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*** プロローグ 涅槃部市民課初七日係

ピンポーン ・・・・・1503番さーん、2番窓口に来てくださーい


「・・・・・は?」

死んだはず・・・・・だよな?

そう考えてしまうのは可笑しいことじゃないだろう、俺が今いる場所を考えれば。


ガヤガヤと歓談する声、整理券を取りに並ぶ列、受付にはにこやかに対応する受付嬢

陽の光が入る明るく大きな窓に、整然と並べられた長ベンチ

これは、そう


「・・・・・待合室?」

病院や市役所、銀行の待合室のような空間で、俺は番号札を手に立ち尽くしていた。

ドンッと背中に衝撃がきた。

「にーちゃん、わりぃけど呼ばれたから通してけろー」

「あ・・・すんません」

ぶつかった人に道を譲るため一歩横にずれて、その人の姿を見て俺は目を見開いた。

白の着物に頭には三角形の布、って

(死人じゃねーか・・・って俺、死んだんだっけ)


手には1629番の番号札、よく見れば俺も白い着物姿で着物の合わせは左上右下になっていた。

兄ちゃんを守って死んだことに後悔はない、がここはどこだろう。

周りにいる人はやはり自分と同じような格好をしており、違いは窓口に呼ばれた人は色付きのファイルをもらい、色別に誘導されていることと、子供は窓口後に涅槃課賽の河原園というポップな看板を掲げたところに連れて行かれていることくらいか。

交通事故で死んだはずなのに怪我が全くない状態でいるってことは、ここに来るまでに怪我がなかったことになったのか治されたのか・・・


考え込んでいると、トントンと肩を叩かれた。

振り向くと黒髪七三黒縁メガネ喪服スーツの男の人が立っていた。

凡庸そうな見た目に若干目が死んでいる人だ。

「御霊様、どうされましたか?」

「あ・・・えっと・・・あの」

どうすればよいのか目が泳ぐ。そんな俺の姿に緊張していると思ったのか、その人は表情を緩めた。

「私、涅槃部市民課初七日係ご案内担当の榊と申します。お困りのことや分からないことがありましたら、ご案内させていただきますが。」

じゃあ、ここがどこなのか聞いてみようか

「あ、あのすみません。気が付いたらここにいて・・・ここってどこですか?」

そういうとその人、榊さんは目を見開いた。

「あの・・・?」

「あ、申し訳ございません。それでは、ご逝去された際に導きの担当者に何も聞かれていないということですね?さらに記憶もないと・・・」

「はい、交通事故で死ぬ直前までは覚えているんですけど、ついさっき気が付いたらここにいて。どこなんですか、ここ」

はぁーっと大きなため息を付き、小さくボソッとつぶやいた榊さんは俺に近くのベンチに座るように促した。

俺は聞いてませんよ、「あのアホがまた報告忘れやがって」なんて。


俺と同じベンチに並ぶように座った榊さんはどこから取り出したのか、タブレットを片手に話し始めた。

「それでは、説明をさせていただきます。失礼ですが、御霊様の番号は・・・あ、あぁあと30人ほどですので時間はありますね。

 では、現在御霊様がいらっしゃるのは涅槃部市民課と申しまして、この国でお亡くなりになりました人が最初にいらっしゃる場所でございます。本来ならば、ご逝去時にこの場所まで誘導するお迎え担当が説明するはずなのですが、説明を聞かれていないことからこれからの流れを説明いたします。

 まず、初七日係、そう・・・あの受付ですねそちらで番号札の順番で呼ばれますので受付を済ませていただきます。タブレット入力なのでそれほど時間はかかりません。もし支障がある場合には代理入力も致します。

その際に、手のひらをかざして指紋・静脈登録をしていただき一緒に最初に魂に刻まれた罪の深さも測らせていただきます。昔は奪衣婆様に行っていただいていたのですが、指紋・静脈認証の際にも測れることがわかりまして、現在はこのような動きを取っています。

 罪の深さを測りましたら、書類を入れたファイルを渡しますので色別のルートを進んでください。悪いことをしていれば川の中を渡るなどの辛い道、罪が軽ければ簡単な道など数種類用意しております。

それ以降は四十九日係が担当となりますので、その先での説明を聞いてください。」

タブレットにはポップなイラスト付きのこれからの流れが書かれていて、なんつーか

「随分、現世に近いシステムなんですね?」

「時代の流れもありますし、理屈さえわかれば作れる方はいらっしゃいますので・・・あ」

何かに気がついたように顔を上げた榊さんにつられて、俺も顔を上げる。


・・・1628番さん7番窓口にどうぞー、1629番さん10番窓口にどうぞー


あ、呼ばれた

「さて、丁度御霊様も呼ばれましたので、私は失礼致します。

 あなたの次世がよいものになりますように」

立ち上がると、45度の礼をして榊さんは離れていった。

とりあえず、あの受付に行かないと今後が分からないなら行くか、っと10番窓口を目指して足を進めた。

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