凶暴化する知的テロリスト
他の小説サイトから転載しました。
簡潔済みです。
「知識は人間を高慢にさせる」あるキリスト教会の牧師の言葉である。だが増えすぎた知識によって、連続殺人事件へと発展する。
タブレット端末や紙ディスプレイ端末が爆発的に普及した未来社会でも、多くの人たちは競うように印刷・製本された本を買いあさる。読書の時間が欲しいために、『睡眠不要薬』が発明され、薬局で販売許可されるようになった時代の物語。
この薬を飲むと睡眠をする必要がなくなる。1日の睡眠時間7時間を読書についやせられる。
沙織は、やおい系の漫画や小説を買いに深夜、24時間営業の本屋に行く。その時、トラブルが発生した。深夜2時、スキンヘットの年配の女性から文句を言われた。
「あんた!こんな下品な本を買って何がいいの!」
「あたしと、あなたに何の関係があるの!あたしが、やおい系の本を買って、あんたに迷惑でもかかるの!」
沙織はスキンヘットの年配女性に強い口調で反論した。その時、激高しカッターナイフで沙織に切りつけようとした。
「やめて!何も刃物で切りつけることないでしょう」
「うるさい。あんたみたいな堕落した女性がいるから、世の中が狂うのよ」
刃物を振り回す。沙織はよけ続けた。男性客たちが取り押さえた。
スマートフォンで110番に連絡して、そのスキンヘットの年配女性を警察に連行させた。
「危なかったわね、沙織」
「黒猫ちゃん、怖かったわ」
「ねえ、最近、やおい系作家の連続殺人事件が増えているの。表現の自由を暴力で押さえる勢力があるの。怖いわ」
沙織は、カゴに入れた、やおい系作品を何冊か入れ、レジに持っていった。
都内の書店と図書館は全て365日24時間営業である。テレビ番組は廃れ、インターネットの情報が怪しい時代、ちゃんとした作家が書く本が爆発的に売れる。
午前4時、黒猫と沙織の二人は、24時間営業のファミリーレストランで早い朝食を食べる。
「十数年前に睡眠不要薬が認可され多くの人は競うように本を読むようになったわ。テレビ・ビデオ・インターネットだけでは人間の知識欲は満たされないの。で、現代社会には多くの矛盾があるし、そのために環境汚染から人権問題まであるし」
沙織は早い朝食を食べながら語る。
「そうね・・・。でもその知識が新たな矛盾を作るじゃない」
「私は、ただ本から娯楽を得たいだけなの。やおい系がなんでいけないの。私も、やおい系の小説や漫画を書いているのに」
沙織は、同人誌で漫画や小説を書いている。未来の小説家を目指している。
濃いコーヒーを飲み終えた沙織と黒猫は、早朝の街を歩いた。睡眠不要薬を飲まない人たちは、朝早く起きて犬の散歩をした。土曜日の早朝である。
沙織はスマートフォンから朝のニュースを聞いた。
「深夜1時、世田谷区に住む漫画家、八神美津子さんが何者かによって殺害されました。同居している母親からの知らせを受け・・・」
親友の黒猫(あだ名)は強い不安を感じた。
「嫌なニュースだわ。なんで暴力で表現の自由を奪うの。最近、『女性原理党』が凶暴なテロリストになったわ。私たちの文化が破壊される。ねえ、この数年はコミケの開催もなくなったし。防犯のために」
「そうね。コミケだと数万人もの人が集まる祭典だから、数十人のテロリストがいれば、何百人もの人が無差別に殺されるわ。怖い世の中になったわ」
165センチの身長で、いつもジーンズとTシャツという若い女性としては地味な服装の沙織。22歳は短い黒髪をしている。趣味は、やおい系の小説と漫画を描くこと。社会人。
小柄の女の子である黒猫は沙織の親友。共同で漫画を描く。