波乱の予感
僕は幼き頃、「死」というものを知った。10歳の僕の前には死体、死体、死体死体死体死体―――――――
「もう見たくないよ…。」
それはあまりに唐突で、受け止められる現実ではなかった。もう僕は家族に会うことができない―――?
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
しかし何もできない。現実を変えることなんか出来っこない。
「・・・・・・・・!」
声が出ない。辛い、苦しい、消えたい。
僕の心の中は負の感情で支配されていた。そんな時、何かが聞こえた。誰かの声が聞こえた。その声はとても輝いていて――――――――――
窓のカーテンの隙間から朝日がさしこんでくる。さえずる小鳥の声。窓から吹き込む春の風。まるで夢のような心地だった。このままずっとこのままだったらいいのに・・・。
「―――て、―――きて!―起きて!」
「・・・・ッ!あ、あはは・・。」
僕を起こした彼女はムスッとしている。
「お、おはよう・・・ございます・・・。」
「朝ごはん、できてますけど?早く食べてきなさい!!」
「ひいいっ!い、今すぐいきます!」
そして僕は急いで着替え始めた。今日は高校の入学式なのだ。
「モタモタしたら今日はご飯抜きね!」
「うわぁぁぁ!」
そう言って、僕はシワ一つない制服を着て急いでリビングへ向かうのであった。
リビングではさっきの彼女が弁当を用意して待っていた。彼女の名前は安島光里。訳あって僕と暮らしている大学生だ。そろそろ就職活動も始まる大事な頃なので家にいない時間の方が多いが、このように朝は弁当などを用意してくれる。怒らせると怖いが、普段は優しく頼りがいがある。
「そろそろ行く時間じゃない?・・・緊張してる?」
「ん?そんなことないよ。そんじゃ、行ってきます。」
そう言って僕は学校に向かった。「水戸市国立鶯ヶ崎高校」の、戦闘科へと。