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転生ゲーマー令嬢は婚約者を玩具にする  作者: 御月源士郎
序章 幼少期編
3/36

3 チュートリアル1

 そそくさと朝食を済ませると、アベルを急かして騎士団の訓練場に向かった。


「レイニーナ様、おはようございます!」

「おはよう!」


 わたしはご機嫌で皆と挨拶を交わした。

 領主の館なだけあって、騎士団の誰かしらは駐在している。朝は腹ごなしの運動とばかりに訓練場に足を運ぶ者も多い。

 皆ガタイのいい屈強の戦士達だ、眼福である。


「おや?アルベルト様、体つきが良くなったのではありませんか?」

「ようやく身体に筋肉が付いてきたみたいなんだ、これからもっと鍛錬に励んで成果を出せるように頑張るよ」


 目聡い騎士はアベルの身体の変化にも気がついたようだ。アベルはそれを適当に誤魔化した。

 異能の事は秘密と言うわけではないが、まだ大っぴらに公表はしていない。

 なんせ「プレイヤー」も「アバター」も前世語だ、カルメリアでは聞いたこともない言葉で一体何ができるのかも定かではないからだ。


「アベル!色々試したい事があるから早く始めよう!」


 訓練所の隅の一角を陣取ると、私は逸る気持ちを抑えながら【ビーストハンター】を起動しする。するとタブレットタイプの画面が消えて、目の前に浮遊したモニターが現れた。

 そして、私の手にはコントローラーが握られていた。しかも、グッドデザイン賞を取ったというかのゲーム機のコントローラーと似た形状!握り心地は抜群だ!


 昨晩のうちにある程度のシステムはチェックしておいたのだが、選んだ武器と防具によって様々な装備ありきのスキルが使用できるらしい。

 【魔装】を選択すると、武器と防具を選択する画面が表示される。

 現時点での装備は火、水、土、風、無属性の5種類あり、武器の種類は火が片手剣、水が弓、土が斧、風が槍、無属性が両手剣と言うラインナップだ。

 それぞれの装備にはレベル1と表示されている事から、何かしらの方法でレベルを上げられるのだろう。


 まずは扱いやすい片手剣と同じ火属性の防具を選んでみた。するとアベルの周りが赤い光に包まれたかと思うと、画面に表示されている装備と同じモノを身にまとっていた。


「……っ!?」


 突然の変化に驚いたアベルは、自分の身体に纏った剣と防具をまじまじと見やった。

 剣の攻撃力は100、スキルには【火炎撃:140】【追加効果:火傷:低確率】【見切り:+5】、防具の防御力は250、スキルには【火炎耐性:50】【氷結耐性:45】が付属している。

 ちなみに防具は頭から足まで一式セットになっていて、部分的に付け替える事はできないようだ。


「ねえアベル、試しに『ステータス』って言ってみて」

「分かった……ステータス」


 言うとアベルの目の前に私よりも小さいサイズの画面が現れた。タブレットで言うなら7インチくらいだろうか?

 どうやらアベルの方でもステータスの情報は共有できるらしい。


「じゃあそろそろやるよー!」


 私はニヤリと微笑むとコントローラーのグリップを動かし始めた。


「うわっ!え?え?何これ!?」


 アベルの身体を私は自由自在に動かした。予想外な動きをさせられてアベルは只々戸惑っているようだった。

 すると、さっきまでざわついていた周囲が急にしんとなる。


「よう!お嬢、アベル、聞いたぞ、異能を授かったんだってな」


 そこに現れたのはラルフの父親でもあるロッドバル・ボレノ騎士団長だった。赤い髪に赤い瞳でラルフと同じ暑苦しい色味だが、なかなか素敵なオジサマだ。

 普通の兵士達はアベルの事を敬称で呼ぶが、ボレノ団長は私達の師匠でもあるため基本呼び捨てだ。ちなみに父上とも親友同士なのでお互いに名前で呼び合っている。


「団長、おはようございます」

「おはよう、ボレノ団長」


 その傍らにはラルフの姿もある。


「何だその装備⁉カッコイイな!」

「ラルフ!丁度いいところに、ちょっと相手になってよ」

「アベルとやればいいのか?」


 誘いをかけると、ラルフは待ってましたとばかりにやる気満々の表情で模擬刀を手にした。


「取り敢えずアベルは何もしないで私に任せてくれる?」


 アベルは不安そうな眼差しで私を一瞥すると、頷いてラルフと向き合った。


「じゃあ行くよ!ラルフから先に攻撃してきて!」

「よっしゃ!遠慮なく行くぜ!」


 言うな否や斬りかかってくるのを軽く交わして背後に回り込む。そのままこちらも反撃に出ると、振り向きざま剣で受け止められて弾かれた。その反動を殺すように後ろにステップして距離を取る。


「動きのキレが今までと全然違うな」


 私が操作してるからというのもあるが、能力値の向上で反応速度に圧倒的な変化が出てるようだ。


「ここからが本番だよ!」


 一気に連続技で畳み掛けると、それで派生するコンボ技の剣撃を最後に打ち込んだ。

 これよこれ!コンボが決まった時の爽快感はたまらない!


