織田奈緒
めちゃ短いです。
信秀の葬儀での信長の奇行のあと、なんとか信秀の葬儀を終わらせた信行は末森城に戻り寝所にて頭を悩ませていた。
今後の自らの身の置き方についてだ。
今の信行自身には織田家の跡目を継ぎたいだとか、尾張を統一したいなんて野望はさらさらない。
父のように苛烈に生きることは性に合わないと思っているし、あの兄なら織田家を良い方向に導いてくれると信じていた。
なら、ひたすらに織田信長に恭順することが正しいと考えている。
しかし、葬儀の場の各人の動きからその目は半ば潰えてしまった。
信友は尾張の守護代としての栄光を未だ忘れずにいる。
信忠に奪われた権威を必死に取り戻そうとすることだろう。そうなると、信忠の家である織田弾正忠家は邪魔な存在。
取り込むか滅ぼすか。その二択に迫られる。
戦奉行である弾正忠家をろくな兵を擁さない大和守が討伐することは不可能だと信忠との戦で証明されているのだから、取り込もうとするはずだ。
ならば必ず信行に接触してくるはず。
そう確信していた。
兎にも角にも、今後の自分のあり方をただ考えるだけで頭をか抱えてしまいたい心境にあった。
「勘十郎様?」
「....ああ、奈緒。すまんな退屈だろう?」
「いえ、けしてそのような事は。信行様と共にあることが私にとっての幸せですので」
「...愛いことを言うな」
共に寝所で寝ていた女性。
妻奈緒に慰められて思わず顔を崩す。
―――奈緒は幸せにしたい。
信行にはその一心があった。
この雪のような肌をした可愛らしい娘に心底で惚れていたのだ。
手を伸ばして髪を梳くと、心地よい感触が心を揺さぶる。
「....葬儀で何かあったのですか?」
髪を弄られながら心地良さそうな表情を見せて尋ねる。
「女には関係のない話だ」
そう優しく笑いながら返す信行だったが、心中を吐露したくなる気持ちを抑えるのに懸命だった。
しかし家中を守るのが妻の仕事ならば外から家を守るのが夫の仕事。
男の矜持に変えても弱みを吐露するわけにはいかないのだ。
「そうですか」
無理に聞こうとしない奈緒に感謝の念を送りながらより一層優しく頭を撫でる。
(よく出来た娘だ)
奈緒は街に下りた時に一目で惚れ婚儀までこぎつけた娘で、その出会いからして奈緒が市井の人間であることは間違いがないはずなのだが、時に妙に頭の回転が良く、育ちの良さが伺えることがある。
女子に教養を持たそうなどと考える家は貴族でもない限りありえないはず。
なのにこの娘はかの諸葛孔明のような未来視を見せることもあった。
此度の葬儀にて何があったのか察していても信行は驚くまい。
「....お前は聡いな」
そう言いながら撫で回すと奈緒はにんまりと猫のように目を細めた。
ここから信行の運命を微妙に史実からずらして行きたいと思います。
ああ合戦が書きたい