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レンズ  作者: オリンポス
Mission complete!
15/15

――最終話――(完結)

 日はきれいな夕焼けに染まり、所どころで絶景を映し出していた。

 ステーキハウスの、角にあたる席に幸治達は座った。

 窓側の、長いソファがあるところに山岸警部、佐貫警視正。通路側の椅子に、柴口幸治と田沢刑事は座った。

 最初にメニュー表を手にしたのは、山岸と佐貫の2人だった。ページの少ない本みたいにして作られているメニュー表を眺め、彼らは真剣に悩んでいた。

「サラダバーありますよ、佐貫さん食べます?」

 山岸が佐貫に質問する。

「そうだな、手頃な価格だし……俺は注文するよ」

「そうですか。では私も」

「ドリンクバーもあるぞ」

「それは欠かせませんね」

 こんなやり取りを、数分見せつけられたあと、ようやくメニュー表がまわって来た。




 ――数十分後。

 みんなが食べ終わったところを確認した田沢は、幸治に向かって、

「あの事件のトリックがなんだったのか、気になるんで早く教えてください」

 と、言った。

 すると窓側のオヤジ共2人は、

「ドリンクバーを飲み過ぎたせいでトイレ行きたくなったから、ちょっと行ってくる」

 と、口をそろえて言い、立ち上がってさっさと行ってしまった。


「雰囲気ぶち壊しですね」

 幸治はそう言ったが、田沢は、

「早く教えてください」

 と、まるで気にもとめない様子。

「わかりました」

 仕方なく幸治は語り出した。


「放火のトリックからいきましょう。俺を薬品で眠らせたあと、犯人はあることをしました。それは大きく分けて2つあります。1つは持参していたペットボトルを日の当たりそうな場所に置くこと。おそらく中身は透明度が高い液体……水、で間違いないはずです。もう1つは新聞紙を用意することです。これで準備は完了です」

「待ってください」

 と、田沢。

「その時点でラベルは、はがされていたんですか?」

「むろんです」

 と、幸治。続けて、

「そうすることによって、ペットボトルの水はレンズの役目を果たしてくれるんです。光を一点に集中させるだけですからね」

 田沢は、

「つまり、小学校の時にやった、太陽光を一か所に集めて紙を燃やす。というやつの応用ですか?」

 と訊いた。

「そうなります」

 と、幸治。


「電話のトリックに移りましょう」

「電話?」

 田沢はそう訊き返す。

「兄貴からの謎の電話ですよ」

「はぁ……」

 田沢はわけもわからず、そう答えた。

「今となっては推測でしかないんですが、きっとあれは優香さんの共犯だったあの人による電話だったと思うんですよ。手口はオレオレ詐欺とほとんど一緒で、切羽詰まった声で、いきなり話をされては、誰だって正確に人の声を聞き分けることはできないはず、そこを利用したんです」

 と、幸治は言った。

「なるほど」

 と田沢は呟いた。同時に、警部には教えてやるもんか! と、子どもじみたことを考えていたのである。




 すでに30分は経過しただろうが、オッサン2人はまだ戻ってきていなかった。

「山岸先輩たち、遅くないですか?」

 田沢がドリンクを飲みながら、それとなく訊いた。

「あっちも、それなりにトイレで話してるんじゃないですか」

 と、幸治はサラダバーのレタスをかじりながら答えた。みずみずしくておいしいのだ。


「それにしては遅すぎますよ! ちょっと確認してきます」

 田沢はそう言って、すっと立ち上がると、そのままトイレへ直行した。

「ご愁傷です」

 田沢が見えなくなるのを目で追っていた幸治は、そう呟いた。

 そして伝票はそのままにし、ステーキハウスをあとにした。


 山岸らの失踪(?)について、幸治のくだした推理はこうだった。山岸と佐貫はトイレに行くといって立ち上がったが、それは嘘であり、最初から幸治と田沢にたかる算段をしていた……つまり、帰ったのだ。

 しかしそう考えると、山岸と佐貫の息がぴったり合っていたことが、まず不自然であり、どうにも打ち合わせをしていたとしか思えないのだが、それはないだろう。そもそも、ここに来たこと自体、偶然だったのだから。

 いや、本当に偶然か? あの時、ステーキハウスに向かうように言ったのは、佐貫だったような。

 だとすれば、田沢の上司的な人はここに着いてからそんなあくどいことを思いついたのか? それともただお腹を壊しただけで、まだトイレにこもったままなのか? もしかしたら本当は事前に打ち合わせをしていたのか?


 ――幸治は見なれた町内を、散歩するかのように帰宅しており、ずいぶん遠くまで歩いてきていた。

 自宅まであと少しだが、家が全焼していることはすっかり忘れていた。もちろん自分が検査入院をしている最中だということも、憶えていなかっただろう。


 彼の不幸人生は、これから幕開けということになりそうだった。

大晦日に執筆しすぎて体調壊したので、正月に点滴をうってもらいました。

(注射が怖いのに……)

それからすぐ書いたので、内容は皮肉な感じです。


[高校の思い出がそれって……。なんか『バクマン。』みたい(笑)]

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