探しもの
閉店作業が終わったあと、店の明かりを落とすと、外の暗さが急に近くなる。
気づけば、三人の距離はずいぶん近くなっていた。
「今日、風気持ちいいね」
渚がそう言って、店の外に出た。
俺と涼真もなんとなく後を追う。
客のいなくなったテラス席に、三人並んで座った。
三人のあいだを、海風だけが通り過ぎた。
しばらく誰も話さなかった。
渚がコンビニの袋を揺らした。
「アイス、じゃんけんで決めよ」
「急すぎ」
「人生だいたい急だよ」
結局、俺が負けて一番溶けかけのやつを引いた。
渚が笑う。
しばらく、誰も何も言わなかった。
夜の空気だけが、静かに流れていた。
「ねえ」
渚が言った。
いつもより、声のトーンが違った気がした。
「私さ、なんで湘南来たと思う?」
「海好きだからでしょ?」
「それ、みんな言うんだって」
笑いながら、小さく息を吐いた。
「人、探しに来たんだよね」
俺は思わず顔を上げた。
「昔、好きだった人がいてさ」
夜の音が、少しだけ近くなった。
「ここにいる気がして」
言い終わると、渚は照れたみたいに笑った。
「重いよね。こういうの」
「いや……」
うまく言葉が出てこない。
涼真は隣で静かに海の方を見ていた。
「でもさ」
渚が続ける。
「来てみたら、全然見つかんなくて」
少し笑う。
「まあ、そんなもんかって思ってる」
風が吹いて、前髪が揺れた。
その横顔を見ながら、なぜか胸が少し軽くなった。
ただ、そのとき――
自分にも何か関係がある気がしてしまった。




