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二人の帰り道
それからしばらくして、涼真が先に上がった日があった。
閉店作業を終えるころには、店の外の通りも静かになっていた。
扉を閉めて外に出ると、夜風が少し涼しかった。
「なんか久しぶりだね」
渚が歩き出しながら言った。
「何が?」
「二人で帰るの」
言われてみれば、いつも三人だった気がする。
並んで歩く歩幅が、なんとなく合わない。
少しだけ意識してしまう。
「颯太ってさ」
「うん」
「最初から普通だったよね」
「どういう意味よそれ」
渚が笑う。
「なんか、最初からここにいた感じ」
答えに困って、小さな石をつま先で蹴った。
悪い意味じゃないと分かっているのに、少し照れくさかった。
「颯太と話してるとなんか楽しい」
渚がそう呟く。
江ノ島の灯りが遠くに見える。
しばらく何も話さず歩いた。
でも、不思議と気まずくなかった。
「ねえ」
渚が急に立ち止まった。
「海見に行かない?」
「好きだね、ほんと」
「夏だから」
どうでもいい話をして、笑って、また歩き出す。
いつもより、帰り道が少し短く感じた。