「うおっ、マジか!」


 ラルフは全ての攻撃をなんとか受け止めかわし切ると、息を切らしてへたり込んだ。同時にコントローラーの操作を解除するとアベルもその場にへたり込む。


「うわぁ、きつ…」

「なんなんだ、今の動き!?」


 能力値が向上したとは言え、今迄したことのない動きの連続は流石に堪えたようだ。


「じゃあ、今のを私の操作無しでやってみて」

「無理だよ、自分でもどんなふうに動いてたのか全然分からなかった」

「じゃあ、身体に覚えさせるまで今のを繰り返すよ!ラルフも付き合って!」


 その言葉に二人の顔が強張る。


「なかなか面白い能力だな、ラルフにも良い訓練になる、お嬢!ガンガンやってくれ!」


 団長がニヤリと笑ってそう言うと、今度は二人の顔が青くなった。


 次は属性攻撃だ。流石に対人は危険なので、訓練用の的を相手にする事にした。

 スキル【火炎撃】を発動し、的を斬りつけると燃え上がった。燃やし尽くすまでは行かないが、的の半分が焦げ付いた。


「おおっ、いいなそれ!俺もやりたい!」

「剣に魔法を纏わせたりできないかな?」

「やってみる」


 炎の魔法を発動させ模擬刀に触れる。しかし、剣が焦げただけで炎を纏わせる事は出来なかった。


「なんか方法がありそうな気がするんだけどな」


 考え込んでも魔法に関してはまだまだ素人の私には名案は浮かばない。

 前世のゲームや漫画には魔法剣とか魔法系の必殺技とか色々あったけど、今のアベルのようにスキルとして使えるものが殆どで、理論的に使用方法が解説される事は少ない。

 あったとしてもこちらの世界で使えるかどうかも解らないけど。


 取り敢えず一通りの装備を試そうと、次は水属性の装備を纏ってみる。

 水の弓には水で出来た矢で攻撃するようだ。矢をつがえる度に魔力を消費するので魔力ありきの武器になりそうだが、矢を持ち歩かなくていいのは便利だ。

 防具はやや防御力が低いが機動力は高い。また、水の膜を張るスキルが付いているので使い方次第では防御面で色々と役に立つだろう。

 土属性は防御力がかなり高い、武器の攻撃力も高いがその分機動力に劣るのがやっかいだ。一撃の威力が重いので、一撃必殺の攻撃に向いていそうだ、が…相手によっては攻撃を当てるのが難しいかも知れない。

 そして非常に優秀なのが風属性だ、防具は回避に優れていて、防御力はかなり低めだがうまく回避できれば問題無い。槍は跳躍スキルが付いていて、棒高飛びよろしく飛び上がって頭上から攻撃できる。

 最後に無属性、両手剣はそれなりの攻撃力があり防具もそこそこだ。機動力もそこそこで良くも悪くも平均的な仕様になっていた。


 武器と防具は別の属性のものを選べるので、うまく使えば攻撃を躱し弱点を突けるだろう。

 装備を変更するためのクールタイムは50秒程、迂闊に装備をチェンジすると命取りになりかねないので注意が必要だ。

 元ネタと思われるゲームではもっと細かく装備をいじれたのだが、魔獣の討伐にはコレでも充分役に立ちそうだった。


 スワンドレイク領の北部には、魔獣の森と言われる広大な森林や山岳がある。

 そこには幾つもの異界との裂け目が出来ていて、そこから吹き出す瘴気のせいで森の動植物達が魔物化する。その魔獣を討伐するのが我が騎士団の主な仕事だ。


 私達も早く魔獣討伐に参加したいのだが、13歳で漸く同行が許されても基本は荷物持ちだ。そして14歳から瘴気の弱い地域での討伐に参加できる。

 しかも、ある程度の戦闘力が認められないと足手纏になるため、年齢に拘らず同行は許されない。

 【ビーストハンター】と言いながら、本当にハンティングできるのはまだまだ先だった。


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