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学園生活の終わりと新たなる問題児

「いや~、実に素晴らしいコンテストだったね」


「あぁ、まさかあそこまで過激だとは思わなかったな」


 ニヤニヤしたアレイストとユニアスは、先程終了した美人コンテストについて語り合っている。何気に、リュークも頷いている。


「最後の自己アピールと、決めポーズが良かった。まさか、イズミがあんなポーズをするとは思わなかったが、最終的にミリアの一人勝ちだったな」


 そう、結果はミリアの大勝利で終わったのだ。


 最後の最後で、恥ずかしさのあまり緊張してミリアは失敗したのだ。自己アピールでは舌を噛み、ポーズは腰に巻いていた長い布を踏んでしまった。


 布に足を取られた結果、布は取れる上にブラが外れて手ぶらでポーズを決めたのである。その過激さに、一気に男子生徒の票を獲得して優勝したのだ。


 因みに、次点でフィナ、イズミと続いてイズミも入賞している。


「あぁ、僕は絶対にあの光景を忘れない!」


 鎧を着こんで、ガッツポーズをとるアレイストだった。しかし、美人コンテストが終了したので、勿論彼の婚約者たちも壇上から降りてくる。


 水着から仮装した服に着替えた彼女たちは、アレイストの後ろで暗い笑みを浮かべていた。


 リュークもユニアスも、さっさと場所を移動してルーデルとイズミを探す事にする。彼らの後ろからは、アレイストの悲鳴が聞こえてきた。


「え、嘘ぉ! 出てたの? ……冗談です! 冗談だから!! アァァァ!!」


 丁度、アレイストが叫ぶと同時に二人は並んで歩くルーデルをイズミを見つける事が出来た。



『続いては、告白タイム!! 少しお酒も入った所で、学生時代の最後を憧れの人に告白して見たい奴は手を挙げろぉぉぉ!!』


 テンションの高い司会者だが、会場のノリはいまいちである。最後の最後で、告白しろと言われても困るのだ。


 大体、ある程度の生徒は既に相手がいる状態である。貴族なら婚約者がおり、人によっては学生でありながら数人の妾を囲っている者もいる。


 その筆頭が、アレイストとユニアスである。


 会場は微妙な雰囲気に包まれており、遊び半分で参加する生徒が数名いるだけだった。そんな中で、平民出の生徒たちが離れた場所で固まっている。


 フリッツを始めとした生徒たちで、三年課程の生徒たちだった。


 近衛隊の隊長になる事が決定しているフリッツは、親しい生徒を近衛隊に誘ったのだ。集まった彼らは、フリッツの取り巻きたちである。


 盛り上がりが微妙な会場で、グラスを持ちながら周りを見ていた。


「どうしたんだ、フリッツ? 参加しないのか」


 同級生の一人が、フリッツに余興に参加しないのかと持ちかける。近衛隊の隊長という、一騎士団の団長以上の権力を持ったフリッツは女子にもある程度の人気がある。


 特に、平民から抜け出したい生徒や、下級貴族の生徒からは声をかけられる事も多かった。しかし、フリッツにはアイリーンがいたので、このような余興に参加する事は出来ないのだ。


