表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

冒険者あるある

ヒロイン二人目登場回です。

「やあ、そこのお嬢さん、この僕とパーティを組まないか?」


「いや、俺と組んでください!」


「あの! 私もEランクの冒険者なんです! その、良かったら一緒にやりませんか!」


「丁度アタッカーを探してたところなんだ! 一緒に組んでくれないか!」  


「どうだい? 僕、結構優秀な魔法使いなんだ」


トイレに行った少しの間にiが囲まれている。めだってたこともあってか彼女が魔法を使えない発言は広まっていた。その為剣士、武闘家などの接近ジョブを探している者、単にその美しさから一緒になろうとするもの、女の子同士で組もうとするもの、色んな人からパーティに誘われていた。


「すみません、既にあの方とパーティを組む約束をしてますので」

 

そう言って俺の方を指差してくる。全員の視線が俺に集まる。


残念そう2割。納得いかなさそう3割。睨んでくる5割。ちょっと待ってくれ。恨まないでくれ。ついでにパーティを組む約束してない……そういや知ってる人を探す為に一緒にいるんだった。まあ、そう言ってしまった以上見つかるまでは一緒にいることになるか。


「はいはい皆さん。iさんが困ってますよ。無理に誘うのはやめましょう」


皆不満げ、又は残念そうに退散していく。皆ギルド内で問題は起こしたくないのだ。面倒だからね。そんなやつは馬鹿はいない。


「所で、これからiはどうするんだ? やっぱりクエストをこなすのか?」


「その予定です」


「なら初心者向けのクエストを………………」


クエストボードを見る。薬草納品や大掛かりな工事の手伝い、荷物運び、ちょっとした護衛など、初心者向けのクエストを探すがなかった。薬草の納品は年がら年中あるのに運が無い。


「無いなぁ」


「無いなら一緒に行かないか?」


後ろを振り返ると短い金髪のイケメンが依頼書を持っていた。よく見たら女性だ。一瞬腰には刀をこさえている。珍しい。  


「いきなりすまない。私はカタネ。Aランクなんだけど、私は魔法が使えなくて、行きたいクエストがあるんだけどどうしても魔法使いの力が必要なんだ」


i目当てじゃなく俺目当てに話しかけられていたのか。元【ヒーロー(勇者のパーティ)】だったから知っているやつがいてもおかしくない。願ってもない話だ。iが刀を使うかは知らないけど同じく魔法無しの戦闘による立ち回りが見れる。


「ありがたい話だ。どういった内容なんだ?」


「これだ」


【スケルトンジックの討伐】


報酬、78000G


サブ報酬、語りの羽


「こいつはB級だけど、確かに魔法が無ければきついな。A級ならもっと他の良いクエストがあるんじゃないか? ボブゴブリンとか」


「金稼ぎが目的じゃないんだ」


「もしかして、サブ報酬目当てか」


「まあ、そういった所かな」


iはEランクだけど、まあAランクの人と一緒だし、俺もいるから大丈夫か。


「i、どうだ?」


「大変良いお話です。こればかりは経験が必要でしたので」


「本当に?! ありがとう!」


カタネが良い笑顔で礼を言う。俺も礼を言う。今はもう夕暮れ時が近いので出発は明日になった。


待ち合わせの馬車の前に行くとカタネがおーいと手を振ってくれていた。


「すまん、またせた」


「いや、私のワガママを付き合ってもらうんだからむしろまたす方が無礼だ!」


相手を絶対に待たせない意思が伝わってくる。待ち合わせ時間より少し早いが馬車に乗ることにした。


何故かiが動かない。


「どうした?」


「馬車ってどう乗るのでしょうか? 重量規定は? 」


「もしかして初めて?」


先に馬車に乗っていたカタネが顔を出す。


「はい」


「馬車は後ろに行き先が書いてあるからそれを見て荷台に乗って待つんだ。御者が来たらお金を払えば良いから。値段は場所や人によって違うけどだいたい1000Gだよ。重さに関しては大変重い装備を持つ人もいるから大抵は大丈夫だよ」


「ありがとうございます」


iも馬車に乗り込む。ギルドから交通費は支給される為無一文のiにはありがたいことだと言う。それを知ったカタネは驚く。


「その格好で無一文?」


確かに、iの服は素材が上品そうに見える。が、これ一着しかない。着替えが欲しいところだけど俺自身もあまり金がない。


「最低2着買う予定です」


「確かに2着あれば着回せるし、私も同じような時期があったから良くわかるよ。流石に5日間同じ服は嫌で優先して買ったぐらいだし」


「はい。戦闘の事も考えて多く用意し毎日着替えられるように安定した収入が必要です」


「毎日着替えたいのは最初あるあるだよね」


「それ、冒険者をやってると綺麗好きでもない限り数日間着るのはざらにある。街にいるとかならともかくクエストに出かけると荷物の邪魔になるから」


「そういうものなのでしょうか?」


「冒険者なんて汚れてなんぼなところあるしね。あと武器とか魔法具とか、色々と強くて高価なモノが欲しくなって何とか買おうと必要ないもの削ったり」


「その血生臭さがまた格好良く見えたりね。それでちゃんとすべきところでちゃんとした格好すると別人のように変わる人がいて誰? てなったり」


「いたなぁ。クエスト行くときもその時用にバッチリ決める奴もいたし」


「弱く見られないように格好だけでもって人もいるしね。そうだ、格好と言えば………iさん、ちょっと後ろ向いて?」


「何故ですか?」


「良いから」


「わかりました」


iが後ろを向くとカタネはiの髪を慣れた手つきで結びだす。


「できた」


iは向き直して自身の髪に触れる。後ろが束ねられていた。


「おお! 似合ってる!」


「ゴムが無いから結び方がちょっと変な結び方になっちゃったけど」


「これは、ダブルノットポニーテールですね」

 

「髪の結び方に名前なんてあったんだ。長い髪は邪魔になることが多いからね。こうして整えないと。戦闘用ファッションも大事だよ。それに」


カタネが両手でiの頬をつり上げる。ちょっと潰れた感じの笑顔が出来上がった。


「これ、忘れるのも冒険者あるあるだから。笑顔は大事だよ!」


手を離すとiの表情はもとに戻ってしまった。だが何か考えているのか数秒間動かずにいると不意に微笑んだ。


「わかりました」





































カタネはシンプルに刀使いだからカタネと言う名前にしました。長女気質です。はい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