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初音ミクの奔走  作者: SNEO
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【ケイ】ダストメイカー

 気晴らしにマフラーを買った。カラスみたいに真っ黒なやつだ。

 2月か。夏には家の近くの田んぼをコウモリたちが不気味に飛び交う。その姿は、子供の頃には蝶に見えていた。今では、なんだろう、普通にコウモリかな。

 大学に入るまでは、パソコンなんか持ってもいなかったのに、今ではテレビはつけずに、パソコンの前に座っていることが多い。何をするでもなく、ネットをぼんやりと眺めている。

 高校生の頃、よくなった気持ちだ。一言で言うと、焦燥感。それも自分に対して、だ。

 何かしなくちゃいけない。高校の頃は、勉強だった。でも怠惰な自分はそれを後回しにして、結局1日を無駄に使う。それで夕暮れになって妙に焦って、でも、何もしなくて。そうやって1日が、1週間が、1年が過ぎていった。

 結局、受験ぎりぎりで何とか頑張って、ランク落とした大学には進学できたが、悔いが残った。今でもそんな生活を続けている。

 そんな自分を変えたくて、就職先は銀行や金融主体の大学でありながら、広告業界を選んで、既に40社ほど面接を受けている。もっとすごいやつはいくらでもいるだろうが、自分の周囲じゃ就職活動をここまでやってるやつはいない。それに内々定は既に一つ貰っている。

 就職活動は、希望と挫折の連続だ。認められて飛び跳ねるほど嬉しかったり、自分を全否定されたような気持ちになったり。そんなとき、いつもこれは通過点と自分を落ち着かせる。

 子供の頃から、絵が上手かった。ずっと上手いと言われ続けて、調子に乗って最近通信教育まで始めた。でも、始めてみて分かった。自分が井の中の蛙だってことを。きっと才能はあっただろう。でも、もうやる気もしない。そうやって昔から何でも半端だってことは分かっているが、どうしても上手くいかない。

 もう一つ、半端なことをしている。

 今、パソコンを立ち上げて、ワードを開いて、文章を打つ。傍らには携帯電話を置く。

 頭に浮かんだ言葉とメロディを携帯電話で録音する。そして思うままに、その言葉をパソコンに打ち込んでいく。これは、Aメロ、それで、次はBメロ。サビはこのメロディにしよう。いや、歌詞にしては盛り上がりがイマイチだから、これにしよう。

 とか。そんな風にして、1時間くらい過ごす。それが何かになるわけでもない。楽器は一つも弾けない。楽譜も読めない。高校の音楽の授業で欠点取ったこともある。

 でも、歌は好きだった。だから、こうしてオリジナルの曲を作るのは楽しい。

 こうして作り貯めた曲の中にはメロディを忘れて、そのまま消してしまうものもあるが、自分の中で完成している曲はすでに10曲くらいある。この全ては、いずれパソコンのハードディスクと一緒に捨てられてしまう。

 しかし本当に感覚的な話だが、この曲はいずれどこかで世に出る機会があるはずだ、となんとなく思う時がある。

 突然、パソコンがブーン、とエアコンのような音を立てる。


 ハードディスクが壊れるのも時間の問題かも、な。

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