世界遺産 温泉天国 2
「あらあら、うふふっ。リンは放っておくとして、マウリョ酒はいただけるのかしら?」
『ああ、大丈夫だ。調理室の氷室に置いてある。よく冷えて美味いぞ』
「あらあら、素敵ね」
「うむっ、素敵なのじゃっ!」
アルはトレイに、酒の入った竹筒と、ぐい飲みのような杯を載せて持ってきた。
アルはトレイを温泉に浮かべると、オラクルの方へと水面を滑らせた。
「まあ、素敵ねぇ。竹筒酒だと竹の香りもして美味しそうね」
「ほう、甘い酒に竹の香り? 試してみるのじゃ」
木の器に雪が入れられ、そこに竹筒が刺さっていた。
『その雪は、この山の山頂付近から持ってきたものだ。さ、ご賞味あれ』
「美味いのじゃっ!」
「本当ねぇ。
程良い甘みにそれを引き立てる爽やかな酸味。
甘く柔らかな口当たりでありながら、確かな酒精が心地良く喉を刺激し、飲み込んだ後もマウリョの甘い香りと竹の清廉な香りが鼻に抜けるわ」
「きゅ、急にどうしたのじゃ? そんな酒語りをするようなおなごじゃったか?」
「あらあら、うふふっ。酒は女を魅力的に輝かす秘薬なのよ?」
「なにっ? そ、そうか、妾も酒は好きじゃ! 良い女じゃからなっ!」
まだ一口飲んだだけのクッコロは、すでに真っ赤になっていた。
『美味かろう? 我らの自慢の酒じゃからな。マウリョは人間の縄張りにはほとんど生えておらんから、人間の街では飲めん逸品だ』
「ちょっとー、なんで放っておくのー? そんなに美味しいのなら、なんでリンちゃんも誘ってくれないのよぅ。ひどいよー」
拗ねたリンも、やたらと詳しいオラクルの食評に、しびれを切らせて戻ってきた。
「う、美味しっ!」
オラクルに注いでもらった杯をあおると、リンは唸った。
「最高の景色に最高の温泉。さらには最高の酒まであっては、もうこれは離れられませんなぁ」
「あらあら、今、心の中で最高の幼女って付け足さなかった?」
「だから、心を読むなっ!」
「あらあら、うふふっ」
「ねえ、アル? この近くに家を建ててもいいかな?」
「ほう、本当にここに住むのか? それはいいのじゃ」
『構わんぞ。というか、我が里は既に貴公等の軍門に下っておる。
我が里や我らは勿論、この温泉を含む我らの縄張り全て、貴公等の物。
全て望みのままに』
「なんだか、ヤクザがみかじめを取ってるみたいで、申し訳ないね」
『いやいや、弱肉強食、実力至上主義の世界だ。当然のことだ。我らに思うところはない』
「そっか! じゃあ、あの辺りの見晴らしが良さそうなところに、ポイポイハウスを出そう!」
『家を建てるなら、我らがやるぞ?』
「ううん、大丈夫! お家は持ってるんだ」
「あらあら、借りパクだけどね」
「うっ、まぁそうなんだけど、オラクルちゃん大丈夫っていったじゃない。迷惑掛けてないって」
「あらあら、うふふっ。大丈夫よ、何なら、もう何軒か貰っても大丈夫よ」
「い、いや、いいよ。今の所、使う予定も他にないし」
「いざとなったら、クッコロちゃんの声をテレパシーで送って、カプセルを献上させるという手もあるわよ」
「悪っ! は、腹黒天使っアリューシャお姉さま!?」
「あらあら、うふふっ」
「うん? ポイポイカプセルなら妾も持っておるのじゃ」
「えっ、そうなの? 知らなかったよ」
「うむっ、最高級品を取り揃えておるのじゃ! 最高の良い女じゃからなっ!」
「後空様との新居とか考えて、色々揃えてそうだね」
「な、なんで知ってるのじゃっ!? 買ったばかりじゃというのに!」
「あっ、買ったんだ。偉い偉い。てっきり、大魔王時代にぶんどったんだと思ったよ」
「そ、そんな訳なかろう! そんな家に後空が一緒に住んでくれるわけなかろう!」
「ああ、そうかもね」
お金の出所はあえて聞かないことにした。聞かない方が良いこともあるのだ。
