呼ばれる)の注文を受けて、弟子達と共に鉄を打っていた。
「すいません、ここの主はおりますか?」
鉄を打つ音が響いて、しばらく行商人が居た事に気が付かなかったが、作業が一段落ついてから話す事になった。
紹徹斎は、作業を止めて弟子達に休憩だと伝えて、行商人にも一緒にお茶しますかと尋ねる。
すると商人は、話しながらなら受けますと答えた。
「坊主よ、作業中は鉄を打つ事を止めれないので、待たせてすまんかったな。」
「おいらの紹介をまだしてませんでしたな。おいらは針売の行商を行ってる日吉丸というものでございます。ここに立ち寄ったのは針を売る為に甲斐、信濃、美濃を廻って、故郷の尾張へ帰るつもりでした。」
「旅の途中で、予想より沢山の針が全て売れてしまったので、鍛冶屋に針を注文したいと思いまして、ここに尋ねました。」
日吉丸は、確かに針を売り切ったが新たに針を購入する積もりがなく、このまま尾張帰る予定だったが、帰宅途中に見た事ない物ばかりを目にして、思わず立ち寄った次第であるが、そんな事を口にも出さず偶然を装って、広瀬紹徹斎を訪ねてきたのであった。
「それで、針が欲しくてここに来たのか。」
「へいっ、」
「だったら俺の所は太郎様から依頼受けた農器具作りで精一杯だから、別な鍛冶屋を訪ねておくれ。」
紹徹斎は、日吉丸の針の注文は忙しくて受けれないと断った後、休憩を止めて再び仕事へ戻った。
それでもここで作ってる農器具に興味があって、まだ立ち去らないで紹徹斎に話かける。
「ところで親方。太郎様って誰の事なんですか?」
「おめえに親方呼ばわりされる義理なんてねえよ。太郎様は、この甲斐国主の御嫡男様の武田太郎喜信様だよ。太郎様は、下々の暮らしを常に気にかけてくれる優しい方だ。」
へぇー、甲州の武田に暗君無しかよ。 晴信公と言い、嫡男喜信様と言い、土地柄は貧しいのに何故こんなに優れた人達が現れるのだ?
そんな事を話題にしてたら、たのもうと声が鍛冶場の外から聞こえてきた。
「おっ、今日は阿部様が来たか。お前ら四郎様がやってきたので、一旦作業中止して、散らかった道具を片付けろよ。」
そう言うと弟子達が片付け始めると日吉丸も一緒に片付け始めた。
「おめぇは、さっさと別の鍛冶屋に行けよ。これから太郎様の御舎弟四郎様と御話するのだから、おめぇが居ると邪魔なんだよ。シーッ!シーッ!」
そう言って紹徹斎は日吉丸を邪険にして、手の平であっち行けと指図すると、仕方なく鍛冶屋から離れようとした。
しかし敷地から日吉丸が出ようとすると、急に紹徹斎からこっちに戻れと声をかけられた。
「日吉丸、おめぇに四郎様が話があるんだとよ。」
紹徹斎がそういうと、四郎様と傅役の安倍加賀守宗貞、近習衆の八人に小笠原源与斎が日吉丸を待っていた。
ちなみに跡部攀桂斎と長坂釣閑際は、武田勢が志賀城攻めを行ってる時、諏訪郡に小笠原家が侵攻してきた場合の防衛を任された為に、諏訪上原城に城番として滞在中である。
また工藤源左衛門尉と工藤玄喜斎の兄弟は、志賀城攻めに召集されており、四郎達の傍には居ない。
「御侍様よ、おいらに何のようなんだい?」
俺は、日吉丸の正体にはまだ気が付いていなかったが、こいつ目敏い奴だなと薄々感じていた。
だから俺自らこいつに何で農器具に興味あるのか、聞いてやると思った。
「初めまして、僕は高遠四郎と言います。其方の名と出身を教えて貰えませんか。」
俺がそういうと、日吉丸はこんな小さい子供が達者に喋るのを見て驚いていた。
「おいらは日吉丸と言って、針の行商を生計にして暮らしている。生まれは尾張国中村郷で、父は竹阿弥、母は仲と言い、姉がとも、弟が小竹、妹があさひと言いま・・・」
ん? 尾張・・・中村・・・母が仲・・・・弟が小竹・・・小竹・・・小一郎・・・・ もしかして、未来の豊臣秀吉かよっ!! 全然猿顔じゃねぇ、どうして猿なんて言われたんだ? 寧ろエ〇リ顔じゃないか。
俺は、ここでこいつを逃してはいけないと瞬時に思い、こいつを何か理由をつけて確保する事を思いついた。
「日吉丸さん、其方はここで見た武田家の技術を外で真似て、お金儲けを考えてるんじゃないでしょうね?」
俺が日吉丸を非難するような事を言うとまるで図星だったような表情したので、紹徹斎や安部加州に近習衆達は、忽ち怒り始めた。
「おいっ!てめぇ、俺たちが苦労して作り上げた技術を盗みにきたのかっ!!」
「四郎様、この小僧。もしかして他国の間者かもしれませぬ、この場にて叩き斬りまする!!」
安倍加州や近習衆達は、皆太刀を抜こうとすると俺が止めに入った。
「皆、落ち着け! 日吉丸が間者なら、我等の姿見た時点で逃亡してただろう。」
日吉丸は、俺に縋る様に命乞いしてきた。
「四郎様、おいらは四郎様が言う通り間者ではありません。ただ新し物好きで、こんなに便利な農機具を田舎のおっかぁや兄弟達に使わせてやりたいと思っただけです・・・」
そう言うと日吉丸は、床な平伏してひたすら命乞いしてきた。
成らば、ここが勝負所か。
「日吉丸よ、其方に問う。今、日吉丸はどなたかに仕えてたり奉公してる商家はあるのか?」
「おいらの家は貧しくて、今年の春から家を出て針を諸国で販売する行商を一人で始めたばかりです。なので、まだどなたにも仕えてございません。」
よし、そしたらチャンスか。
「そしたら、其方は、間者では無いと言う疑惑を晴らすには、一つだけ方法がある。」
「四郎様、その一つとは?」
「よくぞ聞いてくれた!その一つとは、今日から僕に従者として高遠家に仕えるのだ。明確に立場を表す事によって、其方を間者として疑われる事は無くなるだろう。どうだ!僕に忠義を誓うか!」
俺は、豊臣秀吉を家臣にすると言う欲望の前に今まで家臣達に見せた事ないようにテンションで日吉丸に話続ける。
「ははっ、おいらは今日から高遠四郎様の家臣になります。神仏に誓っても四郎様に忠義を尽くします。」
やったぞ! 俺って未来の織田家に大ダメージ与えたかも。
武田の暗君無しは、一応信虎も甲斐を統一させたので入ってます(信虎は暴君だけど。)




