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転生ゲーマー令嬢は婚約者を玩具にする  作者: 御月源士郎
序章 幼少期編
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10 無属性魔法の真価

 数日後、再びマリウス先生が訪れ、無属性魔法の授業を行うことになった。ちなみに今日は私ひとりだ。


「レイニーナ様、最近、肌や御髪に何か特別な方法で手入れをしましたか?」

「いいえ、この所すっかり洗浄魔法でダメ人間になってます」

「毎日ですか?」

「毎日です」

「ふむふむ……」


「ところで先生、ご相談があるのですが」


 実は魔力の測定以降、見慣れないゲージが増えているのを見つけた。


ーー魔力ボーナス:99.9%


 アプリにしろスキルにしろ、これらは何かしらの条件を満たすと増えるみたいだけど、説明書が無いため常に手探りだ。

 ボーナスと言うことは私の本来の魔力は残ると言うことだろうか?もしこの魔力が一生分のものだとしたら……

 マリウス先生はステータスを見る事が出来ないため口頭で説明する。


「これはもう少し様子をみないと何とも言えませんね、魔法を使った後はゲージの変化を確認するようにしてください」


 どちらにしろ仕組みが分からない以上、ステータスをマメに確認すると言うことになった。


「では、この瓶の中身に先日の無属性魔法をかけて頂けますか?」

「?…は、はい」


 魔力ボーナスの話が終わると、先生は懐から小瓶を取り出し、机の上に置いた。

 瓶の中身はなんだろう?と思いつつポスンッとしてみる。見た目は特に変わったようには見えない。

 すると徐ろに、先生が瓶の中身をひと口飲み込んだ。


「やはり、ただの水になってる」

「それは何なんですか?」

「農薬ですよ」

「農薬っ⁉ 毒じゃないですかそれ!」

「恐らく、生き物に害をなす成分や不純物だけが浄化されたのでしょう」

「凄い、毒までキレイにできる洗浄魔法!恐るべし!」

「いや、これは浄化魔法と言うべきかと」 

「洗浄魔法恐るべし!」


 負けずに私は2度言う。

 先生は不満そうな顔をしながらも、再び懐から何かを取り出した。


「では次はこれを」


 それは何やら魔法陣が画かれた紙に包まれている。包を開けると、それは鈍く光る半透明の石だった。


「これは?」

「魔石です、でもただの魔石ではありません」


 魔石とは所謂魔力を帯びた石である。魔道具や魔法の補助として使用できる。スワンドレイク領が農業に適さない北部に位置しながら、それなりに潤っている理由はコレだ。

 魔の森周辺の山々には多くの魔石鉱山があり、それを元手に作物の豊かな地域から野菜や穀物を手に入れている。

 近年では、魔の森に異界の狭間が現れる原因ではないかと研究され始めたそうだ。


 私は促されるままに魔石をポスンッとしてみると、魔石の濁りが取れ通常目にする魔石の透明感を取り戻した。


「うん、予想通りだ!」

「何が起きたんですか?」

「これは瘴気を帯びた魔石だったんですよ」

「瘴気っ⁉ 」


 鉱山は魔の森周辺に存在するため、場所によっては異界の間から吹き出す瘴気で穢れてしまっている事がある。その場合、人の手に触れさせる訳にいかないため、その鉱山は厳重に封鎖されるのだが、これは研究用に持ち帰った物だったらしい。

 その魔法陣の包は瘴気を外に漏らさないための物だったそうだ。


 え?その魔石を魔法で浄化できちゃうの?


 そしたら浄化しまくってガッポガッポやん!


「瘴気もキレイにできる洗浄魔法!恐るべし!」

「いや、ですからこれは浄化魔法ですよ」

「浄化魔法と洗浄魔法、何が違うんですか?」

「え?………ええと、気分?」


 気分かい!


「浄化魔法の方がこう……凄い感じがするじゃないですか」

「いやいやいや、洗浄魔法の方が親しみを感じるじゃないですか」

「魔法に親しみは必要ありません」

「いやいや、魔法は便利に使うものです」

「いやいやいや……」

「いやいやいやいやいや……」


 このあと暫く、この魔法をどう名付けるかで押し問答が続いた。


「そう言えば気になってたんですが、先日お会いした時と比べて肌や髪の質が格段に良くなっています。その手の事に疎い私が見ても分かるほどに。それも浄化魔法の力なのでは?」


 言われてみて初めて自分の身体を確認してみた。確かに日に焼けけて黒かった肌が白くなってる。

 髪もパサついて傷んでいたのがツヤツヤだ。これなら灰色ではなく銀色と言っても差し支えないだろう。


「メラニンも消せる洗浄魔法!恐るべし!」

「だから浄化魔法ですって」

「いやいやいや……」

「いやいやいやいやいや……」


 そして押し問答を繰り返す。


「とにかくこれは凄い魔法ですよ、学会で発表すべきだ」

「あんまり大袈裟なことにはして欲しくないなあ」


 またドロッセル司祭みたいな人に難癖つけられるのも不愉快だし。

 しかし、私達のような無属性の人間が魔法を使えるようになれば、周囲から蔑められる事も無くなるかもしれない。

 取り敢えずこの件は改めて父上も交えて相談する事となった。


「もしかしたら、他にも無属性でも使える魔法があるかも知れません」


 そんなこんなで引き続き無属性魔法の研究は続けられることになった。あれ?元々は研究ではなく練習するのが目的では無かったっけ?



ー・ー・ー・ー・ー・ー



「母上、またですか?」


 私はここ数日、湯浴みの後に母上の部屋に呼ばれるようになった。

 浄化魔法(この名称は不本意だが)を使うなら湯浴みの必要は無いのに、母上は湯浴みをした上で魔法をかける事を望む。

 何のための人を駄目にする魔法だと思っているのだ。


「まあ別に構いませんけど、母上は今のままでも充分にお綺麗ですよ」

「駄目よ!旦那様の肉体美に相応しくある為には、私も何時までも若く健康で美しくあらねば」

「仲がお宜しいことで」


 とは言え、家族には健康であって欲しいので、数日に一度は皆に浄化魔法(仮)をかけている。もちろん使用人や騎士達にもだ。

 やれ肩こりが無くなっただとか、胃の調子が良くなっただとか、怪我の回復が早くなっただとかで重宝されている。

 とは言え治癒魔法ではないので、瞬時に回復するものではない。自己治癒能力を上げたりデトックスをしているようなものだろう。

 騎士達の健康を維持する手助けをする事で、魔獣討伐の効率も上がっているそうだ。

 前世界で言えば整体師や鍼灸師のようなものだろうか?美肌やダイエットにも効くならばエステティシャンの役目も果たしているかも知れない。

 よって、私の浄化魔法(仮)は常に予約待ち状態になっていた。


「私、この魔法でひと稼ぎ出来ちゃうんじゃない?王都でエステティックサロンでも開こうかな?」


 しかし、父上から無闇な使用を禁じられてしまった。とは言え施術希望者がこれ以上溢れかえったら私だけでは対処しきれないので従う事にした。

 もちろん、母上の美容やアベルの健康維持の為に例外的に使うこともあるし、私も駄目人間への道を突き進む所存だ。

 そして面倒な事になった時の保険に、ごく初歩的な弱い治癒魔法が使えるという事にしてある。実際、人体に与える影響はそれと同等もしくはそれ以下のものだし。


 そして現在の魔力ボーナスは99.9%

 何日かに分けて使ったとはいえ、回数にするとそれなりに浄化魔法(仮)を発動している。

 コレだけ使って変化が無いとなると、私の本来の魔力量を超えると消費していくものかも知れない。


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