悪役パーティみたいになったんだけど
ガッガッガッ!
カチャカチャ!
カランッ!!
「チッ。なんて遠慮のない奴らだ・・・・・・」
俺はテーブルの上の惨状を目の当たりにし、眉間にしわを寄せた。
築き上げられたのは皿の山、というか要塞。
調味料で汚れた皿の表面が飛び散った血糊のようだ。
「おいしいですよ! ユーマ様も食べましょう!!」
ハムスターみたいに頬を膨らませたウリウリの両手にはバカでかい骨付き肉が握られている。
聖職者よ、肉食っていいんかい。
「食わぬならそれで良い! その肉よこすのじゃ!!」
横から二又に分かれたフォークが伸びてきて、何かの煮込み肉が盗まれる。
「おいいいッ」
手を伸ばすがもう遅い。
マウスのギザギザ歯が肉を噛み切り、ものの二口で口内に消えていった。
「実に!! うまい!! いや!! かたじけない!!」
「食うか喋るかどちらかにしろ」
ゴブリン改めスゥジゥィヴィー・ロゴ・ヴォヴェル。
流浪のゴブリン族の闘士で、一応、冒険者登録済みという男だ。
ところが、クエストの受け方とかを聞いていなかったのか、今まで一度も冒険していないという。
「まあ、これで四人目じゃな」
「おい、勝手に組み込むな」
畑でぶっ倒れたままのゴブリンを放置してきても良かったのだが、あろうことか足首を掴まれ「何か食べ物を」などと唸られたら連れ帰るしかなかった。
結果として、マウスはメンバーが揃ったとか騒ぎ出す始末である。
「某も徒党に加えていただけるのか! ありがたき幸せ」
「うむ。マウスちゃん様は寛大なお胸を持っているので苦しゅうないぞ」
何を言っているんだ、こいつらは・・・・・・。
寛大な心だろ。
なんだよ、寛大なお胸って。
「さすが!」
スゥジゥィヴィー・・・・・・巻き舌で、かつ猛烈に発音しにくいため、都合上“シチミ”と呼ぶことにする。
がマウスにゴマをすっていた。
「ふふふ、我は出来る大人のレディじゃからな」
何でも出来る大人のレディと言えばイイわけじゃないぞ。などと思うが、あえてツッコまない。
「ということで、大人のレディは遠慮せんのじゃ!! おかわり!!」
「なんと!? ならば某も!!」
「私もおかわりを!!」
「おい、やめろ。金が無くなる!!」
あろうことか四人の中で唯一、財布を持っているのが俺だった。
とはいえ、ゴッデスポイントの換金方法が分からないから、実質、指輪探しの報酬金貨5枚が全財産だ。
そう、暴飲暴食されると全財産が食費で飛ぶ。
いや、おまえらマジでやめろ。
それに途中放棄して寝てただろ。
「待て待て、腹八分目とか言うだろ!? 何回目のおかわりだ?」
少なくとも二回はおかわり済みだ。
追加のデザートも含めたら今で四回目だぞ。
「ユーマよ。我は育ちざかりなのじゃ。ゆえにいっぱい食べねばならぬ」
「意味が分からん」
「ふふ、分かっておらんな」
すでに届いてしまった子羊の丸焼きにフォークを突き立て、マウスがドヤ顔を向ける。
3~4人で切り分けて食べるようなそれを一人で食う気である。
「いっぱい食べると大きく育つのじゃ!」
ヤグーの塩焼きなる腕一本分くらいの焼き魚がシチミの前に運ばれる。
彼のよだれが皿の上に垂れ落ちた。
「我のお胸とお尻がバインバインになるのじゃ!! 見栄えが良かろう!! 人間はそのようなおなごが好きと聞いたのじゃ!! 超絶美人のマウ―――あイタ!」
「一時喰いまくっても美人になるわけないだろが」
不敵な笑みを浮かべ、セクシーポーズを取ろうとしていたマウスのおでこにチョップをお見舞いする。
「だが手遅れだった・・・・・・・」
大衆食堂の給仕の動きの速いこと速いこと。
おかわり注文から提供まで1分も経っていない。
速すぎておかわりキャンセルも間に合わなかったくらいだ。
「それじゃあ、せっかくなので自己紹介と役割とか決めませんか?」
小山みたいなパスタを吸い込むような平らげたウリウリが手をあげる。
自己紹介は、前にしたようなと思ったけど、シチミがいない時のことだ。
ん?
てことは、パーティーメンバーは俺とシスター、竜人幼女にゴブリンってこと?
悪役パーティーか?
とはいえ、新たに人を募集or募集しているところに入るのは難しそうだ。
「そう、だな・・・・・・」
なかば諦めた首を縦に振る。




