干し椎茸は黄金と同じ価値があるそうです
御都合主義ですいません。
2020 2/28 勅使とのくだりの話を追加。
あれから猪以外に鹿やら狸やらも椎茸畑(椎茸榾木の事)を狙うので、狩りで鍛錬代わりにする為に近習で弓の達人青山角蔵繁清、弦間八兵衛正吉の二人を参加させて、弓矢で害獣駆除を行わせた。
椎茸栽培の方も小原兄弟と柿屋五兵衛達が、苦労しながらも収穫まで漕ぎつけたらしい。
甲斐の田舎なら、椎茸が貴重だと知ってる人達は僅かだし、山育ちが多い武田の領民は山菜やキノコなんて普段から食卓にある物だから、俺がやってる椎茸栽培の価値など見当もつかない感じだった。
ただこのまま生椎茸のままだと、傷みやすいし味や風味などが出汁として出づらいので、干し椎茸へと加工して出荷だな。そしたら日陰で乾燥させたいから、乾燥小屋を作られるか。
さて次の問題はこいつの価値が解る商人に出会えば、干し椎茸は明との貿易にも使われるぐらいだったから、下手したら銅銭持ち歩くより軽くて大金に交換出来る品として、良い商品なのかもな?
以前父上に話した武田新五郎信久にどうにかツテを持てないかな。
あ、良いツテあった。寺院では精進料理にかかせない物で、干し椎茸が高く買われると聞いたな。
これならどこの国にも大きな寺院が沢山あるので、売れるよな。
椎茸栽培の情報は、柿屋五兵衛と人足十人以外には教えられないな、情報漏洩されたら口封じも想定する必要あるかも。
そうだ、こういう時も小笠原源与斎が使えるかどうか聞いてみるか?
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「源与斎よ、ちと相談したい事があるのだが。」
「何で御座いましょうか、四郎様」
「この事は、外部の人間には知られたくない事なのだが、実は上方や寺院の者達が珍重しいてる椎茸を栽培し、干し椎茸を製造する事が出来るようになった。」
源与斎は驚いた表情をしているので、やはり高級品なんだなと思った。
「それで源与斎に相談事なんだが、我々しか製造法を知らない干し椎茸は今後の武田家の重要な資金源になると思うんだが、これを誰にも知られたくないんだけど、なんか良い方法は無いかな?」
俺からその話を聞いてニッコリ笑う源与斎。 お前、笑顔が女の子みたいだぞ。
「そういう事で某を呼んだ理由が分かりました。それなら椎茸栽培に出入りしてる人全員を式神で監視しましょう。」
「式神から監視が逃れられる条件はあるのか?」
「基本術者の力を上回る思念の持ち主なら、式神からの監視を逃れる事も可能でしょう。また術者自身が死亡或いは心身荒廃してるなら、術の影響から逃れられると思います。」
ほう、つまり源与斎自身を他者からの危害から守ってやれればいいんだな。
「なるほどわかった。現在源与歳が務めている仕事は、僕に対する危害を向けてくるのを排除する事だよな。」
「はい、然りです。」
「源与斎は、その任務と並行して、椎茸栽培の情報漏洩への監視は可能か?」
「無論、可能です。情報漏洩に対して漏れた事を即時発見するだけなら、擬人下位式神だけで行えるので、某は息を吸うが如く簡単に熟せます。」
「今、僕の近習衆以外に柿屋五兵衛と人足十人が出入りしてるので、その者達の監視を命じる。」
「承知仕りました。」
これで情報漏洩に関しては、俺の【金の成る樹】を狙う輩が出てくるまでは安心かな。いや干し椎茸以外も資金源を作り、リスク分散させるのは当然だろうな。
ガラスや石鹸も作りたいが塩が必要だから、内陸国の甲斐では塩なんて・・・・塩がある場所思い出した。
甲州ではないが、信州伊那郡には山塩と呼ばれてるのが出てたな。海水と同じぐらいの濃度なんで、塩作りをやってたはず。
今は今川氏や北条氏等と争ってないから、塩は入手できるが他国との争いで塩が来なくなる事も想定しないとな。
塩の事は蛇足だったが、父上に手紙を送り干し椎茸を購入してくれる寺院や商人を探さないと。
さていくらで買ってくれるのかな?
