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番外編 マーティを超えろ 3

 ルーデルが女子寮に通いだしてから、女子寮の……特に一部の女子から不満の声が挙がっていた。そんな事は知らないルーデルが、いつものように王女の呼び出しに応えて王女の部屋を訪問しようとしていた。三年生になってからは、毎日通う事はしていない。


 それでも週一のペースで呼ばれ、酷い時には「今日は泊まっていけばいい」と、王女自身が言ってくるのだ。流石にルーデルの方が遠慮してしまう状況だ。そんな事が続いて、ルーデルも女子寮を目指す足取りが重くなっていた。


「この時間で本を読んだり訓練に当てたら、効率がいい気がする。でも、一応は王女の呼び出しだし」


 ブツブツと独り言を言いながら、ルーデルが女子寮の廊下を歩いていると


「男の臭いがするな……それも貴族様だ」

「姉御! 不味いですって、そいつは貴族の中でも有名な方です」

「幾らなんでも、喧嘩を売るには相手が悪いよ姉御!」


 かなり着崩した……いや、最早原形をとどめていない制服を着た三人の女子が、ルーデルの進行方向に立っていた。その中の一人は、明らかにルーデルを睨んでいる。そして大きい! ルーデルも小さい方ではないが、頭一つ分は余裕で大きいのだ。そんな女子がルーデルに近付いてきた。


「何かようかい? 急いでいるんだが」


 獰猛な、ユニアスとは違って、亜人である彼女たちは特に野性的な獰猛さを秘めていた。それもそのはずだ……彼女たちは亜人、獣人族の中では最強と言われる虎族の女子だったのだ。しかもルーデルよりも上級生である。下手をしたらルーデルでも負けてしまいそうな感じすら受ける。


「よう? あるに決まってんだろう! 男がここに居ていい訳ないだろうが! さっさと尻尾撒いて帰りなよ貴族様!」


 見下し、怒鳴るようなその声は、ドスが聞いて恐ろしく聞こえる。迫力は満点だが……


「それよりも君たちの服装は違反だろう? そんな恰好は止めた方が良い。スカートが長かったり短かったり……胸元も、その……」


 虎族の女子の格好は、貴族の女子が周りに多いルーデルにとって奇抜に見え、少しドキドキする格好をしていたのだ。


「どこ見てんだよガキが! そんなに止めさせたけりゃ先公でも呼んできなよ」


 ニヤニヤと笑い出す姉御と言われている女子が、ルーデルの首元を掴んで持ち上げる。だが、ルーデルはここ最近の撫ですぎで、条件反射に近く虎耳を撫でてしまった。一瞬の出来事に姉御も驚くが、すぐに頭に来てルーデルを投げ飛ばそうとして……腰が砕けた。


「え? ちょっと待ちな……よ。な、何だいこれは!」


 床に膝をついた状態で、太ももは小刻みに震えている。座り込んだ姉御のおかげで、ルーデルは地面に足が着いて一安心だ。しかし、それを見ていた姉御の子分たちがそんなルーデルを許さない。


「姉御に何してんだこのガキ!!!」


 飛び掛かってくる虎族の女子たち……結果は全員が撫でられてしまった。



「……困ったな」


 ルーデルは、騒ぎが収まった廊下で現状をどうするか考えた。虎族の女子たちは部屋が近いだろうからこのままでも良いかも知れない。送っていきたいが全員が気を失っていてはどうする事も出来ないし……そう考えて思いついた。


「イズミに頼ろう!」


 そうしてイズミの部屋に向かうルーデル。残されたのは気を失った虎族の女子たちだった。そしてそこに都合よくあらわれたのは……


「全く……師匠はどこに居るのかしら?」

(時間を過ぎても来ないとか紳士として失格だろう! 私は淑女失格だけどね! 早くミィーとネースをモフモフ……?)


 廊下を護衛の上級騎士と歩くフィナは、廊下で気を失う虎族の女子たちを見つけてしまう。そして少し考えて、これはルーデルが絡んでいると判断した。虎族の女子たちの姿が、普段見慣れているミィーの撫でられ後に似ていたからだ。


「師匠はしょうがないですね」

(師匠が食い散らかした後は、弟子である自分が片付けないとね! ……ヤッベ、興奮してきてよだれでてくる!)


