表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女帝レイルの誕生奇譚  作者: エンドレス・ルーフィン
第一章:王の志願者と呑気な兎
2/2

出会いは必然に

大遅刻更新。一週間は経ってないのでセーフ(アウト)。

メテオが世界に入る、少し前の場面。


「ふん...私を利用しようとはな」


建物も人間の姿は無く、取り残された草木が、赤い熱の絨毯を形作っている。

そこには、地獄が広がっていた。


「しかし、私の糧となれたんだ。不本意だろうが、これ以上ない名誉と喜んでくれたまえ」


その地獄の中心には、一人の...小さな少女が、ぽつんと立っていた。

彼女はレイル──この惨状を引き起こした、『亡国の悪魔』だ。




さて、そろそろ出発するか。

持たなければならないもの、それがここまで減ってしまうとは思わなんだ。


「行く当てもないが、これも試練だと思って乗り越えてみせよう」


何を代償にしても、「王」には民が必要だからな。


私はおもむろに歩き出し、まだ燻る炎をかき分けながら、しばらく森を進んでいくことにする。

しかし、つまらん森だな。鳥のさえずりも聞こえず、鬱蒼と木だけが茂っている。

そこまでして、人を寄せたくなかったのか...母上なら、そんなことはしないと思うのだが。


耳を澄ましても何も聞こえないとは、とことん密偵を恐れて────


ガサッ。

不意に、木の葉が何かに擦れる音が聞こえた。


「...なんだ?今の音は」


私は眉をひそめ、辺りをじっと見つめる。

しばらく待ったが、何も出てこない。


「...気のせいか?」


この森は上の方が枝で覆い尽くされているために、下の方に日光が差し込まず、昼だと言うのに仄暗い。だからこの辺りの木は背が高く、幹には枝葉がないのだ。


だとすると、風でも吹いたのだろうか...

私がそう考えた、まさにその瞬間。


────ガサガサガサッ!!


「!!」


私の真上から、大きな音が鳴った。

今度は気の所為ではない。私はもしものことを警戒し、迎撃の態勢を整える。


────ストン。


あの音からは想像もつかない軽い音を立てて落ちてきた何かを、私はじっと見つめた。


「...何者だ」


白銀の髪に、赤と白のオッドアイ。茶縁のメガネをかけた青年。

しかしその佇まいには、どことなく人間離れした雰囲気があった。


例えるなら、世界の全てを分かっているかのような。


「んー...ここらへんのはずなんだけど、どこにいるんだろ...設定では女って言ってたしな...」


青年は私のことなど意に介さず、ぶつぶつと何かを呟き始める。


その姿に、私はふつふつと苛立ちを覚える。


「...おい」


私は声をかけるが、青年はまるで反応する気配がない。


「うーん...もうちょっと先に行こうかな」

「...貴様」


眉間に皺が寄るのが分かる。

この青年は私を────”居ないもの”として扱っているのだ。

あまりにも...無礼が過ぎる。


「名を名乗れ!私の質問に答えろ!」


私は声を荒らげ、先程よりも強い口調で青年に問う。


「...あれ、もしかして僕に言ってる?」


ようやく青年は顔をこちらに向け、軽い驚きの表情を浮かべた。


「当たり前だ!貴様以外に誰がいる!」

「...おかしいな。普通こんな序盤に、僕に気づくわけないんだけど」

「何度も言わせるな!質問に!答えろ!!」

「そう大きな声を出さなくても...」


面倒くさそうに肩をすくめた青年は、少し考える素振りを見せ、次のように名乗った。


「僕は...そうだな、緋室 流星(ひむろ りゅうせい)とでも呼んで」


ヒムロリュウセイ...陽昇(ヒノボリ)とかいう国の出か?

あの国の者は皆名とは別に”家名”を持っている...なんとも不遜な奴らだ。


「...しかし貴様は格好からして、陽昇の出ではないだろう。本名じゃないな」

「まあ、そりゃあね」


あっさりと、緋室と名乗る青年は肯定する。


「あ、そうだ」


しばらく双方とも黙っていたが、不意に緋室が、何かを思い出したように手を叩く。


「君、あっちの方から来たでしょ?なら...『亡国の悪魔』レイルって奴知らない?僕は今、そいつを探してるんだ」


私は一瞬、言葉が出なかった。

どうやら緋室が探しているのは、私のことらしい。


「...何が目的だ」


こいつを無視して進んでも良かったが...興味が湧いた。

私は目の前の青年を改めて見据え、試すように問いかける。


「目的と言われても...ただ単純に、物語を見たいだけだよ」


だが緋室から帰ってきた答えは、想像の斜め上をいった。


「...物語、だと?それはその...英雄譚みたいなものか?」

「あー...うーん、そんな感じかな」


あまりに現実感のない話に、どちらにも戸惑いが生まれる。


「とにかく、僕はレイルを見つけたいんだ。だから、君みたいな()()に構っている暇はないんだよ」


────少年。

緋室がそう言うのも無理はない。今の私は、男に見えるよう男装をしているのだから。

だが...


「...私は少年ではない」

「ん?」

「私は一国を滅ぼした、『亡国の悪魔』だぞ!」


小柄な体躯。これを指摘されるのには、癪に障る。

端的に言えば、私はキレた。


「あ、君がレイルだったのか...ごめん、気付かなかった」


はたして緋室から返ってきたのは、あまりにも軽い謝罪。

驚きも、恐れも、謝意すらもない。

その言葉には、少しの好奇心と、確実な期待があった。


「...それだけか?」

「うん?」

「『亡国の悪魔』と言ったのだぞ」

「え、うん」


緋室は「何を言っているんだこいつは」という顔で、あっさりと肯定する。


「...」


絶句。

頭で構成された言葉の羅列が、一瞬にして打ち砕かれたような。


こいつは理解していないのか?

────いや、違う。

理解した上で、気にも留めていない。


「まぁ流石に、『亡国の悪魔』がこんな小さい少女だとは、さすがの僕も...」

「不敬」

「え?」

「不敬」

「え、なんで」

「不敬」

「...はい」


…はぁ、まあいい。

溢れんばかりの罵詈雑言を吐き散らしてやろうと思ったが、やめた。

一周回って、呆れてきた。


「貴様、変わっているな。異国の言葉で言うなら...デリカシーがない、だったか?」

「あはは、よく言われるよ」


悪びれもせず、緋室は即答する。


「...貴様、何者だ」

「あれ、名前なら言わなかった?」

「そういうことじゃない」


やはり、調子が狂う。

怒りも、呆れも消えてはいない。

だが私は────こいつを、面白いと感じてしまった。


「立ち位置の話だ」

「立ち位置?」


短く、正確に、私は緋室へ問う。


「お前がどういう存在で、どこから来たのか」

「あぁ、そっちか」


緋室はようやく納得したように頷き、その場で身を翻す。


「...うーん、そうだな」


緋室は顎に手を当て、しばらく考えたのち、こう答えた。


()()()()()()、かな」

明日からは「天の真は花を繚う」と「女帝レイルの誕生奇譚」を交互に投稿していこうと思います。

初心者なのもあるので、とりあえず書き書きしないと...


この作品を「面白い」「もっと読みたい」と感じたら、リアクションや感想をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