「いや、こんな余興で笑い者になるのは勘弁だ。それよりも、このパーティーもタダじゃないんだがな。貴族の連中は分かってないのか?」


 周りが冗談を言う中で、フリッツだけは空気を読んでいなかった。


「あぁ、そ、そうだな」


 フリッツについて行き、出世を夢見る平民出の騎士たちは無理やり真面目な顔になる。本当なら、学園での最後くらいは楽しみたかったのだ。


 微妙な雰囲気を出す彼らの前に、着ぐるみを着たルーデルとイズミが見えた。


 冗談で男に告白をする生徒と、冗談と知らされないままに告白を受ける生徒の掛け合いを聞いて笑っていた。


 フリッツは、手に持ったグラスに注がれたジュースを一気に飲み干す。


「王宮の命令を無視してドラグーンになった道楽貴族に、そんな貴族を籠絡した異国の女か。腐ってるな、今のクルトア王国は……」


 一見すると、フリッツの意見は正しくはないが間違ってもいなかった。知らない人がルーデルとイズミを見れば、確かにそのような関係を想像してもおかしくないのだ。


 例え二人が、どんなに互いを想っていたとしてもだ。


「なぁ、本当にルーデルは近衛隊の入隊を蹴ったのか? それって許されるのかな?」


 気の弱そうな取り巻きの一人が、ルーデルの肩を持つような事を口にすると、フリッツの表情が変わる。


「相手は貴族で大公だぞ! そんな事をしてもおかしくないのは、お前も知ってるだろう。あいつらみたいな腐った貴族は、国のためにどうにかしないといけないんだ」


 フリッツの意見に、全員が頷いた。


 学べる環境があり、調べられる環境があったとしても、自らが信じたい情報しか見なければ偏った思考を持つようになる。


 友人と笑い合う? ルーデルを睨むフリッツ。しかし、二人は非常に似ていた。


 ルーデルも、誰かを信じる事が無ければドラグーンに固執して駄目になった可能性もあるのだ。二人の違いは、他者を受け入れる事が出来るか出来ないかである。


 ドラグーンを夢見たルーデルと、英雄を夢見たフリッツ。


 ここに来て、その差は埋められなくなる程に開いてしまっていた。


「俺が絶対にこの国を変えてやる」


 着ぐるみを着て、イズミに抱き着くルーデルを睨みながら、フリッツは呟いていた。



 会場では、告白タイムを利用してソフィーナが裏で暗躍をしていた。


 王様ゲームの番号札を入手したソフィーナが、フィナの元に現れたのだ。会場の隅で隠れるように合流した二人は、急いで準備に取り掛かる。


「姫様、用意が出来ました」


「良くやってくれました。流石上級騎士ですね」


「……ご期待に沿えて何よりです(こんな事で褒められても嬉しくないな……)」


 手早く目印を付けると、フィナは他の番号札の特徴を把握する。しかし、それだけでは不安だったのか、ソフィーナの顔へと視線を向ける。


 肩を落とし、ソフィーナは黙って頷くのだった。



『さて、告白タイムも終了した所で、いよいよ王様ゲームの始まりだぁ!! 何とも不敬な呼び名のゲームですが、フィナ・クルトア様からの了承も得られた正式名称! 堅い事は言わずに開始しましょう。では、初回はフィナ様も参加して貰いましょう』


 テンションの高い司会者に紹介されると、フィナは控えめに手を振りながら生徒たちが作る輪の中央へと歩み出る。その横には、護衛という事でソフィーナが付き添っていた。


「宜しくお願いいたします」


『さて、無礼講と行きたい所ですが、ここは流石に次期三公の方々は外せない!』


 紹介されると、ルーデルたちも前に出る。その後も、フィナが参加するという事で、初回はある程度真面目で空気の読める参加者が選び出される。


 ルーデルが空気を読めるかは微妙だったが、真面目である事に変わりはない。だが、アレイストは初回のメンバーから外される事になった。


『それではこの箱にある番号札を引いて貰いましょう! 先ずはフィナ様からですね』


 そう言って、係りの生徒が箱に入った棒をフィナへと勧める。棒の先には丸い札が付けられており、そこに王様や番号が書かれている。


「では失礼して(フハハハ!! 王様は私よぉぉぉ!!)」


 棒を一つ選ぶと、フィナはそのまま付けておいた目印を回収する。問題も無く王様の札を引くと、気を引き締めた。


(ふ、危ない危ない。いつもここで気を抜くから、もう少しで駄目になるのよ。今日は師匠を手に入れるチャンス! ここで失敗すると後が面倒なのよねぇ)


 ユニアスやリュークが番号札を引くと、ルーデルが着ぐるみを着ているので番号札を引き難そうにしていた。その仕草に、フィナは涎が出そうになる。


(駄目よ私! アレは偽のモフモフ。もっと心を強く持たないと……ちくしょう、それでも襲い掛かりたい自分が憎い!!)


