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人形姫のライバル

 ルーデル達が無事に? 進学し、基礎課程を修了し三年生になった。基礎課程を修了すると、クラスは無くなる。生徒一人一人が事業を選択し、自分の将来に必要な授業を選択するのだ。そうして選択する授業も、個人の能力によって変わってくるが大体は同じになる。


 騎士を目指すならマナーを学び、戦闘の実技を学ばなければならない。その他にも必要な物もあるが、目指す物によって大体の選び方があるのだ。……授業を受けるにも金がかかる学園に置いて、少しでも安くしたい平民出の学生たちは最短の道を選ぶ。


 三年や一年と言う時間を使って学園で学ぶのだ。学ぶのだが……



「よく来てくれた三人とも……呼ばれた理由が分かるか?」


 五年生となり、最上級学年で男子寮の監督生に選ばれたバーガス。彼が同じように男子寮の監督生となった生徒達と共に、三人……ルーデルにリュークとユニアスを呼び出したのだ。


「いや、分からないな?」


 本気で分からないルーデル。


「上級生に呼び出されるのは嫌な気分だ……呼び出した理由は何だ?」


 呼び出した上級生に対して、いきなり上から目線なリューク。


「何かしたかな……覚えがないな」


 少し考えて思いつかないユニアス。


 そんな三人を前に、バーガスや監督生の五年生達が難しい顔をする。ここに居る監督生の五年生には共通点がある。騎士になる事が決まった生徒達だ。しかも、平民から騎士になる優秀な生徒達。


 例年通りなら、貴族の子弟の騎士が監督生に選ばれる。今年もそうなる筈だった……しかし、今年の三年生には次期三公の三人、ルーデル達がいたから問題だった。


 三公のそれぞれの派閥が監督生を出そうとした。しかし今年は問題児の筆頭であるルーデルが三年生となっている。三年生は基礎課程より自由な時間が多い。そうなると過ごす場所はおのずと寮が多くなる。


 誰が面倒を見る?


 それを考えたら……貴族の子弟は監督生を辞退した。そしてルーデルと仲のいいバーガスが選ばれたのだ。バーガスにしたらいい迷惑だった。頑張って騎士になる事が出来たら今度はルーデル達の監視役だ。外から見ている分には面白いだろうが、関わるとなると大変だ。


「そうか……なら教えよう。先ずはリューク様からだ。魔法の実技場での破壊活動」


「? 壁を破壊するつもりで魔法を放てと言ったのは教師だぞ? 私はそれを実践しただけだ」


 魔法の実技場では壁に向かって魔法を放つ。その壁は、魔法で特注された魔法に対して頑丈な壁である。それをリュークは破壊したのだ。教師もまさか破壊できるとは思わなかったのだが……ちなみに、ルーデルも必殺技開発で破壊している。


 最終的には、施設ごと破壊できる魔法をリュークと開発したルーデル。魔力の消費量とけた違いなコントロール技術を必要とする破壊だけを考えた攻撃魔法が、施設を粉々にした。……理論だけは昔から考えられてきたが、実戦向きでないために誰もが諦めた攻撃魔法……それを完成させたルーデルとリューク。


「次! ユニアス様は門限破りの常習犯だ!」


「何言っている? 門限には学園に居たから破っていない」


「あれ? 門限は点呼執るけど、学園に居たら問題ないのかいユニアス? なら俺も大丈夫かな」


「点呼執る時に居なかったら門限破りだ!」


 ユニアスとルーデルに対して怒鳴るバーガス。因みに、この問題もルーデルが……


「……最後にルーデル。この問題児! 今の二つに加えて女子寮での騒ぎの原因に、いろんな種族からの苦情が来ているんだぞ!!!」


「お、おう。確かに女子寮で騒いだが、あれは王女が悪いと思う。俺に色んな女子を撫でさせて、一人で騒いでいたし……と言うより、あの子は感情激しくないか?」


 バーガスは三人の中で一番の問題児であるルーデルの事について説明をしだす。女子寮でルーデルが亜人の女子に対してセクハラをしたと言うのだ。実際に触れただけで数多くの女子を……


 そんな事をしたルーデルにも問題はあるが、原因はフィナにある。彼女はお礼がしたいと言ってルーデルを女子寮に呼び出した。普通はここで可笑しいと思う。しかし相手はルーデルだ……気にせずに女子寮に顔を出した。元々、やましい気持ちがないルーデル。


 しかしフィナは違う! やましさ爆発だ!!!


