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tears of tharsis  作者: 拉麺食部田胃
第1章 出会い
1/5

悪夢=現実

唐突な話だが。


世界は残酷なものだと私は思っていた。


汚染、搾取、戦争。


正にこの3つは人類で成せる生命を根絶するにふさわしい単語と言えるだろう。


特に戦争は短い期間で数多くの命を散らす。


争いは人々が憎しみ合うことで成立する。


ほぼ全ての人間は戦争を憎んでいるだろう。


私はそれの論外にいた。


私にとって、戦争とは母親のようなものだった。


私は戦争によって、兵器として作られた。


私という屑に価値を与えた。


私がまだ自分を兵器だと思っていたころはそんな風に捉えていた。


彼女にそしてこの世界に出会うまでは。










一言、簡潔に言うと、私は森の中を走っていた。


木々によって暗闇が作られ、僅かな隙間から月光が差し掛かっている。


後ろから自分の知らない言語が聞こえる。


私はそれを耳にすると、恐怖に駆られてか余計に強く地面を蹴る。


「¥#,*-/-***¥#..,!!!!」


彼らは一体何なのだろうか。


そう思う隙もなくただただ必死に私は走る。


普通なら身震いするものだ。


目を覚ましたら、森の中にいて、後ろから変な生物が出て来て、いきなり持っていた棍棒で殴りつけてきたのだから。


「ハア!ハア!」


よく死ぬような思いに晒されることはあるが、こういった得体の知れない者に追いかけ回されるのは最悪だ。


完全に冷静ではいられない。思考に時間がかかった。


装備には自動小銃と拳銃が一丁、ナイフが一本。手榴弾が2つ。


いっそここで向かい撃つか。そんなことが頭に(よぎ)る。


いや、闘う環境が悪すぎる。


暗い場所で何体いるかも分からず、木というバリケードが無数にある森で銃で戦うのは無理がある。


おまけに奴等は夜において目が良いようだ。


不利すぎる。


やはり選択肢は1つしかない。


私は牽制として何発か発砲する。


暗闇の中にいる奴等はそれに一瞬怖じ気づいたようだが、撃ってこないことが分かるとすぐに騒ぎ、こちらへと向かってきていた。


私はただ賢明に走る。


木々がだんだん無くなっているように思う。


そう思った途端、木々の一切が視界から消えた。


私は森から抜けたようだ。


が、次に私に待ち構えていたのは崖と言う名の問題だった。


一難去ってまた一難。


月明かりが妙に明るく、昼ぐらいとまではいかないが、それでも十分、回りを視認できた。


私は崖を恐る恐る見る。


針のような岩が一面にあり、落ちれば命の保証はなさそうだった。


戻ろう。


そう思ったが、あの奇妙で騒がしい言語はもうそこまで来ていた。


ここで殺すしかない。


茂みが邪魔で奴等が来ているか音だけでしか判断出来ない。


小銃を乱射すればすぐに弾がなくなる。


温存しなければ。


私は小銃を置いて、近接戦が出来るように拳銃とナイフに持ち変える。


幸い、月明かりだけは私の味方のようだ。


茂みから何かが飛び出す。


私はそれを撃つ。


しかし、それでもその[何か]は突っ込んで来る。


私は向かって来る棍棒を拳銃を持つ左手で防ぐと右手に持つナイフで脇、太腿(ふともも)、喉を斬る。


それで[何か]はかすかな呻き声をあげながら、俯きに倒れた。


「な、なんなんだコイツは」


私は知らぬ間に声を出していた。


緑色の皮膚に俯きに倒れてもわかるほどの豚と人が合わさったかのような顔、その野蛮さはその手にもつ棍棒でさらに引き立てされた。


まだ、死にきれていないのか体がビクン、と電気が走ったかのように跳ねている。


明らかにそれは人ではない。別種の生物だった。


これは悪夢なのか。


いや、棍棒で殴られた時、確かに傷みがあった。これは現実に起きていることなのだ。


「そういえば、私は何処を殴られたんだ・・・」


そう言って頭に手を当てると突然、私は倒れた。


視界がぼやけ、暗くなっていく。


手に液体の感触がする。


どうやら私は頭を殴られていたようだ。


耳から足音がする。


あの化け物の仲間だろう。


クソッ、体に力が入らない。


私はここで殺される訳にはいかないんだ。


こんな訳の分からない状況で私は死ぬわけには。


私には絶対に成し遂げなければいけない使命が・・・!


使命が・・・!










































・・・使命?






































私の使命とは何だ?
































目を覚ますとそこは崖の所ではなくなっていた。


私は辺りを見回そうとする。


が、体はまるで金縛りに会ったかのように動かない。


何かに縛られているような感覚はないのに。


ただぼおっと前を見つめることしか出来ない。


私が思うにここは家だろう。


前には窓があり、そこから日光が差し込んでいる。


今日は晴れ。それ以外は、私の視界から知ることは無理なようだ。


突然、私の左側からガチャッとドアを開けたような音が聞こえる。


私の視界に一人の少女が入って来た。


歳は私と同じ・・・いや、少し年下だろうか。


無垢な幼な顔は私が目を覚ましたのに気づくと歓喜に震えているようだ。


「≠¥#¥.*/↑《》)‼」


少女は訳の分からない言語を言いながら部屋から出て行った。


少し時間がたつと少女と彼女の母親らしき人物が現れた。


「≠・」)(。?ls>…_<」


どうやら私に話かけているようだ。


私は口を動かそうとするが、出来ない。


急激な眠気が私を襲う。


ゆっくりと目を閉じた。
















目を覚ますとやはり私はベッドにいた。


窓からは白銀と呼べる景色が私の目に映りこんだ。


なるほど、どうやら私が眠っている間に季節が進んでいるようだ。


寒くならないようにいつの間にか毛布やらストーブやらが見える。


どうやら私は脳に大きな損傷を受けたようだ。


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