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7話〜修行方針/前編〜

「お前、剣を握ったことはあるか?」


 ラセツマルさんが、その巨大な鬼族の体躯でボクを見下ろし、問いかけた。ボクは首を横に振りながら、「いいえ、一度も」と正直に答えた。


 ラセツマルさんは、期待に満ちた顔で言った。


「剣を持て。これからテメェの剣の才能を確かめてやる。この俺と手合わせをしろ!」


 ボクは「はい」と言って、ラセツマルさんから渡された剣を持った。剣は五歳のボクにとっては信じられないほど重く、両手でやっと構えられる代物だ。


「初めてでその剣を持てるのか! ますます興味が湧いた。さぁ、こい!」


 ボクは地面を強く蹴ってラセツマルさんに飛びかかり、重さを無視して剣を振り落とした。その一撃をラセツマルさんは片手で受け止める。そこから、重い金属音を響かせ、剣と剣が何度も交錯して打ち合った。


 ラセツマルさんは大人の四天王、ボクは五歳の子供だ。ボクは身体強化の魔法を使えば対抗できると頭では理解していたが、初手で隠し札を使うのは卑怯だと判断し、今は純粋な身体能力と剣の技術だけで戦うことにした。


 真っ向勝負では当然負けだ。ボクは、攻撃されたら受け止めることを最小限にし、相手の力を流す戦術にした。


 突然、ラセツマルさんが剣を止め、感心したように言った。


「ここまで、俺の攻撃を流し続けるとはな。大したもんだ。だが、少々本気を出させてもらうぞ」


 その瞬間、ラセツマルさんの体から、先ほどよりも桁違いに強い威圧が放たれた。


 そして、重く、速い剣撃がボクに振り下ろされてきた。


 重すぎる……! 流しきれるか、これ……!


 ボクは何とかその一撃を受け流した勢いをそのまま利用し、反撃しながら、ボクも言う。


「ボクも本気を出させてもらいますね」


 一瞬。まるで空間が歪んだかのように、ボクはラセツマルさんの背後を取った。前世の知識と転生者としての精神力による究極の集中が生んだ一瞬の機動だ。


 ラセツマルさんが一瞬戸惑ったように見えたが、すぐに気づいて剣を背中で受け止める。そしてそのまま、圧倒的な力の差で押し返され、ボクは数メートル飛ばされて、剣を離してしまった。

 ボクは悔しそうに言った。


「負けました……」


 すぐにイリシアさんがボクに駆け寄って抱っこしてくれた。


「レイ君大丈夫? どこも痛くない?」


 イリシアさんは、勝負の行方よりも、ボクの方を心から心配してくれていた。その優しさが嬉しかった。ボクは「大丈夫だよ」と彼女の首に抱きついた。


 イリシアさんはボクの髪を撫でながら、誇らしげに言った。


「レイ君が剣を振っている姿、本当にかっこよかったですよ」


 その言葉に、ボクは敗北の悔しさが少し和らぐのを感じた。


 ラミアさんが、言った。

「本当に凄まじい試合でしたわ。まるで五歳の人間ではありえない、素晴らしい機動力と剣筋」


 相変わらずリィネさんは何も言わないが、その視線は剣から目を離していなかった。


「お前、剣術の経験がないのに、今までで出会ってきた奴らより剣の才能があるぞ! よし、決めた。俺はこいつに剣を教えるぜ」


 ボクは、四天王に才能を認められたことが嬉しく、深く頭を下げた。


「はい。よろしくお願いいたします」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 次に、ラミアさんによる魔法才能テスト。


「レイ君、その年でもう魔法は使えるのかしら? あなたから感じる魔力量は、底が見えなくて、わたくしも興味をそそられます」


 ボクは言った。

「はい、使えます。魔力量は多いかどうかは、まだ正確に測っていないのでわかりません」


 ラミアさんは空間魔法の“収納”を使い、魔力水晶を取り出しながら言った。


「これは、万単位の魔力まで計測できる特別な水晶の高級魔道具よ。試しに、これに手をかざしてみて」


 ボクは「はい」と言って、おそるおそる手をかざした。

 すると、魔道具の数値は瞬く間に上昇し、99999999(九千九百九十九万九千九百九十九)という限界値を表示した後、甲高い音を立ててバチバチと火花を散らし、ヒビが入って完全に壊れた。


