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総合病院の機能が停止。何人もの人の命が奪われた

 精密な電子機器に囲まれた総合病院は、屋上にある太陽電池から発電した電力を使っている。昼間の太陽光で発電した電力は蓄電して夜間は蓄電池からの電力を使う。非常事態に限りガスタービンによる発電が行われる。ガスタービン発電機を制御するのも精密な回路を使った制御装置である。


 沙織が入院している部屋が昼間、突然、停電をした。何を意味するかと言えば、手術中の患者や人工心肺など命に関わる人たちの生命が奪われる。


 午後2時、総合病院は停電した。旧型のガソリン車の上からマイクロ波・電磁パルス発生装置により、総合病院の制御装置が停止した。電気が通らないだけではなく、水道もガスも使えない。あまりにも複雑な回路なので、どの基盤が故障したのかわからない。

「なんなの?急に照明が消えて。エアコンも止まった。急に部屋の中が暑くなった」

看護師さんたちは大声で緊急事態を知らせた。

「現在、ライフラインを制御する電子回路が故障しました。あまりにも複雑なため、どこが故障したのかわかりません」


 自動車博物館に入れてもいいようなガソリン自動車は、都会の中では目立つので、すぐに警察に捕まった。それはテロリスト団体「女性原理党」の仕業である。犯行声明が行われた。

「腐った心を持った人たちよ。私たちは腐敗しきった文明社会に挑戦します。国家権力で私たちを押さえることはできません。この世から堕落した文化が全てなくなるまで、私たちは無差別殺人テロを行います」


 沙織が持っている超小型ラジオで、その犯行声明を聞くことができた。

「いったい何人殺せば気がすむの!ほんとうに赦せない!それにしても、本当に暑いわ。エアコンが急に効かなくなって」

沙織を殺そうとした、女性原理党への敵意を強く感じた。

「暑い。暑い!ほんとうに申し訳ございません。復旧するまで夕方までかかります」

看護師があやまる。沙織は延々とラジオを聴き続けた。


 その結果、手術が停止されて命を失った患者もいれば、人工心肺が停止したために亡くなった患者もいる。数名の人たちが命を失った。


 沙織は夕方まで暑さに耐え、夜、沙織の母親が見舞いに来た。

「沙織、今の男性はみんな外国人の女性としか結婚しない。沙織は結婚なんてムダなあがきをしないで、ちゃんとした職業技術を習得して、男性に依存しない人生を送ってちょうだい」

「お母さん。私のことをバカにしているの!私の容姿は劣ってないし、自分言うのは何だけど性格も悪くない。精神障害者でもない。結婚できる可能性はあるわ」

「バカ言うじゃない!若い女性のうち5人に4人は生涯独身なのよ!結婚なんて夢みたいな事を言うじゃない。もっと現実をみなさい」


 数十年前なら耳にタコができるほど「結婚しなさい」と母親が言うものだが、国際結婚が大部分になった時代、日本人の女性は全く相手にされない。結婚したいなら売れっ子アイドルやモデルになるしかない。


 沙織は、どちらかと言えば美人の部類に入るが、世の男性たちは、外国人の女性にしか眼中がない。戦後、数十年もの間に『3高主義、高学歴、高収入、高身長』というシンデレラ症候群のために一生独身生活を余儀なくされた女性が大部分であり、日本人女性に対する強い偏見がある。


 それでも70歳過ぎの求婚歴50年の婚活ブログも数十万件あるが、世の男性たちの笑いものである。


 沙織の母親は言った。

「沙織、性生活は困った事はない。女同士で結婚なら可能性があるかも。親友の黒猫ちゃんを恋人にすれば・・・」

「お母さんの考えは異常だわ。とても不道徳!」

「なら、あんたが描いている漫画や小説もホモばかりじゃない!同性愛を描いてばかりで、みっともない!」

「そ、そんなことはないわ。やおい系は奥が深いのよ。下手な男女の恋愛ものなんかくだらないわ」

親子の価値感が食い違う。


 沙織の母は、悪い印象を残さないために謝り、別の話題に切り替えた。

「今の日本では、純粋な日本人は、わずか15パーセントだけ。あとは外国人のハーフしかいないの。町内会では英語やスペイン語、ポルトガル語に中国語、ハングルまでたくさんの言語があるのよ。100年もしないうちに多民族国家になってしまったわ。お母さんも同時に中国語と英語などいろんな国の言葉を勉強しているけど、わけがわからなくなって・・・」

沙織の母親は、沙織が書いた英文小説を読んだ。上手な英語で書かれている。

「私は英語が得意だから、小説は日本語と英語で書いているわ。二つの言語で書くと2倍以上の時間がかかるわ」

「沙織、今は英文が上手に書けるのは当たり前だから、もっと有益な資格を取りなさい。夢ばかり追い求めないで、一生自立できる女性になって現実を見つめなさい」

そう言って母親は自宅に帰った。


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