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2話 手料理

ベットの上でゆっくり意識が覚醒していく。頭を過ぎるのは勇者パーティーと共に魔王を倒すために旅に出ていた頃の記憶。そこでわたしはお荷物だった。パーティーのメンバーなのに荷物持ちや生活支援といった召使い同様の酷い生活を送っていた。


ただ、生活魔法と転移魔法が得意だったけど、生活魔法は、野宿する時に、生活に必要最低限のことが何不自由なく出来て、重宝していた。ただ、聖女のセイラが事あるごとにイチャモン付けてきて、嫌味や嫌がらせをしてわたしをイジメて来るのが辛かった。転移魔法が使えるのだけど、伝説級の魔法の為、人前では使うなとお師匠に言われていたことでたとえパーティーメンバーの前であろうと使わなかった。ああ、わたしにもっと力があればな……


そんなわたしに力なんてもたらされる筈もなく皆から雑用同然のわたしは無能だと蔑まれてパーティーを追放された。


そして、拠点へと転移するはずが転移した先は、見知らぬ人様の家だった。


わたしは、目を覚まし、あたりを見渡すと見たこともない器具が部屋の中にはあり、化学が発達しているみたいだけど、ここは王都とかかな?


体力が回復したらシルバーテイルまでまた転移魔法を使って帰ろう。一泊の御恩にわたしに何か出来ることはないかな?



手料理なんか振る舞ったら喜んでくれるかな?

この家の中の調理器具を見てなんとなく使い方はわかった。包丁にまな板。うん分かる。


火を起こす所が無い。何?こと板状の器具は?お米はどこで炊くんだろう?なんだ、この楕円形の機械は?蓋を開けてみると中に鉄板が楕円形に沿って入っていた。


(なんに使うんだろこれ)


そして、一際存在感のあるこの大きな四角形の箱はなんだろう?

触ってみると蓋が開いた。「ひゃっ冷たい!」中は冷気で満ちていて食材などが入っていた。


(そうか、ここで食材を保存しておくのか。王都の魔道具って進んでるなー)

「今夜はここにある食材で藤原さんに夕食を作ってあげよう」



そんなことを考えているとお腹が「くぅ〜」と鳴り自分がお腹が空いていることに気づく。


ふと、小さい簡易テーブルを見ると、クリームパンとミルクが置き手紙と共に置かれていた。

『朝ごはんです。菓子パンしかないけど、これでも食べていてくれ。戸棚にパンの買い置きがあるから昼飯はそこから好きに食べていてくれ。』と書かれていた。

クリームパンを食べながら、お米はどうやって炊こう?肝心のご飯を炊く手段が分からなかった。朝ごはんも食べたし、そうだ!生活魔法で藤原さんのご飯を作ろうと、水魔法と火魔法の複合魔法で土鍋でご飯を炊こうとするも、そこで重大なことに気がついた。生活魔法が使えない!?


昨日の転移魔法だけじゃなく、生活魔法までが使えないことが判明した。


どうしよう!このままじゃあ、藤原さんにご飯が作れない。使えないわたしなんて捨てられてしまう……この家からも追い出されてしまう……やっと見つけた居場所がなくなってしまう……


このままじゃマズイと一気に奈落の底ヘと落とされた気分になった。


***

マシロがぐっすり寝ていたことで起こさないように静かに身支度をして家を出てきた。

「おはよう」


「はよー、藤原今日は目がが死んでいんだな。何かいいことあった?」


「いや、別に何もないぞ!」

まさか自称魔導師を名乗る中二病の家出少女が居候しているなんて言えるはずがなく黙っておくことにする。言ったら言ったで面倒なことになるのは目に見えているから言わなぬが花だ。


「そっかー妙ににやけている気がしたから可愛い彼女が出来たのかと思ってさ」

ギクゥ!そんなに顔に出てたか?