「白猫のMちゃんからの報告では、お前のせいでお嫁にいけない! と報告してきているぞ」


「ミィーの事か? でもあれは……」


「ちょっと待てルーデル! お前……まさか上級騎士にしたアレをやったのか? どうして俺を呼ばなかった!!! 俺もアレを習得しようとしたが、どうしてもできないんだ……教えろ! アレの極意を教えてくれ!」


 ルーデルに詰め寄るユニアスをリュークが押さえる。


「いい加減にしろ! 話が進まんじゃないか!」


「他にも黒猫に、エルフに……最後には虎族だ。あんな化け物みたいな種族の女を、どうやったら手なずけられるのか同じ虎族の男子からも問い合わせが来ている。正直迷惑だ! 毎日毎日、むさくるしい大男どもにこっちは半ば脅されているんだぞ!」


 被害を受けている他の監督生たちも一斉に頷く。虎族……身長が男女ともに二メートルを超える強靭な肉体と獰猛さを併せ持つ亜人である。数が少ない種族でもあるが、理由は女性の虎族が強い男を好きと言う何とも言い難い理由だからだ。


 弱い男はお呼びでない。そんな厳しい虎族に置いて、ルーデルはまさに救世主である。撫でるだけでいいのなら、俺にも出来ると虎族の男に興味を持たれるが……腐っても三公のアルセス家である。聞くに聞けずに監督生たちに押し掛けるのだ。


「意外に虎族の女子は可愛いぞ? それよりも俺は黒猫族が怖いな……首輪をつけてきて『一生、あなたの奴隷にしてください』とか言われて本気で怖かった。イズミに頼んで助けて貰わなかったらどうなっていた事か……」


「……もう本当に嫌だこいつ! 何を一人だけ幸せ一人占めにしてるんだよ! 俺達はお前のせいでむさくるしい亜人達に追われて、脅されて……今度紹介くらいしろよ!」


 本音が混じるバーガスの泣き言に、ルーデルは分からないまま慰める。


「大丈夫だ! バーガスならきっとできるよ」


「その無責任な慰めを止めろ! お前のせいだからな……ちょっと待て? お前、さっき王女がどうとか……まさか王女に手なんかだしてないよな!!! 出していたら俺達もただじゃ済まないんだぞ!!!」


 必死になる監督生たちに、ルーデルは頬をかきながら否定する。


「何もしていない。近くにソフィーナさん、上級騎士が控えていて触る事も不可能だ。……ただ、告白されただけだ」


「何!」

「あの人形姫にか!?」

「もっと不味いだろうが!!!」


「安心してくれ……断ったから!」


 自信満々に答えるルーデル。その場にいる全員が慌てる中、ルーデルは帰りたいと考えていた。だがそれはできずに拘束されて女子寮での出来事を話す事になった。そしてバーガスは、対ルーデルの最終兵器を用意する事にした。



 ルーデルが拘束されている時に、原因であるフィナは時間になっても師匠であるルーデルが女子寮に来ない事に苛立っていた。今日こそはあの秘儀を伝授して貰おうと思っているのに……そんなフィナは、自室で護衛として王族の命で付けられたソフィーナの監視を受けている。


 部屋を歩き回るフィナに、ソフィーナが注意する。


「王女様、はしたないですよ。王族たる者、常に堂々としていなければなりません。それから、あのアルセス家のバカ息子とは関わらないようにしていただけませんか」


 くどくどと同じような事を言うソフィーナに対しフィナは


「そうね。考えておくわ」

(何言ってんのこいつ? 命の恩人だから会うくらい問題ないだろう。それに私が知らないと思っているのかな……毎回私を庇うふりして撫でられているお前が、色っぽい下着を最近つけだしたって部下が噂してた事を……もうお前は口だけ嫌々で、体は準備万端じゃん)


「ひ、姫様……今日もルーデル様は来るんですか? なら私は帰ります」


 逃げ出すように部屋から出ようとするミィーの尻尾を捕まえるフィナ。優しく尻尾を引き寄せて体を押さえる。


「逃げないの……大丈夫だから」

(逃がさないわよ子猫ちゃん!!! 今日こそ私のテクで天国に……モフ天に連れて行ってあげる!!!)


 そんな感じでフィーバーしていたフィナの部屋にルーデルが現れた。すでに遅い時間だが、一緒にイズミを伴って王女の部屋に来たのだ。


「にゃ、ニャァァ!!!」

「来たなルーデル! 姫様には近づけさせん」

「ようこそお越しくださいましたルーデル様……では早速」


 三人がそれぞれ違った対応をする中、ルーデルは笑顔で告げる。


「ああ、すまないが撫でるのは封印する事にした。イズミが駄目だと教えてくれたから、もうしない事にしたんだ。でも、ドラゴンは撫でるけどね」


 その言葉に固まる三人。ルーデルは笑顔でイズミに言われたらしょうがないとか、イズミのお願いだからと言っている。そして無表情なフィナは


(な、なんて事してくれたんだそこの黒髪!!! お前は自分が何をしたのか分かっているのか!!! 私のモフモフが……モフ天の夢が!!!!!!)

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