心の隙間
3人は会社の地下の駐車場へ来ていた。
千草は悠也の車を見て相変わらずだな。と感じつい笑みがこぼれてしまう。
それに気がついた悠也はムッとした顔で千草を睨みつけた。
「なんだよ?」
「別に・・・相変わらず車には興味がないのね」
悠也の外見からしたら派手な外国車などを乗り回してそうなのに昔から車には興味がなく乗れればなんでもいいと言って軽自動車に乗っていたのだ。
それは今も変わらずのようで可愛らしい水色の車が止まっていた。
「よし。悠貴は後ろに乗れよ?お母さんを前に乗らせてやれ」
「え~?しょうがないなぁ」
「いいわよ、私は後ろで!悠貴を前に乗せて」
「いいから前に乗れ」
悠也に強く言われ結局千草は助手席へと乗り込んだ。
ドアを閉めようとしたときそのドアに手を添えていた悠也がぼそっと言った。
「言ったろ?助手席にはお前以外乗せないって」
それだけ言うとドアを閉めてくれた。
千草はその言葉に顔が熱くなるのを感じた。
覚えてたんだ・・・。
つきあっていた頃、悠也はそう言って千草以外絶対助手席に人を乗せなかった。
あの頃はそれが自分を特別扱いされていると思って嬉しくて仕方なかったのを覚えている。
でも・・・。
しかしその気持ちもすぐに冷めていく。
そんな言葉信じられない・・・。
千草の心は結局あの出来事によって悲しみへと突き落とされ行くのだ。
悠也何を言っても信じられない。
「おい、シートベルト締めろよ」
「え・・・ええ」
悠也は千草がシートベルトを閉めたのを確認するとゆっくりと車を走らせた。




