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転生ゲーマー令嬢は婚約者を玩具にする  作者: 御月源士郎
学園編
34/36

4 ヒロイン(妄想)との出会い

 あれから一月程して、騎士科内では私が女だと認識されたが、基本的な扱いは変わってなかった。だがまあそれはいい、地元でも同じような扱いだったから。

 問題は未だにご令嬢達に避けられてる事と、ご令息たちに睨まれてることだ。最初は誤解を解こうとしたがなかなか上手く行かず、今となってはもうどうでもいいやと諦めた。

 とは言え4大将軍家の嫡子の性別くらい知っとけよと言いたい。


「あぁーーーもうっ!前後左右男ばっかり!せっかく王都の学園に入学したのに女子とイチャつけないなんて!」

「一体何処の欲求不満の男子だよ…」

「そういう如何わしい欲求と一緒にしないで!私は女子とキャッキャウフフってしながらお洒落なカフェでスイーツ食い倒れとかしたいの!」

「倒れる程食ったら病気になるぞ?」

「そういうことじゃなくて!カフェで恋バナとかしたいの!」

「恋バナって?」

「恋愛相談とかそういうやつだろ?レインが?無理無理無理…」


 ラルフはニヤニヤしながら顔の前で手を降っている。わかってるよ、私に恋バナなんて無理だって!でもガールズトークに憧れるお年頃なんだ!


「あとあとっ、街を手を繋いで歩いたりとか、ハグしたりとか、胸を揉み合いっこしたりとか…」

「それは友達の領域を超えてると思うよ?」

「そもそも揉む乳ねぇじゃん…」

「お前をコロス!」


 その辺に落ちていた小石を指で弾き飛ばしてラルフの頭をぶち抜くと、ラルフはくぐもったうめき声を上げて蹲った。魔法は使ったがもちろん手加減はしている。


「俺は…慎ましやかでいいと思うよ」

「へ?」


 アベルの視線の先を辿ると、私の断崖絶壁に向けられている事に気づき、慌てて胸元を手で覆う。

 いやいや、そこで顔を赤らめないでおくれ、なんか生々しいから!幼馴染の知ってはいけない性癖を知ってしまったようで、なんだか気まずい。


「貧乳好きとか、男として信じらんねぇ…」


 はいそこの巨乳厨、人を可愛そうな目で見るのやめなさい。好みなんて好き好きなんだから……


「まだあの家にいた頃、胸の大きな女性の使用人が俺の体を触ってきた事があったから、胸の大きい人はなんだか怖くて…」

「は?」

「なっ ⁉」


 アベルは気分が悪そうに青褪め、両腕を擦りながら衝撃の告白をした。

 ちょっと、初耳なんですけど⁉

 それ好み云々じゃなくてトラウマじゃない!

 確かに幼い頃のアベルはホントに可愛い顔してたけど、5歳の子供になにしてるの?コッペリオン家は魔窟なの?


「お、おい、泣くなよレイン」

「だってぇぇ」

「ごめんね、余計な話して…」

「アベルは悪くないぃぃ」


 アベルとラルフはぐする私にオロオロとしだした。

 私が泣く事じゃ無いのに、返ってアベルを困らせてるだけなのに、当時のアベルの気持ちを考えたら涙腺がゆるくなり、鼻水が止まらなくなった。

 ポケットから取り出したハンカチで鼻を噛むと一瞬でぐしょぐしょになる。


「アベルは私が絶対に幸せにするからね!」

「うん、期待してるよ」


 鼻水塗れのハンカチを握りしめ、鼻を啜りながらも決意を新たにすると、アベルも何時もの笑顔で返してくれて、ちょっとだけホッとした。


「絶対に可愛いお嫁さん見つけようね!」

「うん?それは遠慮しておくよ」


 今度はアベルの笑顔が引きつっている。

 やだどうしよう、もしかしたらアベルは女性そのものにトラウマ抱いてるのかも、なんとか克服させないと!


「おい、またあらぬ方向に決意を固めてるぞ?」

「本当に、どうしたもんかな?」


 気を取り直して、私達は昼食を取るために食堂へ向かった。

 その時、背後から小走りする足音がしたかと思うと、すれ違いざまに誰かが私の肩とぶつかった。1人の女生徒が手に持っていた物をバサバサと落としながら床に倒れ込んだ。


「きゃあっ!」

「わっ!」

「すっ、すみませんっ!」


 ぶつかってきた相手を見て、私は驚愕した。

 なっ、何この子、すっごい美少女!

 そしてまるで春の花をそのまま纏ったみたいな桃色ヘアーで、瞳の色は癒やしの象徴である緑色、生命魔法の使い手だ。

 しかもちょっとドジっ子気質で頑張り屋さんだったりする?え?何?アニメのヒロイン?ヒロインなの?ここはアニメの世界か?それとも乙女ゲームか?異世界転生ってやつか?…あ、異世界転生はしてたわ。

 その子は魔導科の制服を着ていた。騎士科、魔導科、学士科は制服があって、私服なのは政務科と淑女科だけだ。

 そうか!ご令嬢が駄目なら魔導科の友達を作ればいいじゃない!なんとかこの子とお近づきになれないだろうか?


 先ずは第一印象!


 ほ〜ら、怖くない、怖くないよ〜


「大丈夫?怪我は無い?」

「は…はい……」


 丁寧な所作で彼女の手を取り笑顔で気遣うと、恥ずかしそうに頷いた。騎士科の男子達とは全然反応が違う、可愛いは正義だ!

 こういう時、貴族らしい優雅な所作を叩き込んでくれた母上に感謝の念を送りたいと思う。


「今度は気をつけてね」


 その子の落したノートや教科書を一緒に拾って手渡し、親しみを込めてにっこりと微笑んだ。


「はい、ありがとうございました」


 すると、まるで花のような笑顔が返ってきた。そしてぺこりと頭を下げると、再び小走りで駆けて行く。


 はあぁぁぁっ、可愛いなぁ!

 あの子をアベルの嫁にしたい!

 そして行く行くは私の義妹に!


「あ〜、これはご令嬢達が落ちるわけだわ」


 ラルフは顎に手を宛てながら何やらウンウンと頷いている。

 ん?落ちる?落とし物はちゃんと拾ったよ?

 ラルフは一体何の話をしてるんだろうか?


「今の子、可愛かったね?ね?」


 アベルの服の裾をつんつんと引っ張りながら訪ねてみる。今のところ、アベルの好みは貧乳位しか分からない。長い付き合いなのに何て事だ。


「そうかな?レインの方が可愛いよ?」


 やめて、私と比べないで、私のHPが削られる。

 ホントにこの子の美意識はどうなってるの?


「顔は好みだけど、サイズが今一つ物足りないなぁ」 


 そしてお前は結局それか!それしかないのか⁉


「ラルフにはあんな可愛い子勿体ない!」

「嫁問題は俺の方が深刻なんだぞ!」


 アベルの反応はイマイチだけど、基本的に私達2人以外には男女共に塩対応だ。

 でも親しくなれば気持ちが変わるかもしれない。絶対にあの子とお近付きになろう!


 ……そこではたと気づく。


「あああぁっ!名前聞き損ねたーっ!!!」


 自分の迂闊さにがっかりしたのだった。


BBAの手慰みにお付き合い頂きありがとうございます。

少しでも楽しんて頂けると幸いです。

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