 無表情でそんな事を考えながら、フィナは虎族の女子たちを自分の部屋へと運んだ。……その後は、美味しくモフモフした。


「誰もいないぞルーデル?」


「あれ? おかしいな……さっきまで気を失った女子がいたのに……」


 その後に現れたイズミとルーデルは、誰もいなくなった廊下でしばらく探し回るのだ。そしてイズミは当然の疑問を投げかける。


「所でルーデル、なぜ女子寮に居るんだ? しかも平然と……」



 そうして次の日、ルーデルは昨日の夜に王女の部屋に行かなかったために、また呼び出されていた。憂鬱な気分で女子寮に向かうルーデル。そこには、学園の校則を守った制服を着た虎族の女子たちがいた。少しモジモジとして慣れない格好に照れている。


 そんな彼女たちが、ルーデルに気付いて近寄ってきた。


「き、昨日は本当にすいませんでした! あ、あと……昨日の事は」


 何か言い難そうにしている女子に対し、ルーデルは昨日の格好の事を言わないで欲しい。そういう事だと受け止めたのだ。確かに少し刺激的な格好をしていたし、黙っていてほしいのだろう……ルーデルは本気でそう思った。


「ああ、黙っているから大丈夫だ」


「……? い、いえ、そうではなくて!」


 何か言いたそうにモジモジする虎族の女子。しかし、ルーデルは王女に呼び出されていて時間が迫っていた。その場は予定があると言ってそのまま後にする。


 そして王女の部屋に向かう途中で、ネースが待っていたのだ。……首輪をして!



「私をあなたの一生の奴隷にしてください」


 潤んだ瞳で上目使いでルーデルを見てくるネース。しかし首には首輪をつけて、しかも奴隷にしてくださいと発言してきている。普通の男なら了承するなり悩んだりするだろう……しかしルーデルは


「クルトアは奴隷制度は廃止している。だから、奴隷の売り買いや所有は犯罪になるよ」


 真っ向から全否定した。


 しかし諦めないネース。体を密着させて猫なで声で甘えだす。


「言葉のあやです。一生私を飼ってくれれば、それだけで満足です」


「いや、亜人とは言え飼うと言う表現はおかしい! ……あ、あれ? 俺の話聞いてる?」


 ネースはルーデルの服を脱がそうとボタンをはずし始めた。……ここでルーデルは怖くなって逃げ出した。それこそ全速力でイズミの部屋に駆け込んだのだ。


「助けてくれイズミ!」


 イズミはそんなルーデルの廊下を走る足音で、部屋に入る前に気付いていたが……同室の女子はいきなり部屋に飛び込んできたルーデルに驚いていた。


「また何かしたのか?」


「奴隷志願してきた! 黒猫が奴隷志願してくるんだ! 俺は犯罪者になってしまう!」


 よく分からないルーデルの答えに、イズミは対処のしようもなく……適当に窓からルーデルを逃がしてやった。ハッキリ言ってイズミはルーデルに対して甘すぎるだろう。普通は女子寮の管理人に突き出してもいいくらいの出来事だ。



 そして、その出来事を知ったフィナは


「そう、師匠は今日も来ないの……」

(ヤッバイ、いつのまにか私のネースが師匠に寝取られてた! 悔しいし、少し興奮してくる!!! どうしよう、このままだと私のモフモフが全員寝取られて……興奮してしょうがないな。本気で師匠を手に入れるかな? そうしたら一生モフモフには困らない。あれ? 師匠って三公だし、相手的に全然問題ないじゃない!)


 一人で興奮していた。


 そしてそんな王女の護衛であるソフィーナや友人であるミィーは、ルーデルが来ないのを残念そうにしていた。そしてフィナは言うのだ。


「まぁ、明日に期待しましょう」

(学園に居るんだから少しくらい期間が開いても問題ないわね。また明日からモフルぞ!!! やっぱり女子寮のモフモフから制覇しないとね!)


 そんなフィナの願いは、イズミによって簡単に叶わなくなる。

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