村人さん、ゲームを手に入れる
暇潰しに書いてたらちょっと話数が増えた。
他作品の繋ぎというか、暇な人用に投稿してみた。
良かったら見てね♪
VR……ヴァーチャルリアリティ-。
仮想世界の疑似体験システム。
俺は今、その仮想世界への入場券たるゲーム機器【エリュシオン】を前に、感動していた。
涙と鼻水を流しながら。
汚いと俺も思うけど、やめられない止まらない。
毎日限界まで必死にバイトをし、500万というゲーマーをバカにしたような金額を払い、ついに手に入れたのだ。
懸賞やらゲームのベータテスターとして応募しては落ち続けた末に手に入れたのだ。
この喜びを押さえるなど、俺には不可能だ。
懸賞で当たったのは黒毛和牛やハワイ旅行で、妹達は俺が落ちたベータテスターに受かったというのに……なんで俺だけ現金?
いや、今はそんなことどうでもいいじゃないか。
俺は、俺はVRをやるぞ!ジョ○ョ!!
我が家の玄関を開け、新たなる世界への一歩を踏み出す。
「おかえりぃぃぃぃぃ!!!」
結果、妹のタックルにより俺の血と汗と涙の結晶が地面へと落ちた。
「NOOOOO!?」
「あ……ごめん」
だだだだだ大丈夫だ!?傷はまだ浅いぞ!?
慎重に落ちたゲーム機器を持ち上げ、安全地帯の自室へ向かおうとした。
しかし、妹のバックアタック。
「たっだいまぁぁぁぁぁ!!!」
背後からの予想外の攻撃に、俺はゲーム機器を手放してしまい膝で蹴り上げた。
ガシャンという音が玄関に響く。
「……あ、遊びに行ってきまーす」
「わ、私も、見たいテレビあるんだったー」
二人の妹がソッと俺から離れて視界から消える。
俺は呆然としながらゲーム機器を眺める。
何とか再起動し、ゲーム機器に手を伸ばす。
だめ押しの母登場。
「あら、おかえり。あわっ!何これ!?」
ここでまさかの水攻め。
父の為にコーヒーを持って行こうとしていたのだろう。
あとは、わかるな?
ゲーム機器のライフは、もう、0だ……
「あー……ごめんね?」
俺は応えない。
いくら箱に入っているとは言え、もう無理だ。
墓を作ろう。
記念碑みたいな立派な墓を。
無惨な姿になってしまったそれを持ち、暗黒を纏いながら自室へと向かう。
妨害はなかった。
まさに、もう何もする必要がないとでもいうかのように、何もなかった。
無惨な箱から解き放ってやり、中身を出していく。
幾つかのパーツを取り出していき、最後に一番重要なVRダイブ用ヘルメット型のデバイス《ペルソナ》。
新品の筈のそれは、全体的にヒビが入り、右目側のバイザー砕け、排熱部分にコーヒーが入っていてほんのりとした匂いが嗅覚を刺激する。
それと同時に涙があふれる。
「俺、何か悪いことしたかな……」
良いことしたというと言うつもりはない。
だが、悪いことをしたとは言わない。
神がいるなら言わせて欲しい、この一言。
「神なんて嫌いだぁぁぁぁぁ!!!」
魂からの叫びが、自室に木霊した。