 その場の全員が、言葉を失って驚愕している。ラミアさんに至っては、体が震えて下を向いている。


「もしかして、ボク……やってしまった?」


 ボクは慌てて謝罪した。

「ごめんなさい、魔道具を壊してしまって。そんな気はなかったんです……!」


「凄い、レイ君! まさか、この計測限界の水晶を破るほどの魔力量だなんて…! わたくしがこれまでに見てきた魔族たちでも、この水晶を割った者は誰一人としていませんわ!」


「そんなにボクの魔力量がそんなに多いのですか?」


「少なくとも一億は確定です。この魔道具の計測で、普通の人なら最初は100(百)ほどで、修行を積んでも約100000(十万)に達するかどうか。つまり、レイ君の魔力量は、まさしく『異常』よ!」


 ラセツマルさんが興奮気味に言った。

「こんだけ魔力があると、魔法剣とか魔法で剣を生成して戦う方法とかを教えれるぞ!剣術と魔法を組み合わせれば最強だ!」


 そしてイリシアさんが、なぜか得意げに胸を張った。

「凄いよ、レイ君! 流石、私の……自慢の子!」


リィネさんは「……」だった。驚いているように見えた。


ラミアさんが言った。

「レイ君、次は魔法を使ってみて。実戦で使う魔法が見たいわ」


ボクは「いいよ」と答え、まず初級魔法である“ファイヤーボール”を使うことにした。


無詠唱で、体の周囲に25個のファイヤーボールを生成した。


ラミアさんが前のめりになって問いかけた。

「ちなみにレイ君、ファイヤーボール、何個作れるの?」


「少なくも1000個は、この無詠唱で余裕ですね。しかし、限界は分かりませんね。」


「凄い……! ファイヤーボールは初級でも、無詠唱で1000個以上出せて、限界を感じないなんて凄すぎるわ。私が体の周りに、ファイヤーボールを出す練習を始めた頃、私でさえ、ファイヤーボールを1000個習得するのに二年、無詠唱化するのに四年、合わせて六年かかったのに……」


「これができているラミアも凄いけどね…それ以上にレイ君が凄すぎる…」


「だよね…他の魔法も見たいわ」


 ボクは「わかりました」と頷き、本で読んだっことがある古代魔法である“飛行”で宙に浮きながら、周囲の魔力をごっそり集め、最上級魔法である“水龍”を三体同時に無詠唱で出した。


 それを見たラミアさんは、もはや感動を超えて、何かを確信したように言った。

「こいつは才能がある、というか規格外よ。私が魔法に関して教えることは、基礎ではなく、世界の(ことわり)だけになるでしょう。禁忌の文献にある魔法や、私と一緒に新しい魔法を見つける研究をしましょう」


 ボクは少し言葉に詰まった。


「それはちょっとまずいんじゃないですか……?」


「この世界は、あなたを忌み子として捨てた。そのような理不尽な理を変えて、良い世界にするためなら、私は禁忌に手を染めるわ。レイ君、君はどう思いになる?」


 イリシアさんが心配そうにボクをかばおうとした。


「ラミア! レイ君はまだ子どもですよ? 子ども相手にそんな危険な話を!」


 ボクはイリシアさんの言葉を遮って言った。


「大丈夫ですよ、イリシアさん」


 イリシアさんが「でも……」と言ったけど、ボクは続けた。


「ボクは世界の理不尽さに不満があります。そして、変えたい! ボクはラミアさんと同じ意見です」


「決まりね! わたくしが、この世の誰にも真似できない禁忌魔法を教えましょうそして、世界のを変える研究を一緒にしていきましょう!」


ボクは力強く「うん」と頷いた。


イリシアさんが、言った。

「さて、次はリィネによる座学の才能テストね……」

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