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0話 俺が死ぬまで。

「行ってくるわ! 留守番頼んだぞ、春!」


俺は愛する妹に留守番を頼み、家から飛び出した。そして、自転車に飛び乗る。


今日で高校最後の夏休みが終わる。

ん? 夏休みに何故登校するかって? 部活でも自習でもない。


そう、補習だ。頭が悪いのかって?


いや、自分で言うのもなんだが、俺は頭が良い。定期テストでも毎回1位を取っている。


何故補習を受けなければならなかったのか。


単純な話、夏休みが始まる前日にテストがあり、俺はその日、風邪で休んでしまった。そうして、テストを受けてない、未習得だとされたという訳だ。


夏休みの最終日に補習を受けに行ったのはただ行くのが面倒で後回しにしていた、というだけの理由だ。


学校に着き、教室に向かう。最終日は部活も無いので生徒は殆どいない。


「お、おう。お前も今日補習か。ゴホッゴホッ……あーだりぃ」


教室には既に1人の生徒がいた。目的は俺と同じだ。


彼の名は萩生(はぎう) 流星(りゅうせい)だ。頭は正直言って良いとは言えず、毎回補習を受けている。


流星は俺の親友だ。どうやら類は友を呼ぶというのは嘘らしい。


流星はいつも元気な明るいバカというキャラなのだが、今日はいつにも無いほど元気が無い。


「ど、どうした? 風邪か? 顔赤いぞ」


「だ、大丈夫だよ。少し熱があるだけだって。こんなの自力で治せるよ」


そこで納得するんじゃなかった。と、後に思うことになる。まぁ、その話はまたの機会に。


その後、1発でテストに合格し、家に帰った。


「お兄ちゃん!どーだった?テスト」


家に帰ると早速妹が話しかけてきた。


「あー、うんうん。合格したした」


妹をてきとうにあしらい、2階の自分の部屋に戻る。


「ふはーっ! 生き返るぜ!」


壁には大量のアニメのキャラクターのポスターやタペストリーが。本棚には小難しい参考書に混じって大量のライトノベル小説が。戸棚を開けると他人には見せられないようなゲームや、フィギュアなどがあった。


そう、俺、大神 冬夜は、ムッツリすけべならずムッツリオタクだった。


それには山よりも高く、海よりも深い事情があった。事情、それは学校に好きな子がいたからだ。青春だよねぇ。うんうん! 健全だ!


毎日その子の前では文武両道ができる完璧人間でジョークもできる様な人類の頂点的存在を装っていた。


はっきり言って、まじで地獄だった。


彼女のために勉強、運動を死ぬ気でした。でも彼女のためと思うとすんなりできたのだった。


そのおかげでさっき言ったように学年一位を取り続けた。


俺は天才なのではなく、絶え間無い努力によってここまでになったのだ。


アニメ鑑賞の後、新学期に向けての予習をし、夕飯を食べて寝た。


1週間後……


「残念ですね。インフルエンザです」


医師は淡々とそう告げた。


そう、俺は死の危険性もあるインフルエンザにかかってしまった。


まぁまぁ、そうそう死にはしないから大丈夫、だって?


俺は抵抗力がミジンコ並に弱く、以前かかったインフルエンザでも死にか

けた。


今回も同様だった。


熱は40度を上回り、嘔吐と下痢も酷く、体の節々がキリキリと痛む。


「お兄ちゃん。私が看病してあげるから、死なないで!」


俺の妹、春は涙目だ。


「こんなので死んでたまるかよ。俺はやらなきゃいけないことがある‼︎ ……って何死亡フラグ立ててんだか……」


何時間経っただろうか。


「ん……よっこらしょっと……あぁ、体が痛い」


「どっ、どこ行くの? 無理しちゃダメだよ!」


「トイレだよ、トイレ」


尿意は我慢できるもんじゃないよね。


「わっ、私も行……」


「1人で行くよ」


妹にトイレ行く手伝いなんてされたくないよ。


おぼつかない足取りで階段を降りる。


「お兄ちゃん! やっぱり私も……あっ!」


「なっ! うわっ‼︎」


急に声を掛けられたせいで驚き、足を滑らせてしまった。


重い音をたてながら、階段を転げ落ちる。


階段の角に頭をぶつける。視界は赤く染まった。


あ……まさかこんな風にフラグを回収するとは……


「お、お兄ちゃん⁈ 大丈夫⁈ えっ、これって……血……?」


「お兄ちゃん! うぐっ、お兄ちゃ…


妹の泣き声はだんだんと小さくなっていき…


俺の記憶はそこまでしかない。

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