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転生ゲーマー令嬢は婚約者を玩具にする  作者: 御月源士郎
序章 幼少期編
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25 漆黒の剣士4

「ならば【封印】はどうだ?できるか?」


 再びディランの口から聞き覚えの無い魔法を使えるかと告げられる。


「できるかって言われても、やり方がわからないし」

「そうだな……この亀裂を閉じるイメージで魔法を使ってみてくれ」


 閉じる、閉じるねえ…破れた布を縫い合わせるイメージで、亀裂の入り口に向かって飛ばした魔力を指でジグザクに動かす。

 そして、見えない糸を引っ張るつもりで魔力の筋をグッと握って引っ張ると……大きな裂け目が一筋の黒い線になった。


「出来た!」


 異界の狭間を消したわけでは無いけど、これでここから吹き出す瘴気を止める事が出来た。異形も出入り出来ないだろう。


「うむ、上出来だ、だがこれはあくまでも封印だ、もしお前の身に何かあれば解けてしまう、完全に消すにはやはり【消滅】が使えないとな」

「亀裂の封印や消滅は、聖獣であるティナには出来ないのですか?」

「ううむ、ティナは【封印】や【消滅】の魔法は得意では無いのだ、代わりに【強化】や【結界】や【譲渡】の魔法は得意だな」


 同じ無属性が使えるのに、個々によって向き不向きがあると言うことか。

 私は今のところ一通り使えるみたいだけど、得意分野と不得意分野はどれになるんだろう?

 無属性魔法は異能じゃ無いと言うけども、もしかして異能者特典でどの分野も扱えるチート仕様なのだろうか?


「それと、今のティナは本来の魔力を失っておってな、亀裂を消滅させるには魔力量が足りんのだ。あれは魔力の消費が激しい上級魔法だからな」


 確かに、広範囲で瘴気を消滅させた時は魔力消費が激しい。でも【吸収】と【消滅】を同時に発動できれば結果的に少ない魔力で【消滅】出来ないだろうか?

 とはいえ直ぐに使いこなせる気がしない、


「だが先程の【吸収】はティナにも使えそうだ、失った魔力を取り戻せるかも知れん、助かったぞ」


 ディランはニコニコしながら私の頭をポンポンと優しく叩いた。


「さて、用は済んだし吾等はそろそろ行くか」

「もう王都に帰っちゃうの?」

「いや、それはもう少しこの辺りの安全を確認してからだな、今夜の宿もまだ見繕っていないのでな、そろそろ街へ戻らんと」

「じゃあ、ウチに泊まれば?」

「ちょっと、レイン!」

「いや、それは遠慮しておこう」


 ディランは苦笑いしながら首を振る。

 もっと色んな話を聞きたかったのに、残念。


「また新たな亀裂が増えるかも知れん、先程の様な異形も…そうなる前に可能な限り異界の狭間を封印して欲しい」

「うん、やってみる!」

「おう!頼もしいな」

「あまりレインを調子に乗せないでください」


 そうアベルが釘を刺すと、ディランは困ったように頭を掻いた。


「それとレイニーナ、もし異形と遭遇してもアレを消滅させようと思うな、もちろん魔獣もな」

「どうして?」

「命有るものを消滅させようとするなら、お前の命が代償になるかも知れん、無茶はするなよ」

「過去に消滅魔法を使って命を落とした者が居ると言う事ですか?」

「……そうだ、この国で無属性魔法が無いものとされているのもそれが理由だろう」


 ディランの表情は陰を帯びていた。

 過去より語られる英雄譚、そこには神獣より賜った聖剣を使い、魔獣や異形に挑んだ勇者の物語が幾つも記されている。

 そしてその最中、命を落としたとされる勇者の仲間が幾人も居る。その一人だろうか?

 だが、消滅魔法を扱う者は英雄譚には記されていない。


「それと、吾の事は只の傭兵という事にしておいてくれないか?」

「どうしてですか?」

「あまり目立ちたくないのだ」

「正義の味方は人知れず戦うもんだしね!」

「ん?ああ、そのとおりだ!」

「俺は儀父上に事実を報告しますよ」

「なんとイケずな!あまり騎士団と関わりたく無いのだがなあ…」


 ディランは困った顔でアベルを説得しようとするも、頑として聞き入れなかった。

 ああ、これは私達も勝手な行動をしたとしてお叱りを受けるパターンだ。アベルの正直者め。


 それから私は封印魔法が使えるようになった事を報告し、討伐の度に異界の狭間を封印した。

 ディランや異形の事はアベルが父上に報告したようだが、騎士団の者にはまだ異形の事は知られて居ないようだ。

 マリウス先生には無属性魔法は異能では無く、浄化魔法だと思っていたものは消滅魔法ではないかと言う事も、浄化魔法は聖獣でないと使えない事も伝えてある。


 あれからディランはまだ北部で傭兵業を営みつつ、異形の侵入がないか目を光らせてくれているようだ。

 偶にギルドや街中で出会う事もあるのだが、アベルが警戒していて、ゆっくりと話す事はできていない。


「アベルはなんでそんなにディランを嫌うの?」

「またレインを危険な事に巻き込むかも知れないでしょ」

「でも、異形も異界の狭間が増えてる事も北部にとって大変な問題だよ」

「なのに直接騎士団に訴え出ないところが怪しいし胡散臭い」

「もう、ディランはいい人だよ」


 何度か説得を試みるものの、アベルの警戒は解けなかった。

 そうこうしてる間に冬を迎え、北部は深い雪に包まれた。雪が溶けて春を迎えれば、私達は王都にある王立学園に通うことになる。

 一抹の不安を抱えつつも、私達は新しい門出を迎える事となった。


ディランの話は当初2話で終わらせる予定でしたが、清書してたら結局4話まで増えてしまいました。

書き留めていたネタをきちんと書き起こすととこんなに差が出てしまうものなんですね。

ここで序章のメインストーリーは終わりになります。序章は説明的な台詞や文章が多くなっていまい、単調な表現にならないように頑張ってみましたが、なかなか難しいものですね。

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