家族2
一向に固まったままの悠也に千草はイライラしてきていた。
「ちょっと!!人の話聞いてる!?あの日・・・私が教授に呼ばれてて悠也を待たせてるとき・・・」
今でもはっきりと思い出せる。
女の腰に回している腕。
「許せなかった。だから別れてって言ったの!!それから悠也から離れたくてここに来たの。それで悠貴を妊娠してるってわかって・・・でも誰にも言えなくて結局ここで働きながら生んだ。悠貴を下ろすことなんて考えもしなかった。悠也の子供だから・・・だから私」
「ちょっと待て」
いままで固まっていた悠也が千草の話を遮った。
溢れそうになる涙をこらえながら顔を上げた。
「ちょっと待て。思い出すから・・・あの時だよ・・・な?たぶん・・・。千草・・・それ誤解だから」
悠也ははっきりと否定した。
「・・・誤解?なっ、どういうこと!?私ちゃんとこの目で見たんだよ!?」
「いや・・・見たことは本当なんだがそれは事故だったんだ」
「は?」
「あの時お前を教室で待ってたんだがその時同じ学科のしゃべったこともないような女が話しかけてきて・・・うざかったから無視してたんだけどそれが癇に障ったのかいじってた携帯とられてさ・・・取り返そうとしたらその女が机に引っ掛かりやがってとっさに助けたら調子に乗りやがって抱きついてきて。引きはがそうと手をかけたら俺の首に腕巻きつけてきてぶちゅっと・・・」
その時を思い出しながら嫌そうな顔をして話す悠也。
千草は声も出せずにいた。
「事故だし千草に言って心配掛けたくなかったから何も言わずに・・・そしたらお前が突然別れるって言いだして。別れたくなんかなかったから拒否してたのに姿は消しちゃうし」
チロッと見てくる視線が痛い。
私の勘違い・・・?
「うそぉ~」
今まで我慢していた涙が次々とあふれてくる。
それに驚いた悠也は手近にあったナプキンで千草の頬を拭ってくれている。
「泣くなよっ。あ~あ。とりあえず店出よう」
机の上にある伝票を取ると千草の腕を掴み悠貴をひきつれて店を出た。