「変わったこと言えば落とし物を拾ったら妙に懐かれたくらいかな」


「捨て猫でも拾ったのか?藤原、動物好きだもんな犬?それとも猫?」


「犬?かな。」


どちらかというと人懐っこい犬ぽいと思ったからそう答える。まさか女の子の落とし物とは言える訳がない。どちらかというと天使のような落とし物だと改めて思った。


「陽良今日は学校はどうするんだ?」

「んー今日は行ってやるかー」


「なんで上から目線なんだ?」

コイツは、赤城あかぎ陽良あきら髪を赤茶髪に染めていて少しチャラそうなこの男が俺の親友でもあり悪友でもある不良少年だ。


「これからもちゃんと学校来いよ。」


「そんな毎日、学校行って何が面白いのやら」こうして俺たちは学校までの道のりをバカ話していた。





「あんた達遅い!遅刻ギリギリだよ。ホームルームが始まっちゃうよー!」


こう口うるさく言うのは真馴染みの柏木かしわぎよもぎだ。


ライトブラウンのミディアムヘアーの真面目な優等生だ。


「昨日は、ちゃんと夕食食べた?どうせ菓子パンとかでしょ」


「まあ、そんな感じかな…」


「やっぱり…そんなんじゃ栄養が偏るっていつも言ってるじゃない。ご飯はちゃんと食べなさい!」


「うるさいなーお前は俺のオカンか!?」



「何よ!人が心配しているのに!私が今夜、作りに行ってあげようか?」



「あー、俺今夜はコンビニ弁当が食べたい気分なんだよねー」

まずいまずい!今家に来られちゃマシのことがバレてしまう!それだけは避けないといけない。


「だから栄養が偏るて言ってるでしょ!まったく。ていうかわたしの手料理よりコンビニ弁当の方がいいていうの!?」


「い、いや。そういう訳じゃなく……」

ヤバイ墓穴を掘った。


「それじゃあ、今夜行くからね」


「え?!ちょっと待って!また今度お願いするから、今夜だけは止めてくれバイトがあるから。」

「分かったわよ。バイトなら仕方ないわね……」

なんとか断れたたところホームルームを開始する予鈴が鳴って担任の先生が入ってきて俺は、一安心するのだった。


***


喫茶店でのバイトを終えて自宅に帰り家のドアを開けると、出汁のいい匂いが鼻腔をくすぐった。


「お帰りなさい!藤原さん。」



「ただいま、マシロちゃん。何かいい匂いがするけど……」


「あっ、勝手ながら家の中の食材で夕食を作ってみたんですけど、いけなかったですか?」


「お前が作ったのか?俺の為に?」


「はい、迷惑でしたか?」

「いや、そんなことはない。」

むしろそれは光栄なことで俺なんかにわざわざ作ってくれるなんて思わなかったから驚いた。





「そ、それが……ですね。作ったのが……」


「味噌汁だけ!?」


「すみません。他の調理器具の使い方が分からなかったもので……」



「まったく仕方ないな。と言っても、夕食を作ってもらえるなんて思ってなかったから、夕食にコンビニ弁当を買ってきたから、これとマシロが作ってくれた味噌汁で晩飯にしよう!」


「え……怒ってないんですか?」


「いや、全然。むしろ、初めての女の子から手料理を作って貰って嬉しいといいうか…。」


「そ、そんな……」


「うん、美味いな……」


勇者パーティーに入ったばかりの頃生活魔法しか上手く使いこなせなくて、食事が上手く作ったとしてもユーリからはさも当然といった顔しかされなかったから。この人はそんなわたしの料理を喜んでくれるんだ……

それだけでなくて、味噌汁しか作れなかったのに美味しいと言って褒めてくれるなんて……


「どうしたんだマシロ!?」


「えっ……わたし、どうかしましたか?」




「え?なんでもありませんよ?ただ……」


「ただ?」


「料理を美味しいって褒めてくれて認めてもらえたみたいで嬉しかったんです」


こんな気持ちは初めてだった。生活魔法が使えなくてもこの人の為にこの世界の料理を上手くなりたいと思った。















読んでくれてありがとうございます。

まだ目的が定まっていなくてフワフワしていますが、もう少し長い目で見守ってもらえるとありがたいです。

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