「住むところが決まったら、後は食事のことだね。
衣類はクッコロちゃんに出してもらうとしても、食事はどうしよっか。
自給自足する? それとも狩りをして街で売ろうか」
「別にその辺で穫って食えばいいじゃろ」
「あらあら、うふふっ。まあ、私は食べなくても大丈夫だけど」
「いざとなったら、仙台豆取り寄せよっか、あっ、きた」
レベルが上がってもお取り寄せは相変わらずフライング気味だった。
マウリョ酒の横に、おつまみのように出現していた。
仙台豆は、モテン老師や後空の師匠のマリン仙人が、仙台の実家から家庭菜園で送ってもらっている豆で、放射線の影響か、何故か一粒食べるだけで、あらゆる傷が治り三日間は満腹が続くというダイエット食品なのである。
当然ながら、一粒の豆には三日分のカロリーも、傷を治すのに必要なカロリーもないので、一粒食べるだけで痩せていくポッチャリ女子垂涎の豆である。
「あらあら、慣れちゃったの? なんじゃとてー!、は? オラクルちゃん、淋しい」
「まあ、物によるよ。来て困るもんでもないし、沢山あるから、向こうも困らないでしょうし。
考えてみたら、さっきの会話の時に家とか出なくて良かったね。出てくる基準がよくわからないんだけど」
「基準は、基本的にリンが『なんじゃとてー!』って言うものよ。
驚きのある毎日を望んでるの、リンは」
「えー? そうなの? まぁ、レベルアップしたリンちゃんは、もうそんな程度で動揺しませんけどねっ」
仙台豆を弄っていたリンは、拗ねたオラクルに目をやった。
「な、な、な、なんじゃとてー!」
「そうそう、それそれ!」
「違うよ、サービスしたんじゃないよっ! オラクルちゃん、後ろ後ろ!」
オラクルの後ろには、宮殿のような大豪邸が建っていた。
「あらあら、うふふっ。リンったら、こんなに大きなのほしかったの?リンには大き過ぎるんじゃない?」
「わざわざエロティックに言わなくていいよっ! 何なの今頃、フェイントなの? 単に気付かなかっただけなの?」
「さあ、どっちでもいいわ」
「なんかオラクルちゃんが雑」
「ふぇー、大きい家なのじゃ。まるで、妾の宮殿のようじゃな。
んっ? な、なんじゃとてー! これっ、妾の宮殿なのじゃっ!」
「ええーっ!? 意表を突きよる、我が超能力」
リンはオラクルを睨んだ。
「あらあら、知らないわよ、私は。マズそうなのをストップする以外は関与してないもの。
まあ、クッコロちゃんのお家だったら、誰も迷惑掛からないし良いんじゃないの」
「まあ、そりゃそうだ。クッコロちゃんも我が家で寛げて良かったかも。
クッコロちゃん、コレが後空様との新居?」
「違うのじゃっ! 新婚の愛の巣は小さい方が、引っ付いて居られて良いのじゃ!
じゃなかった、大魔王時代の宮殿なのじゃっ!」
「いやー! 聞いた、奥さん? この子、可愛いわぁ!」
「あらあら、うふふっ。本当ねぇ」
『素晴らしい! 貴公等に相応しい高尚な建物だな!』
突然現れた大きな建築物に、アルは驚きながらも感嘆の声を上げた。
「なんか、武闘派オークの集落を傘下に置いて建つ、大魔王の宮殿ってピッタリ過ぎて怖いっ」
「流石はリンのお取り寄せね」
「戻せると思うけど、戻しても使う人が居ないんだから、このまま使う?」
「そうじゃな、さっきは驚いてしまったが、これはこれで自慢の宮殿なのじゃから、ここを拠点にすると良いのじゃ」
「私達も住んでも良いかな?」
「もちろん、良いのじゃ。独りは淋しいのじゃ」
「いやー!か、可愛すぎるぅー!我がクッコロの可愛さは世界一ィィー!」
リンは鼻息を荒げながら、クッコロに抱きついた。
「は、離すのじゃー!」
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