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3ピース
スタジオには絶えず音楽が流れている。彼らの音楽もまた、そこから始まった。
ドラムは軽快な音を奏でる。ひとしきりでたらめなリズムを叩き終えると、ケイは満足そうに言った。
「こんなのどう?」
長い前髪をうっとおしそうにかきあげる。染色された前髪の間から、くっきりとした二重の目があらわれる。まばたきを数回する。
ピアノを弾いていたトオルは、軽快な指の動きを即座に止めて、
「デタラメすぎ。ねーよ」
と笑ってみせる。
その間、黙々とギターを鳴らし続けていたダイは、我関せずといった様子。
トオルは、ダイの方を見て、
「うっせw」
と一言。ダイは苦笑いを浮かべ、首をふらふらと横に振った。まるで首のすわっていない子供のようなこの動作は、彼の癖であり、ダイを除く二人はいつもそれをからかう。
ドラムに飽きたケイは、ふらふらとトオルに近づいた。
「とおるちゃん、いけそう?」
トオルは少し考えると、ケイの方を見て、
「解散だなwww」
と漏らした。