 両手を使って番号札を引いたルーデルを見ながら、フィナは自分の中で欲望と戦っていた。可愛らしい外見と仕草に心を奪われるのである。


 ただ、それでも手を抜く事は無い。ソフィーナに視線を向けると、上級騎士は黙って部下へと合図を送る。すると、ルーデルの後ろに配置した上級騎士である部下が、ルーデルの番号札を確認した。


 この時のために、部下の中でも目が良い者を配置している。有能である彼女たちの能力は、王様ゲームにその能力が使われているのだ。


『準備が出来ましたか? それでは、王様だ~れだ!!』


 司会者が声を張り上げると、待ってましたと内心で笑いながらフィナはそっと手を上げる。外見だけなら、控えめな美少女である。


 そうしている間にも、ソフィーナはルーデルの持っている札の番号を伝えてきた。しっかりと確認したフィナは、内心で笑いが止まらない。だが、ルーデルへと視線を向けるとある事に気付いた。


「あの、私みたいです(師匠の番号は五番かぁ……それじゃあ命令を……?)」


 リュークやユニアスと談笑するルーデルは、着ぐるみは可愛らしいく仕草も問題ない。ただ、何かが足りなかったのだ。


「初回でどんな命令をされるかで、この後の流れが決まるな」


「マジかよ。キスとかセーフだよな」


「王女様とか? 完全にアウトだと思うぞ、ユニアス」


「いや、何番と何番がキスという命令もありらしい。アレイストはこの手の事には才能があるな」


 リュークは、ゲームを考案した事になっているアレイストを褒める。だが、アレイスト自身は、美人コンテストで婚約者たちの機嫌を損ねた事でお仕置きを受けていた。


「確かにな、このゲームなら店でも使えそうだ。あいつは天才かも知れないな!」


 ユニアスは、自分が通っている店でもやる事を決めていた。こうしてまた一つ、アレイストは伝説を残したのである。


「この手の才能は俺にはないな。少し羨ましいよ」


 着ぐるみを着たルーデルが、少し考え込む仕草を取る。だが、フィナには外見の可愛さと仕草は満足できても、その喋りに満足が出来なかった。


 もう少しだけ外見が可愛くなく、もう少しだけ仕草が可愛らしく見えなければ良かったのだ。


(…………有り得ない。あの喋りは有り得ないわよ! そこまで来たら、喋り方も何とかしなさいよ!! もう少しじゃない。もう少しで完璧じゃない!!)


『それでは、フィナ様には命令をしていただきましょう!』


「姫様、命令をしてください(はぁ、若い子たちのパーティーで仕事とか……帰りたいなぁ)」


 心ここに非ずのソフィーナの声を聞いて、ルーデルとのキスという目標を達成する事は目の前となる。だが、フィナの中で新たな欲求が生まれていた。


(師匠とキス……でも、語尾に『ワン』と付けさせるのも捨てがたい。待ちなさい私! ここでブレては駄目よ!)


 心の中で葛藤していると、フィナの心の中で天使が囁く。


『何をしているんですか! 最初の目的を果たしなさい。ここで師匠を手に入れるのよ!!』


 すると、悪魔も囁く。


『へへ、良いのかなぁ? この機を逃すと次は無いかもよ? キスとか既成事実何て、後から幾らでもできるじゃない。権力は使うためにあるのよ? ここは語尾に『ワン』を付ける一択よね!』


 悪魔の言葉に、フィナの中の天使も同意する。


『あら、確かにそうですね。ならここは、語尾に『ワン』を付けるで正解ですね! ヤバイ、興奮してきたぁ!!』


 涎を垂らして興奮するフィナの中の天使と悪魔によって、フィナの方針は変更される。決意を固めたフィナは、堂々と無表情で命令を下すのだった。


 フィナは、この時にブレてしまったのだ。



「う~、語尾に『ワン』を付けろと言われたワン」


「いいじゃないか。そっちの方が可愛らしいと思うよ」


 王様ゲームは続いているが、生徒の数に対して参加できるメンバーは少ない。ルーデルは早々にゲームから抜けて、順番待ちをしている生徒と変わったのだ。


 ここに来て、フィナの目的は失敗に終わった。しかし、彼女は満足していたので、問題はないだろう。


 語尾にワンと付けるルーデルとイズミは、王様ゲームをしている場所から離れると、料理を食べる事にした。リュークとユニアスが未だにゲームに参加している事もあり、二人で時間を潰しているのだ。


