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ぜんぶ夏のせい  作者: 湊人


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三人の帰り道


バイトにも少し慣れてきた頃、閉店後に三人で江ノ島の海辺まで歩くのが当たり前になっていた。


店から十分くらいの道のりを、潮風に押されながら歩く。


夜の海は昼より静かで、観光客もほとんどいない。


いつもの石の階段に座ると、それだけで一日が終わった気がした。


コンビニで買ったアイスを食べながら、どうでもいい話をする。


「颯太くんっていつもふざけてるよね」


「真面目な一面、まだ出してないだけです」


「絶対ないでしょ」


「ひどくないですか?」


渚が笑う。


その笑い方が好きだな、と思った。


夜の海は、昼より少しだけ近く感じた。


たぶんそのときは、まだ意味なんて考えていなかった。


なんとなく視線を落とすと、少し離れたところにサッカーボールが転がっていた。


誰かが忘れていったらしい。


「ちょっと蹴っていいですか」


返事も待たずに立ち上がって、軽くボールを蹴る。


砂に足を取られて、思ったより飛ばない。


「下手すぎ」


渚が笑いながら言った。


「いや砂浜だからですよ!」


もう一度強めに蹴ると、ボールは変な方向に転がっていった。


涼真の足元に止まる。


「涼真、パス!」


涼真は少し戸惑ってから、静かに蹴り返した。


無駄のない、きれいなフォームだった。


「うま」


「……昔ちょっとだけ」


それだけ言って、涼真はまた黙った。


三人でしばらくボールを蹴り合った。


なぜか、その時間だけ少し長く続いた気がした。


特にルールもなく、笑いながら続けただけの時間だった。


渚がボールを追いかけて、小さく息を切らす。


「もう無理、疲れた」


そう言って砂浜に座り込む。


俺も隣に座ろうとしたけど、渚は自然に涼真の方を見て笑った。


「涼真くん、体力ありそうだよね」


涼真は少し困ったように笑って、「そうですか」とだけ答えた。


短い会話だった。


そのあと、三人で同じ方向を向いて海を見た。


誰も話さなかったけど、変な沈黙じゃなかった。


ただ俺だけが、次に何を話せばいいのか考えていた。


別に会話が途切れたわけじゃないのに、なぜか自分だけが余った気がした。


理由は分からなかった。


アイスの棒を噛みながら帰る帰り道、波の音だけが、俺のいないところで鳴っている気がした。


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