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転生ゲーマー令嬢は婚約者を玩具にする  作者: 御月源士郎
序章 幼少期編
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閑話・父上は心配性

タイトルのわりにギャグでもコメディでも無く、父上も変態で無くてごめんなさい。

ほぼレオンディールの独り言と愚痴です。

 娘が灰色の瞳に生まれついて、不遇な人生を送ることになるのではと懸念したのも今は昔、娘は13歳になり付添として魔獣討伐に参加できるようになっると、その能力を遺憾無く発揮していた。

 アルベルトも異能を得てから着々と力を付け、勉学にも励んでいるため軍を任せるに足る者に成長するだろうと期待している。


 ディスクルークの討伐でレイニーナの力を借りたいと申し入れがあり、迷いもしたが参加させる事にした。

 あの一件で娘も色々と思うところがあったのか、実技だけではなく戦術や戦法を学ぶようになった。

 それからと言うもの、付添いが本分でありながら的確な助言をし、かと言えば出しゃばる事無く仲間の信頼を得ている。

 それは戦闘よりもむしろ、指揮系統を任せる方が向いているのではと思う程だ。

 14になり討伐に参加できるようになると、実践も卒なく熟しているようだ。アルベルトと組ませると、その効率は格段に上がった。


 洗礼を受けて依頼、娘は大人びたと思う。振る舞いはそれほど変わらぬ様にも見えるが、思考や考え方が今迄とは違うと感じる事がしばしばある。

 それ故、補佐とは言え指揮権を与えてその力を試したいと思った。

 だか、私は娘をどうしたいのか、正直自分でも良く分からない。跡目はあの2人のどちらかが継ぐ事になっているが、本当にそれでいいのだろうか?


 子供達は異能を授かったという事でディラナ教団に目を付けられたようだが、あちらは使者の人選を間違えた。

 ドロッセル司祭といえば、聖女ドラジェと同じ色を持つ緑髪緑眼のマリクラーラ王女に心酔している。それはこちらとしても都合が良かった。

 そのマリクラーラ王女は【歌】の才能を授かり、今では癒しの歌姫ともてはやされている。

 しかし、レイニーナの本当の能力を教団に知られたら、奴等は娘を取り込もうとするかも知れない。


 レイニーナの異能や無属性魔法についてはマリウスから度々報告を受けているが底が知れない。まだまだ新たな力が開花する可能性もある。そしてこの力は北部にこそ必要なものだ。

 王家や教団の権力を誇示させるための道具にされてはたまらない。かと言って使用を制限させればその力は成長しないだろう。

 誰に似たのか娘の跳ねっ返りぶりからすると、外部に秘匿することも難しいだろう。

 色々と手を回して誤魔化してはいるが、学園に入学する為に王都へ行けば隠しきれない覚悟はしている。


 そもそも義務的に王都で立学園に入学させる事も私は無駄だと思っている。それよりも領地で実践に取り組む方が余程有意義だ。貴重な3年を棒に振るようでなんとも歯痒い。

 だが、王都の者が若者達……後々国の有力者になるで有ろうものを管理する事が本来の目的だとしても、建前上は高等教育を施し学園を卒業する事は社会的地位を得る事にも必要となるため、平民であろうと騎士を目指す者には私財を投資して学園に通わせている。

 それは教養のない田舎者と称されれば、どんなに優秀な者でも無下に扱われる可能性があるからだ。

 しかし、やはり父としては娘を王都に行かせたくない。我が手元から放すのが不安でならない、父の情とはままならないものだ。


 我々スワンドレイク騎士団は、対魔獣戦のスペシャリストであるが、その分対人戦に弱い。

 これが試合などのルールありきのものであれば負ける気はしないが、人を殺める覚悟がない者が殆どだ。故に隙きが生じる。

 自分は若い頃、父の許可を得た上でロメオジュリス騎士団に所属していた。故に、対人戦と対魔獣戦の違いを身に沁みて理解している。

 初めて人を殺めた時は、暫く不眠症に悩まされた。どちらも命である事には変わりないのだが、やはり我々は同族を殺める事に慣れずにいるのだ。

 それを理由に、あえて危険な地である我が騎士団に所属するものすら居るのだ。

 王家や教団がレイニーナを取り込もうとした時、人間を相手に我々は娘を守れるだろうか?


 執務室の扉を叩く音がすると、私は手に持っていたペンを置き、書類を整えて机に置いた。


「儀父上、お呼びですか?」

「アルベルト……まあそこへ座れ」


 促されるままにアルベルトがソファーに腰を下ろすと、自分も執務机から立ち上がり向かいに腰を下ろした。

 アルベルトの父親は私が王立学園時代に親しくなった友人だ。成人してからも度々交流を持っていた。

 アルベルトの存在を知った時、娘と同じ灰色の瞳を持って生まれた事を不憫に思い引き取ったが、思いの外酷い扱いを受けていたと知り、その後は奴と疎遠になった。

 仕事はきちんと熟すそれなりにできた友人だと思っていたが、私生活では不甲斐ない男だと悟り、呆れ、見限ってしまった。


「アルベルト、王都に向かう前にお前とはゆっくり話をしたいと思っていた」


 少し前までは何事にも萎縮しているような、遠慮をしているような様子が伺えたが、今は臆することなく私の目を見て話をできるようになった。

 肉体面だけでなく、精神面でも成長しているようで嬉しく思う。


「分かってると思うが、レイニーナとお前の婚約は暫定的なものだ」

「はい」


 現時点でのレイニーナの婿となるのはアルベルトで、ランドルフはその補佐、行く行くは騎士団団長として2人を教育している。


「此所、アルベルトも順調に力を伸ばしておるが故、案ずる事も無いと思うが……未だランドルフを後継者にと望むものも少なくない」

「承知しています」


 ランドルフがレイニーナの夫となる場合、アルベルトはスワンドレイク家の正式な養子となり、騎士団の重職、若しくは領地の経営に携わる文官のどちらかの選択肢が残る。


「我が領は常に危険と隣合わせの立地であり、こればかりは情だけで決められるものではない」


 アルベルトがレイニーナを慕っているのは、誰もが見ていて明らかだ。それを思うと何らかの形で2人を添い遂げさせてやりたいと思うのだが……


「それとだな…その、私も一介の父親である以上、娘の希望も考慮したいと思っているのだ」


 恥じらいを飛ばすように咳払いを1つすると、思い切って聞いてみる事にした。


「で、どうなのだ?レインとお前達の関係は」

「俺は、家族としては慕われているとは思いますが……」


 やはりな、娘は色気がないと言おうか、色恋沙汰には向いてない性格だろう。

 2人の様子を見ているとレイニーナも満更では無いようにも思えるが、まだやっと15になろうと言う年頃だ、そこは長い目で見てやってほしいと思う。


「まあ、それはアレの気性のせいもあるだろう、お前には苦労をかけるな」

「いえ、自分が至らないだけです」


 まあ確かに、アルベルトも奥手ではあるな。

 それはさて置きとばかりにもう一度咳払いをすると、姿勢を正してアルベルトを見据えた。


「もうすぐ王都へ旅立つ時期だが、アルベルト、レイニーナを頼むぞ」

「はい、俺の命に替えても守ります」


 真摯な姿勢でそう告げる様子を見ると、やはり娘を任せられるのはアルベルトしか居ないと思う。


「何を言う、2人で無事に帰って来い、お前も私の息子だからな」

「……ありがとうございます」

「それと、頼むというのはアレが無茶をしないように見張っておけと言う意味だ」


 本当に、アレが何をやらかすか心配でならない。これは過保護であろうか?


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