さて祖父と寅王丸に説明しようじゃないか
四郎、知識の付け焼刃過ぎて惨めな気持ちになるの巻
小笠原源与斎との陰陽師トークをたくさん楽しみたいところだが、祖父諏訪頼重と従兄弟叔父の寅王丸に、諏訪郡に出る宝の山のお話をしないといけないので、名残惜しいが源与斎を下げて、祖父と寅王丸を呼んできてもらった。
「四郎よ、大変忙しいのに無理はしてないか?お前は、武田家の御曹司であると同時に某の孫、頭は大人でも身体は赤子なんだから、体力的にキツかろうて。」
祖父の隣には、5歳の寅王丸が年相応の笑顔を浮かべて、俺に話かけてくる。
「四郎、四郎は僕等が知らない事を一杯教えてくれるけど、今日呼び出したのは、どんな理由だい?」
「これは傅役安部加賀守を通じて手紙で父上に話したんだけど、武田家が今後さらに富国強兵をする為には、沢山の鉄が必要なんだ。」
祖父と寅王丸は怪訝そうな表情を作って、俺に問いかけてきた。
「鉄?確かに鉄が沢山あれば、武器や鎧さらに鍋や農機具も作って、民達に渡す事も出来るな。」
「鉄か~、鉄が沢山あると商人がやってきて、鉄を使った商売を始めそうだね。近年西国は鉄砲と言う武器が流行、海外との貿易で大名や商人が沢山購入したがっているよ。」
祖父は、息子寅王丸が博識になったなと喜んで、頭をくしゃくしゃにして撫でていた。
俺は二人の話を聞いてから、諏訪家の領地に露天掘り出来る鉄鉱山がある事を教えた。
「現時点での鉄の使い道は武器や生活雑貨だけど、諏訪郡蓼科中央高原には赤錆びた石がゴロゴロあって、その鉄鉱石を炉で精錬すると鉄になるんだよ。」
「ほぅ~」
「へぇ~」
二人は鍛冶の知識など皆無なので、話がよく飲み込めてない感じだった。
「二人に鉄の事を言ってる理由は、鉄は国家の血肉になるからだよ。」
「国家の血肉?」 「こっかのちにく~?」
「そうだよ、鉄は加工しやすくて、材木のように燃えなく、石のように重くない、凄い便利なんだよ。」
「それは知ってるぞ。」 「うんうん、しってる~」
「そしたらこんな物があったら便利じゃないかい?」
「どんな物だね?」 「どんなもの?」
「まずは鉄の橋、さらに鉄柱を入れた頑丈な覆道、そして鉄で出来た馬車に鉄の道。」
「こんなのが甲州信州にあれば、交通が便利になるし商売も活発になる。鉄は沢山あればあるほど、国家を頑丈にして、様々な事を革新するんだ。」
俺の話に二人は喰いついてきた。
「そんなに鉄が某達の土地にあるのか?」
「そんなに便利な鉄は何故御先祖様は、使わなかったの?」
「歴代の諏訪家は赤岩がある土地としか認識してなかったし、少数の鍛冶達は知ってて利用してても日ノ本のたたら製鉄では、それほど沢山の鉄を生産出来なかった為、全然使いきれなかったんだよ。」
すると祖父がもっともの疑問を聞いてくる。
「そしたら今のままでは、鉄山あっても宝の持ち腐れだわな。四郎は、この鉄を生かす方法があるのを知ってるから、今話してくれたんだろ?」
ピンポーン、そうです。
「知ってますよ、ただ鉄を生産する前に反射炉と言う巨大な精錬炉と耐火煉瓦と言う、明
大陸でも使ってる加工石を製作してもらう為にお話しました。」
「四郎よ、それ程の凄い物作るのに膨大な資金がいるだろ。その資金源はどこから来るんだ?」
先立つ物無ければ、確かに懐疑的になるだろうな。
「この話は即行動に移すと言う話ではないつもりです。立ち上げ資金、運用資金の確保など多くの課題がありますが、このような物造りを目指すと言う計画を地権者(祖父と寅王丸)に話しておいて、計画の擦り合わせを行う為の、最初の会談です。」
「つまり資金に目途が立てず、我々に話したのだな。四郎殿が我々の財を宛にした話ならば、孫からの話だと言えど御断りするしかないだろう。」
「御待ちください。資金の獲得の手段を話さなかったのは、僕が父上に無断で諏訪家に伝えると、諏訪家不穏の動き有りと思われて、処断されてしまうだろうと考えての事です。」
本当は、資金の事をすっかり忘れてて、話は後付けだけどね。
「もし御屋形様から資金を授かるとか資金獲得の活動の許可を得られたら、今日お話しした計画を行える意志があるのか知りたかった次第です。」
「うむ、我々から資金を供出する事が無い、或いは我が家の負担が我々が生きるにあたって、支障の無い金額なら、喜んで協力させてもらうだろう。」
「そうしたら資金の目途が付いたら、是非協力してください。」
「合い、判り申した。」
うーむ、即現金化は難しいか。
仕方ない、付加価値の物を作るか、どこかで財源見つけるしかないな。
試しに父上に資金を催促する手紙を送ろうか。
「父上、誠に出兵準備に御忙しい中、心苦しいのですが何か事をやるのも先立つ物がありません。
今考えているのは、活動資金を得る為に山林の天然椎茸を収集し、それを元に椎茸を栽培して
商人に売る事をやろうと思いました。
もしそれが許されるなら、赤子の僕の代わりに何人か手足となる人足と共に、運用資金百貫程を
御渡しください。 四郎 」
これでもし父上に値切られて半額になっても、それでもこちらに渡してくれれば何とかなるさ。




