掛かってくるが良いのじゃ!
「付いて行けないなら、レビテーションで体を浮かせてクッコロちゃんに掴まるか引っ張ってもらえばいいのよ。
超能力使うのも修行だから、クッコロちゃんも怒らないわよね」
とのオラクルからのアドバイスを取り入れ、体を浮かしたリンはクッコロの腰にしがみついた。
「なんか、変態みたい…、ギャーッ!」
リンが恥ずかしがっている間に、クッコロは走り出した。
暴走列車クッコロ号は風になった。
本気のクッコロダッシュで生じた、ジェットストリームに翻弄されながらもリンは必死にしがみついた。
「お、おたすけー!」
そして早くもその日の夕方には隣街に到着する事ができた。
「し、死ぬかとおもった」
「そんなことでは、良い女になれんのじゃ!」
「い、良い女の定義が分かりません…」
長距離ダッシュは、後空を倒すための修行かと思いきや、花嫁修業の方だったらしい。あの猛ダッシュが、単なるダイエットだというのだろうか。
街に入ると情報収集をする元気もなく、宿へと向かった。
幸い部屋は空いており、湯をもらって体を拭いた後、夕食をとることにした。
宿の食堂で掲示されているメニューによると、数種類の定食が選べるようだった。
「クッコロちゃん、何にする? あっ、私コレ! オークに勝つってことで、トンカツ定食」
オラクルリンのツッコミ担当は、ボケのメニューがダジャレしかないようだった。
「ダメよ、リン! イワシ師匠を見習って、もっとお笑い定食のメニューを増やさないと!」
どこからか、相方の厳しいお言葉が降ってきた。
オラクルの姿は見えなかった。ドヤ顔か爆笑タイミングでしか面倒くさがって出てこないのかもしれない。
ちなみに、お決まりの笑いの下りを、イワシ師匠一門は定食と呼んでいた。
「妾も同じのじゃ」
二人はトンカツ定食を食べながら、明日の行動について話し合った。
「冒険者ギルドで、詳しい出現スポットを聞いて、買い物して出発ね」
「買い物などいらんのじゃ。早くやっつけるのじゃ!」
「まあ、こんなに早く移動できるなら、もしかしたら日帰りできるかもしれないね。買い物しなくても大丈夫な気もする」
「大丈夫じゃ。森なら食い物などすぐ手に入るのじゃ」
「まあ、世紀末覇者がいなければね」
所持金も心許ないので、無理に買い物をする必要もないかとリンは納得した。
翌朝、朝食を済ませた二人は冒険者ギルドでオークの出現スポットと討伐証明部位について教えてもらうと早速町を出た。
本日もクッコロトレインで爆走し、昼過ぎには目的地に到着した。
「森の中は見通しが悪いから慎重にね、クッコロちゃん」
「こっちじゃ!」
トレイン状態を解除し、気を引き締めるべく注意を促そうとしたが、ぶった切ったクッコロは走り出した。
「待ってぇー」
「ふははは、ブタどもが臭いよるわ! 隠れても無駄無駄無駄ぁっ!」
クッコロ大魔王リターンズ。
気を感じるのか、本当に臭いなのか、迷いなく駆けていく。
木を避けたりへし折ったりしながら進むクッコロに対し、直線をテレポートできるリンは遅れずについて行った。
やがてオークの集落が姿を現した。
「気付かれないように慎重に様子をー」
しかしクッコロ大魔王リターンズの耳には届かなかった。
「ふははは、ブタ共、掛かってくるが良いのじゃ! このクッコロ様が冥府に叩き込んでやるのじゃっ!」
リンからすると奇襲したいところであったが、男気番長クッコロは集落の真ん中で仁王立ちして宣言した。
その姿は一見、金髪幼女が背伸びしているようで可愛いらしく、リンは萌えそうになったが、オークの殺気に当てられてなんとか正気を保った。
身長2mほどのオーク達が、二人を取り囲んだ。リンが思っていたより大きかった。
ゴブリン達のような全く無駄のない筋肉ではなかったが、逆に皮下脂肪がある分耐久力が高そうで、プロレスラーのようであった。
腕はまさしく丸太のような太さで、リンのウエストより太そうだった。
「世紀末覇者ではないけど、結構威圧感あるなぁ」
色々と感覚が麻痺してきたリンは、悪役レスラーに囲まれても暢気な感想を呟いた。
「ブモーッ!」
雄叫びとともに囲いが割れ、そこから巨大なスモウレスラーが現れた。
マンガ『北東のケンちゃん』に出てくるパート様のような巨魁。
