まずは耐火煉瓦工房を作ろう
目標は、築地反射炉。
俺の前世の時、耐火煉瓦と言うのはホームセンターに行けば、簡単に購入出来ると言うのが知識にあった。
寝たきりだった俺は、そんな物を触れる機会など一度も無く、ネットで耐火煉瓦と言う物を文章で知ってたが、現物は見た事も無く、煉瓦と言えばアニメで見た西欧風家屋に描かれた建築資材を知ってる位だ。
その程度の認識ながら、転生後に単純に鉄の生産力欲しさに前世の記録を考えると、実に手間がかかる物だと知った。
脳内に前世で見た記録が残ってても、それらを総合的に創り上げるには、ほんと地理や文明、それにその時代の宗教と歴史的背景、それに人々の考え方がとても大切な事を四郎に転生してから、嫌になって思考が停止しそうになった。
人付き合いなんて皆無だった俺は、よくブチ切れて投げ出さないでいると思うが、これも我慢出来てるのは、前世では全てが病室内で完結してる世界から、初めて外の世界と身内の温もりを知ったからだ。
そんな俺は、木炭を集める為に沢山の領民から、協力を求めるべくこれから知恵を絞るのが仕事になった。
「二郎兄上、祖父殿、寅王丸、それに安部加賀守に作事奉行の工藤源左衛門尉と庶兄工藤玄随斎、近習衆の諏訪新六郎、小笠原源与斎等ここに集まった者達に言う。僕は耐火煉瓦を作ろうと思うのだけど、耐火煉瓦を作って焼くには、土焼窯作りと石工職人に大量の木炭が必要なんで、今冬は武田家が出兵してない時期に、領民達に木炭を製造してほしいんだ。」
皆が、俺が意ってる事に耳を傾けで、頷いてる。
「加賀守は木炭俵(15kg)一俵を銅銭幾らで、甲斐の商人達は領民から購入しているか判るか?」
「昨年の初冬の価格ですと、商人共は銅銭五十文余りで甲斐の領民から購入し、店頭価格が凡そ二百文で売り出されてます。」
「ふむ、思ったよりも木炭は高いな。」
「木炭は、山林を切り倒して現地に土焼窯を作って、その場で木炭を創り出しますので、周囲を切り倒したら、植樹や大豆を植えたりして、山林を保護します。」
「そうやって炭焼師は山奥へ移動しますので、木炭を作る土焼窯が惣郷から離れてゆき、輸送時間がかかる為であります。」
ううっ、石炭欲しいー、鉄道欲しいー、日ノ本山が多すぎて、馬車が使い難いー。
希望としては、耐火煉瓦を一日に二百個位作る土焼窯をまず三つ製作し、陶器ではないので半日焼き冷却時間入れて二日に一度づつ土焼窯から、耐火煉瓦取り出すローテーション体制を組む。
それで毎日二百個づつ完成させて五百日かかるが、当面の目標は十万個を目指して、建築資材として使う。
「加賀守よ、毎日土焼窯を三つの内、常に一つの土焼窯に火を入れて、二つ冷やすやり方で最初は行こうと思う。」
俺は安倍加賀守に聞いてみた。
「それで一日の木炭の消費量は、いくつ使う?」
「土焼窯にびっしり耐火煉瓦を詰め込んで焼くとしたら、焼き上がり後、耐火煉瓦は半分近くに縮むので二俵程でいけると思います。」
「加賀守、耐火煉瓦の成型や窯入れは、甲府瓦座の瓦職人を雇って作らせよう。」
「分かりました。某の方で土焼窯製作と瓦座を通して、瓦職人を雇用しますか。」
「源左衛門尉、作事奉行として、もし甲府の瓦職人に別途に耐火煉瓦発注とか頼んだら、受けてくれるだろうか?」
「瓦座が四郎が頼む仕事に商売としての魅力を感じたなら、おそらく受け入れるでしょう。」
「僕としては、耐火煉瓦を我々の独力で安定した数を作る事が目標だが、もし瓦座通して耐火煉瓦の価格が、我々が作った耐火煉瓦より品質が良くて安いのなら、瓦座かにの購入も考慮するのも吝かではない。」
なるべく価格を抑えたいから、両方の調達方法を実際比べてみたいな。
「源左衛門、作事奉行として、土焼窯三つを製作するのに人夫はいくら必要だ?」
「四郎様、この諏訪郡の近隣の住民三十人位で、農閑期なので銅銭十文、土焼窯の出来が良かったらさらに銅銭五文を上乗せしてやると人夫達も励みになるでしょう。」
「僕は、土焼窯の製作には、三条大納言様の荘園の民達を使う。その後、土焼窯の作業に瓦座から職人を雇用して、窯の燃料は別に近隣領民に作らせるか商人から購入するかを比べてみる。」
皆が俺の意見に承知しましたと言う。
そして完成した耐火煉瓦は、近年武田領に流れてきた流民達を使いたいけど、皆がどう思うかな?
「作った耐火煉瓦で、諏訪郡蓼科中央高原に新しい炉を作る。そこに耐火煉瓦が、ある程度数が出来る一年後ぐらいから、普請を開始する。その時は、農閑期の領民と足りなかったら甲斐へ流れてきた流民達や河原者、山家者を使う事も想定する。」
跡部攀桂斎は、顔を顰めて、四郎に忠告する。
「四郎様、それはいけませぬぞ。」




