表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ゲーマー令嬢は婚約者を玩具にする  作者: 御月源士郎
序章 幼少期編
29/36

閑話・婚約者は心配性

「いやぁ、なんと可愛らしい姫ではないか」

「かっ、可愛い⁉」


 その一言でレインの顔は真っ赤になっていた。


「可愛いなんて初めて言われた」

「え?」


 ショックだった。俺は何時もレインを可愛いと思ってるのに、なんで初めて会った男のそんな一言で赤くなったりするんだよ。

 ……そうだった、思ってるだけでレインに直接「可愛い」って言ったこと無かった……

 今すぐ頭を抱えて蹲りたい気分だ。過去に戻って何度でもレインに「可愛い」って言ってやりたい。


 昼間からお酒の入った大人達はすっかり意気投合してしまった。確かにディランの話は面白いけど、アルコールの入ってない俺達は若干置いてけぼりだ。


「俺も、レインの事を可愛いと思ってるよ」


 ふと、自分を奮い立たせて口にしてみる。


「あはは、無理してそんな事言わなくてもいいよいいよ〜、自分でも可愛いから程遠いって分かってるから。ディランは大人だから私みたいのでも可愛いく見えるんだねきっと」


 駄目だ、全然伝わってない。なんで今までちゃんと口に出して言わなかったんだろう。

 只々激しく後悔したけど、もう手遅れだ。レインにとっての最初の「可愛い」をディランに取られてしまった。

 しかも、ディランてレインの理想の男性像じゃないだろうか?

 大人で、強くて、包容力もあって、筋肉も義父上のように如何にもな厳ついマッチョでは無いけど、無駄無く鍛え上げられたいい身体をしている。

 しかもものすごく強い、義父上やロットバル団長よりも強いかもしれない。とてもじゃ無いけどあんな人に勝てる気がしない。

 あれからディランを避けてたのは、不審人物としての警戒心もあったけど、これ以上レインと親しくなるのが嫌だった。


 そうこうしているうちに北部は雪に覆われた。魔獣も息を潜めたように静かになる。

 雪が溶けると、王都の学園へ向かうための準備を始めた。そのさなか、義父上からの呼び出しがかかった。


「此所、アルベルトも順調に力を伸ばしておるが故、案ずる事も無いと思うが……未だランドルフを後継者にと望むものも少なくない」


 耳の痛い話だ。

 幼い頃、俺はかなり病弱だった。食事は3食食べられたが、出されるものは何時も同じもので、硬いパンと具のないスープだけたった。子供に必要な栄養など考えられていない。

 お腹が痛い、頭が痛い、気持ちが悪い、でも誰も助けてくれないどころか気にかけてもくれなかった。

 体調が良い時は使用人の仕事をやらされたが、養って貰えるだけ有り難いと思えとばかりに給金など貰った事はない。コッペリオン家の次男とは名ばかりの使用人以下の生活だった。

 スワンドレイク家に引き取られ、まともな食事と生活が与えられても虚弱な体質は拭いきれず、体を鍛えてもなかなか身にならない。

 異能を得て漸く人並みになっただけで、まだまだ北部の時期当主と認めてもらうには厳しいだろう。


 やがて、俺達は学園に通う為に王都に移り住んだ。久々にラルフとも再会した。去年の夏季休暇中に領地に戻って来て以来だ。

 ラルフは以前よりも服装が華やかになっている。それはラルフの髪の色にも合っていて洒落ていた。


「少し見ない間にお洒落になったね」

「だろ?アベルも黒ばっかり着てないでもう少し派手にしろよ」

「いや、俺は地味でいい、レインの思惑にハマりたくない」

「思惑?」

「俺をモテさせようとしてる」

「ああ、成程…でも黒だからって地味って訳じゃないぞ、それはそれで……アベル、なんか雰囲気変わったか?」


 ラルフが呆けた顔をして俺を見ている。自分にはよくわからないけど、アレのせいで他人から見える印象が変わってしまったようだ。


「レインが残りの能力経験値を全部魅力に注ぎ込んだんだ」

「なんだそれ!羨ましい!」

「羨ましくない」


ーー未だランドルフを後継者にと望むものも少なくない


 ふと義父上の言葉を思い出す。

 羨ましいのは俺の方だ、自分の力だけで周囲に認められている。


「ラルフにレインを譲る気は無いから」

「へ?あ?ああ……頑張れよ」

「でも、スワンドレイク家の当主の座なら譲るよ?」

「げっ!それも勘弁してくれ」


 ラルフならそういう反応をすると分かっってた。でも俺達の気持ちだけでどうにかなる訳じゃないと釘を刺され、思わず牽制してしまった。

 全く、自分の余裕の無さに呆れる。

 俺は多分、レインが居ないと生きていけない。執着と言うより本能に近いものな気がする。その想いは異能を授かってから日に日に増している。

 もしかしたらこれは愛とか恋とかそう言うものじゃないかも知れない、そんな不安も感じる。

 でもそんな事はどうでもいいと思わせる程にレインが欲しい、自分のモノにしたい。

 だから、俺は全部に勝たないといけない。


男主人公の予定だったのに、影の薄いアルベルトの話を最後に漸く序章が終わりました。

サクッと書いてサクッと完結させるつもりだったのに、序章だけでこんなに長くなるなんて、まだまだ先は長そうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