 無論、ルーデルとイズミのために時間を作った二人である。


「それにしても、イズミの水着には驚いたワン」


「そ、そうかい? 参加者は使用後の水着を貰えるから、好きなのを選んだつもりだったんだが……あの水着は嫌いだったかな?」


「そんな事は無い! ……ワン。俺は凄く綺麗だと思ったワン」


 着ぐるみを着たまま、イズミの手を取ったルーデル。イズミはルーデルが気に入ってくれた事を、嬉しそうにしている。


「良かった。少し過激かな、とも思ったんだが、選んで良かったよ」


 水着を選んだのはイズミ自身であり、本人にとっては少しだけ過激という感想を持っていたようだ。ルーデルは、そのままイズミの水着姿を褒める。


「凄く興奮した。後ろ姿とかほとんど紐しか無くて、何も付けてないかと錯覚したワン! でも、出来れば他の奴には見せたくないのも本音だワン」


「あぁ、気を付けよう」


 クスクスと笑うイズミは、少し必死なルーデルの態度に嬉しくなる。


 すると、そこに婚約者たちから逃げ出してきたアレイストが助けを求めに来た。鎧を着ているので、動くと金属のぶつかる音が聞こえてくる。


 目立つ格好をしているアレイストは、婚約者たちが容易に近付けないルーデルを利用したのだ。


「た、助けてくれ二人とも! このままだと、胃に穴が開きそうだ」


 泣き言をいうアレイストが現れると、今度はそこにリュークとユニアスが現れた。二人とも、アレイストを呆れた目で見ている。


「空気を読んだらどうだ?」

「空気読めよ」


 同じ感想を抱いた二人の言葉に、アレイストは首を傾げる。金色の角を持つ黒の鎧を着たアレイストが首を傾げても、可愛らしくは見えない。



 会場では、王様ゲームが盛り上りを見せていた。


 多くの生徒が順番待ちをして参加し、イズミは下級生の女子に捕まってルーデルたちとは別行動となっている。


 壁際で男が四人揃っていたが、アレイストは酔いも回って疲れもあり壁に寄りかかって眠っていた。


「こいつ寝やがったぞ」


 ユニアスがつま先でアレイストを突いて遊んでいると、リュークは溜息を吐く。


「そっとしておいてやれ。あれだけ執着されれば、疲れもするはずだ。……全く、いつか胃に穴が空くぞ」


「確かにだワン」


 ルーデルたちがいようと、アレイストの婚約者たちは突撃してきたのである。流石にいつものノリは抑えられていたが、それでもアレイストにはきつかったようだ。


「まぁでもよ、ミリアがポロリした時に叫んだのは痛いよな。あれをかなり責められてたぞこいつは」


 ユニアスが言うのは、ミリアが手ブラをした時の事だった。興奮したアレイストが、酔いも回った事で叫んでしまった。


 それを壇上の上から婚約者たちに見られていたのだ。言い訳のしようがない。


「……まぁ、このまま行けばミリアもアレイストと婚約だろな。エルフ全体にしてみれば、今回のミリアの件は幸運だ。本人の意志には関係なく話が進むはずだな」


 リュークはグラスを傾けながら、中の飲み物を動かしてその様子を見ている。真面目な話になると、ユニアスは天井を見上げた。


 ルーデルだけは、着ぐるみのせいで真面目な雰囲気を感じられない。


「はぁ、大人になるってのは堅苦しくていけねーな」


 ユニアスは手に持ったグラスの中の飲み物を飲み干すと、少し寂しそうな顔をした。


「いつまでも学生のままという訳にはいかない。俺たちも同じだ。この後は王宮で少しばかり仕える事になるが、それでも互いの派閥がある」


 本来なら、争うべき家柄だ。ルーデルは別としても、それでもアルセス家は派閥を持っている。無関係ではいられない。


「面倒臭いな」


 ユニアスの言葉に、リュークは何も答えない。だが、ルーデルはその前にやるべき事がある。


