プロローグ
頑張ります。
糞みたいな人生。
人間の底辺、それが俺の肩書き。
27歳でクソニートのひきこもりとしての心得をマスターした童貞の男。
両親に寄生虫のごとく依存し、まるでこの家の主の様に振舞うのが今の俺の仕事だ。
たいして才能も無く、実力も無いくせに、得体の知れない自尊心にまかせた理不尽な暴挙を家族に繰り返す。
あとで冷静になると、言い様のない自己嫌悪に襲われて、自分を守る為にまた部屋に引き篭もる。
これの繰り返しが俺の仕事。
どうしてこんな糞みたいな人生を送っているか?
これを説明するためには少しのつまらないお話が必要だろう。
俺はごく一般的な家庭に生まれた。
たいして裕福でもなかったが、特に不自由なく生きれる環境だった。
両親にとっては待望の第一子だったから、たえまない無償の愛をもらったと思う。
そして、俺は両親に愛されながら育ち、程なくして近所の中学校に入学した。
この時の学校での俺はお調子者だった。他人の笑いを誘うのがうまく、クラス内カーストもかなりの上位だったと思う。
そこそこ手先が良かった為に、美術や技術の授業では先生を唸らしたものだ。
正直この時が人生のピークだったな、学校ではクラスの奴の目もはばからず、アホなことしてたよ。
ふざけて二階から飛び降りて舌を噛みちぎりそうになった時のことは忘れられないね。
その日の給食の献立は未だに覚えてるよ。
舌が痛すぎて。
まあそれは置いといてだ、俺は特に色恋沙汰も無く高校受験を迎える。
俺はこの時になって初めて将来について考えた。
わずか十五年程度しか生きてない中坊には、たいした考えは無かったが、将来への漠然とした不安感はひしひしと感じていたんだ。
俺が数十年後なにをしているか?
そうやって将来の事を考えていくと、怖くなる。
分からないから怖い。
勇気を出して踏み出した一歩に道があるとは限らない。
当時の俺には、真っ暗な道を勉強だけで渡れるとは到底信じられなかった。
だけど漠然と勉強しなければならないっていう気持ちも反射的にあった。
だから俺はここで思考を止め、理由もなく勉強に没頭した。
ーー思考を放棄するーー
思えばこれが最初の間違いだったと思う。
その後何事もなく高校合格。
家からは少し遠いが、程々に偏差値の高い高校に入ることができた。
だがここで俺に、小説の中でよく見る展開が訪れた。
いじめだ
よくあるいじめ。
なんて一括りにすると簡単だが、いじめられてる当の俺からすると、たまったもんじゃなかった。
正にストレス発散の的。
靴の中には大量のごきかぶりさんの死骸。
トイレではカツアゲ、腹パンは必至。
もう最悪。
ごきかぶりさんの件に関しては、わざわざ俺の靴に詰める為だけに、ごきかぶりさんの死骸を用意した奴等の行動力に唖然としたものだ。
そうして俺は限りなくブラックな高校生活を送った。
高校生活も後半になると、俺への執拗ないじめも沈静化してきた。
表面では安心した、だが腹の中では奴等への怒りが煮えたぎる。
今まで何不自由なく育てられ、甘やかされて生きてきた俺には、奴等の陰湿ないじめは到底耐えらるものではなかったのだ。
この時、俺には歪な反骨心が目覚めていたのかもしれない。
もはやこの時の俺には余裕なんて物は存在しなかった。
言い様の無い不満をいじめた奴等ではなく、家族にぶちまけた。
そして大学にも行かずに中退。
高校卒業の資格も無く、ちっぽけな自尊心を持ったデクには、働きどころもない。
そして周りの人、全員に笑われていると被害妄想に陥り、家から出ることすら辞めた。
そして今に至るという訳だ。
……、まあ黙ってても飯が来る良い仕事だ。
悪い事も特に無い。
強いていうなら、たまに夜に涙が止まらなくなり枕を濡らす程度だ。
…………。
後悔はしてる。というか後悔しかない。
あの時こうしたら……、選択を誤らなければ……。
それしか頭の中には無い…。
だが、もう遅い。どうしようもない。
今の俺には、できるだけ長く親のスネをかじり続けられる様に、祈るだけだ。
「今日はもう眠るか……。」
今までくだらない文を打ち込んでいたpcの電源を切り、醜く出張った腹を揺らしながら、床についた。
そうして濡れた枕に頭を預け、後悔の念に溺れなが
まどろみに落ちていった。
ーー
ーーーー
ーーーーーー
淡い光の中、何度目かわからない目覚めの時を迎える。
「まぶしっ……、なんぞや?」
アホみたいな口調で俺は呟いた。
というか口には出せてなかったのだが。
それには気付かず、俺は周囲を見渡す。
いつも暗く締め切った、俺のテリトリーに光が差し込む事はまず無い。
疑問を感じながら、俺は周囲の確認をした。
そこには空のペットボトル散乱していなかった。
そこにはカピカピのティッシュが詰まったゴミ箱も、ご飯と一緒にやって来た 両親からの手紙も無かった。
代わりに赤黒く変色した血飛沫が散乱し、爆音が響き、硝煙の匂いが肺を満たした。
倒壊した建物の瓦礫の上、悲鳴と爆音が響いてる中、俺は上空で目まぐるしく瞬く光を浴びながら、何故か懐かしい気分になった。
「…………?」
次の瞬間、光がまるで世界を飲み込むに景色を塗り潰した。
考える間も無く光は全てを溶かし、真下にいる俺にも降り注ぐ。
全身が光に包まれ、全身を蝕む様な懐かしさと共に、
ーー俺はまた死んだーー
百万トンのバラバラ楽しいです。