身長も2.5mはあり、間合いが長そうだ。
パートとは、ケンちゃんの幼馴染みの経営するブラック企業で働く、短時間労働者の気の良いデブ親父である。
パートの肉厚の乳肉が揺れる。
『ガキがイキがんじゃねぇっ! 俺様が孕ませてやるぜ!』
「はっ! 幻聴が聞こえる!」
「ごちゃごちゃ煩い! まとめて掛かってくるのじゃ!」
また乳肉が揺れた。
『はっ! ガキ相手にリンチなんてできるか! 武に生きる我らに対する侮辱と知れ!』
「また! また幻聴? ま、まさか、マッチョ語! 乳肉ではなく大胸筋だと!?」
「ふん、殊勝な心掛けじゃ。では、一騎打ちにて相手してやるのじゃ!」
脳筋女騎士でもあるクッコロちゃんにはマッチョ語が理解できていた。
『参る!』
パート様が巨大な方天檄を振るった。
しかしクッコロは微動だにせず片手でそれを止めた。
「弱っ! 強そうに出てきたのに、弱っ! いや、クッコロちゃんが強すぎ?」
「こちらの番じゃ!」
クッコロちゃんのパンチが炸裂し、パートの肉体は爆散した。
「おぅふ、ワンパン…」
内臓が飛び散り、グロいことこの上なかった。
ボスがワンパンでやられ、レスラー達は動揺を見せたものの、逃げ出すものはいなかった。
「ほう、逃げんとは感心じゃな。次はどいつじゃ?」
「なんか、私達が悪者っぽいんですけど…」
この森のオークには懸賞金が掛けられていたので、人間に害をなしているのは間違いないものの、以外に正々堂々とした武人ぶりに、リンには殲滅するのが躊躇われた。
「もう、やめとかない?」
「むっ? まあ、こやつらは妾の憎きブタ共とは、ちと違うようではあるが」
クッコロちゃんも躊躇い始めたようだ。
その時、音を立てて木々が倒れた。
そしてそこから、さらに大きなオークが現れた。
3mはある巨大なオークで、まるで巨人のようであった。
パートを二回り以上大きくしたスモウレスラー体型で、まるで北東のケンちゃんに出てくる山ブドウさん。
山ブドウさんは、パートの働く会社と会社は違うが、同じ南都グループの代表取締役の一人で、子供大好き、ショタ・ロリ両刀の変態オジサンである。
『パートよ、死んでしまうとは情けない。
しかし、そやつは四天王最弱、四天王を遥かに超える強さの南都五連豚の一員の私が相手になろうぞ』
なら四天王の残り三人からで良いのでは。
「怖いというより、もう面倒臭いから帰りたい」
「ほう、面白いのじゃ。ならばこちらは、このリンが相手になるのじゃっ!」
「えええっ!? いやー!」
「ほれ、早ようやるのじゃ」
クッコロは、そこはかとない罪悪感を増やしたくないのか、リンを共犯者にしたいのか、せき立てた。
仕方なくリンは山ブドウさんの前に立った。
リンとしても保身のためにレベルアップを謀りたかった。
山ブドウさんは下卑た笑みを浮かべ、両手を広げて襲いかかってきた。
「ギャーッ! やっぱり生理的に無理ーっ!」
武人然としたパートに比べ、山ブドウさんは正に山ブドウさんと同じく、性的に襲いかかってきたのである。
「と、鳥肌がっ!」
山ブドウさんの筋肉が膨らみ体がより大きくなり、それとともに股間も膨らんでいる。
「いやー! く、クッコロちゃん、あれ見てよー!」
「あれこそ、妾の敵そのもの! 早くやっつけるのじゃ!」
「じゃあ、クッコロちゃんがやってよー!」
「ダメじゃ! 一対一の立ち合いを汚すことはできんのじゃ! 良い女になれなくなるのじゃ!」
「私もパートの方が良かったのにー」
結婚した後も正社員で働くOLのようなことを呟いた。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
まだ当分続きますので、引き続きお付き合い頂ければと思います。
もし、気が向いた時があれば、ご感想やご評価など、頂けましたら幸いです。
「ALICE」という作品を投稿し始めました。
http://ncode.syosetu.com/n0713du/
コメディ要素はありませんが、こちらも思い入れがある作品で、一人でも多くの人に読んで頂ければと思っております。
電車に乗っているときなど、手持ち無沙汰なときにでもご一読頂けましたら幸いです。