 黒い霧たちとの約束……運命とでも言えばいいのか、大きな流れに抗わなくては先に進めないのだ。


「俺はドラグーンだワン。当分は辺境に行くのが習わしだな……ワン」


「いや、お前は特別だから王宮勤めだろう? 寝ているアレイストは、この前に出来た親衛隊に入るしな。いきなり隊長候補だぜ」


 ユニアスがルーデルの発言を訂正するが、ルーデルは少しだけ理解していた。どうしようもない流れがあり、自分はその流れにのまれていると……。


 ただ、抗う事は諦めてはいない。


 抗う事が約束であり、自分がドラグーンになれた理由でもあるからだ。不意に、まだ人間だった頃のサクヤが隣にいるような感覚をルーデルは覚えた。


(お前達との約束は、必ず守るよ)


 少しだけ、サクヤは悲しそうな顔をした気がする。しかし、すぐにサクヤがいるような感覚は無くなった。


「まぁ、ルーデルがいればアルセス派も勢いづくな。これからは二大派閥とは言ってられないぞ。ルーデル、お前も覚悟を決めろ。ドラグーンでも白騎士だ。お前にも次期王位の可能性が無い訳じゃない。いや、この中では一番可能性が高い」


 リュークは、一度だけアレイストを見る。しかし、どうにも壁に寄りかかって眠っているアレイストが、王になる所を想像できなかった。


「王になれば、俺たちともぶつかるな」


 ルーデルが王になっても、政策で衝突すれば大公家は反発する。学生時代の友人関係は、そこでは通用しないのだ。いや、周りが許さないだろう。


 黙っていた三人だが、イズミが三人の下に近付いて来た事でユニアスが口を開いた。


「まぁ、楽しかったよな。今は、それでいいか」


「そうだな」


「そうだワン」


 ルーデルの語尾は、律儀にも守られている。その事を、リュークもユニアスも笑わずにはいられなかった。


 最後まで締まらない事を、三人は笑い合う。



 卒業パーティーを終えた学園では、学園長が頭を抱えていた。


 ここに来て、パーティーの内容が過激であると関係者や父兄から文句が来たのだ。王様ゲームの名前は、フィナが認めた事で問題視はされていない。


 だが、美人コンテストに男子は兎も角、女子やその父兄が文句を言ってきた。これは、イズミとミリアが原因である。


 美人コンテストも許せないが、過激な水着も許せないと文句が出たのだ。中には、参加した生徒もいるので、単純に負け惜しみもあったのだろう。


 そして告白タイムも少々問題となったが、生徒の間では冗談で男同士で告白をして、そこらの喜劇より面白かったと評判だった。


 仮装には特に何も言ってこないが、学園にはパーティー後に相当な苦情が寄せられている。


 ただ、ある程度は評価もされているのが、せめてもの救いだった。生徒からは、思い出に残るパーティーだったと、人気がある。


 在校生たちも、来年のパーティーを楽しみにしている者が多い。


「ここに来て気を抜いた事が仇になるとは……まさか、イズミ君とミリア君が……」


 ルーデルたちを警戒していなかった訳ではないが、思いもよらぬ所からの問題噴出で学園長は頭を抱えている。


「はぁ……まぁ、わしの任期も残す所はあと一年。良い思い出になったな」


 ルーデルたちが学園に来た頃を思い出すと、妙に頬が緩んだ。大変だったが、それなりに楽しかったと思い、学園長は苦情処理の仕事を進める。


 ……が、二年後に訪れる問題児のせいで、学園長はまたしても苦労する事になるのだ。


 その問題児のせいで任期が伸びる事になるのを、まだ学園長は知らなかった。


「さて、残り一年を頑張るか」

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