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1546年(天文15年)六月初旬 信州佐久郡内山城大井貞清を降伏させ、甲府へと連行した武田軍は天皇勅使三条西実隆と四辻季遠が甲府に来た。
今回の来甲は父上が家督相続にあたって、後奈良天皇と三条西実澄からの綸旨を伝達しに来たと言う。
大方、困窮している朝廷の財政を少しでも満たす為、大名などの大身の者にこうやって勅使を派遣して天皇の御墨付を与えるからりに、返礼の品で見返りを得ると言う事をやってる。
それでも勅使が訪れた家は、公儀から承認されたと受け入れて大変御喜びになられた。
朝廷からの勅使を饗為に武田領内外から大枚をはたいて、高級食材を集めてる最中に四郎からの手紙が届いた。
「この忙しい時にまた金の無心か? ん、何々、干し椎茸の栽培に成功したので、父上に今作った干し椎茸の一部を送ります。さらに干し椎茸を売却して資金を得たいので、商人や寺院への販売を認めて欲しいだと?」
「干し椎茸って、高級品だろ。四郎から送られた干し椎茸はどの位の量だ。」
すると近侍達は、父上の前には十貫(37.5k)入る背負い籠が三杯持ってきて、干し椎茸を山ほど入れて置かれていた。
「おおっ、こんなに沢山四郎は作ったのか。」
「四郎様によるとこれは先に乾燥し終わった干し椎茸であり、乾燥終えてないのが、まだありますとの事です。」
「おおっーっ、これは凄い!!」
父上の側近達は、干し椎茸が入った籠三杯を見て、皆が歓声を上げた。
そこに歓声が上がったのを聴いて、興味を持った勅使の権大納言三条西実澄と権中納言四辻季遠が、正室三条円姫と嫡男太郎に連れられて、父上の元にやってきた。
「御屋形様、この騒ぎは何が起きてるのでしょうか?」
怪訝そうな表情を見せた奥方様を父上は、早速手招きして傍に呼びつけた。
「円よ、四郎が干し椎茸をこんなに沢山献上してきたぞ。」
「まあ、本当にこんなに沢山の干し椎茸を見るのは、生まれて初めてです。」
太郎も円姫から、京の作法や教養を学んでいたので、干し椎茸の値段は解らないが、いかに高い物なのか認識をもっていたので、この量には大変驚いてた。
「こっこれは、干し椎茸でおじゃるか。晴信公、こんなに沢山甲斐の国に採れるおじゃるか。黄金と言い干し椎茸と言い、本当に甲斐の国は富貴に恵まれておじゃるのう。」
「三条西様。麻呂は、つくづく晴信公の帝への赤心の姿勢をしかと見ましたでおじゃる。」
「確かに四辻殿の仰る通り、晴信公には帝はとても頼りにしておられる。是非勤皇の姿勢を見せてる事に、朝廷の皆感謝の意を表しておじゃる。」
三条西実澄と四辻季遠もこの希少な干し椎茸の山を見て、思わす声をあげてしまった。
勅使が驚いてる姿は、太郎兄上は干し椎茸の量を見て、羨む朝廷の勅使達に朝廷への武田家の好感を向上させるのに使えると閃いて、父上に小声で囁いた。
「そうだ父上、これだけの干し椎茸あれば、勅使の方々に御土産としてお持ちになって、気持ち良く朝廷に御戻りもらいましょう。」
父上もそのような事をお考えになっており、太郎兄上と同様に思い干し椎茸を帝に十貫、三条西様と四辻様にそれぞれ五貫づつ帰洛する時に御渡ししましょうと伝えた。
すると三条西様と四辻様は大喜びして、この事を帝に御伝えすると言い満足なされてた。
朝廷の勅使達は、父上の武田家家督就任の祝義と積翠寺において、和歌連歌の歌会を父上や典厩信繁叔父上と催した後、二ヶ月余り甲州に滞在した後に、京へ御戻りなされた。
青山角蔵繁清 近習衆 豪弓の達人
弦間八兵衛正吉 近習衆 精弓の達人
三条西実澄 1511年生まれ 官位は、正二位権大納言
四辻李遠 1513年生まれ 官位は、従二位権中納言




