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黒歴史(カラーノート)  作者: 三概井那多
7/32

田舎に集まりし、面倒臭い僕ら(オタクども)7

第三色『オタクは誰もが面倒臭い悩みを抱えている』



 たぶん二度目になるが俺は走るのは結構好きだが、走らされるのは結構嫌いだ。走りとは自由であるべきだし、疲労感からのデッドゾーンでいじめて楽しむのは好きだし、そこを超えたセカンドウィンドでゾーン状態の走りの動作が最適化されている時に頭の中では小説のこととかをあれやこれや思考し続けるのは面白い。


 脳に普段以上に酸素が回っているためか処理能力が上がっている。あれやこれやの切り替えの思考が早く、話の考えがよくまとまるのだ。


 だからだろう、俺は陸上選手とかランナーというのには向いていない。


 今の説明ならばたぶん「いや向いているだろう」と突っ込みを受けるかもしれないが、俺は根本的に記録や順位に興味がない。完璧にないという訳ではないが、それはあくまでも個人的な勝ち負けとかの「アイツにだけに負けない」とか「アイツに食らいついていく」というような目先のもの。


 あえて言うなら結果を残すための努力ができない。長く継続的に続けるのではなく、目先の結果や自身で定めた勝利条件のために走りきるのが一番走れるのだ。


 去年だったか? それとも一年の冬か。中学駅伝? 地区マラソン? なんかの大会で二十キロくらいのマラソンで二十位は取れるみたいなことを言われたけど、俺の目的はあくまでも完走だったからマイペースを貫いた結果が五十位くらいだったから、期待していた先生や選ばれなかった先輩にガチ切れされた思い出がある。


 俺としてはそこには興味がない。


 お前たちがゲームと漫画に興味がないように、俺は陸上に興味がない。


 あるいは、お前たちがゲームと漫画は娯楽であっても作り手になりたいと思わないように、俺は走ること自体は好きでも陸上そのものに人生をかけるスポーツマンになりたいと思っていない。


 田舎であるために普通の学校よりも自由意志が束縛されている。選べる選択肢は最初から少なくてさらに家庭の事情でさらに小さくなる。


 俺は少なくとも小さくて狭い世界の住人なんだろうと思う。


 こんな離島の小さな世界では隔離社会や同調圧力というのはかなり強い。島にいるならそれをするのが当然だとか、本来あったかもしれない道が最初から選択の余地なんて許されないものだと断定されることが俺は酷く許せない。最初から夢を目指せなかったり、好きなことを嘲笑われるのは絶対許せない。


 こんな考え方は、田舎が嫌いな、都会に憧れる島の子供と言われるかもしれないが、そうではない。勘違いして困るが俺はこの島自体は別に嫌いではない。生まれ育った土地であるし、約十五年近く住んできたのだ。楽しい思い出、面白かった出来事だって存在する。


 だから、この島が好きでも、この島の人間が嫌いなんだろう。


 小さくて細くてか弱いだけど確かに存在している可能性を零として閉ざしてしまう人間たちが、大嫌いだ。


 一度、小説を書いていてそれがクラスの奴らに見つかり、勝手に読まれて笑われたことがあった。


 意味が分からない、と一笑された。


 恥ずかしさと悔しさ、怒りが入り混じったドス黒い感情のまま殴りつけた。


 その後、担任に叱られた。殴った奴らのことを勝手にノートひったくて読んで馬鹿にしたそいつらを許し気はなかったが、殴ったこと自体は悪いと思ったので形ばかりの謝罪をした。


 それで終わりだった、それで事は治まるはずだったに。。


 けど担任から「こんな役に立たないものを書いたお前が一番悪い」とふざけたことを言われて、落ち着いていた頭がもう一度沸騰して担任を殴ったらキレられてボコボコされた。


 その時誓った。絶対に見返してやる。お前らが馬鹿にしたそれを、嘲笑ったそれを、絶対に認めさせてやる。いや、認めなくてもいい、ただお前らの価値観のまま、俺が大きくなって世間を認めさせて、お前らの価値観が世界とズレていたと思わせてやる。


 なのに。


「っざけんなちくしょー!」


 言葉を吐き捨てて、一段と地面を蹴り抜いた。


 パンと地面を響かせるシューズ。太陽によって熱せられたコンクリートの道をだらだらと走り続ける。普段ならデッドゾーンなんてとっくに越してセカンドウィンドであれやこれやと模索しているのに今日はそんな気になれない。いや、最近ずっとこんな感じが続いている。


 小説を書きたい。けどその先の展開が書けない。言葉が出てこない。表現の仕方が分からない。伝えたいことはあるのに、文字にすると陳腐さが否めない。正しさが分からない。物語が進まない。どうしていいのかが分からない。


 走りはいい。明白なゴールが存在する。走っていけばいつかゴールに辿り着く。考える必要はなく、楽しめばいい。


 けど物書きは違う。俺が決めたゴールがあっても、そのゴールは周囲を認めさせなくきゃあいけない。


 皮肉なことに走りではどうもよかった結果や評価はこっちでは意識するようになった。力がなかったら、才能がないなら、実力がないなら、意味がない。自己満足じゃなくて、周りから認めてもらえるものではなくていけない。


 自分の頭の悪さに嫌気がさす、展開の発想を思い浮かばず、文章も上手く書けない自分が腹立たしい。


 ジィー、ジィー、と泣き叫んでいるセミの鳴き声が空白な頭によく響く。全身から溢れる汗が服を濡らして体に張り付いて気持ち悪い。いつもの疲労感の気持ちよさはなく、ただ、体がだる重くて走りが乗らない。


 気持ちが途切れて、走るのをやめて歩くことにした。今日は外走り。先生らは折り返しと、見回り車、ゴールに配置されている。さっき見回り車が通ったからしばらく先生はこない。一緒に走らされている連中と距離はあるだろうし、たとえ近くにいてもサボりで歩くのは暗黙の了解なので見つかっても問題ない。


「おーい、夕弌君」


 橋を渡ろうとした時に海岸から名前を呼ばれて、そちらへと視線を送る。俺のことを君付けで呼ぶ奴は少ない。俺に限らず島の人間はほとんどが呼び捨てだ。そして、今日この辺りで―――折り返す前にその姿を発見していた―――奴はアイツしかいなかった。


「なん?」


 俺は端に寄りかかるようにして返事をする。と俺が気づいたことに喜んだような顔をみせて続けてくる。


「今日ってマラソン大会でもやってるの?」


「ただのマラソンばい。長距離の練習!」


 距離があるため互いに少し張り上げた声で言い合う。


「そっかー。りくじょーせんしゅなのー?」


「違う!」


 学校側が特設陸上の選手として選んだ人間としてはたぶんそうだが、俺自身はそんなつもりはない。学校側が勝手に言っているだけ。俺はサッカー部だ。まあ、そのサッカー部も半ば強制なので渋々といった調子でやっているのでサッカー部のつもりもない。


 ほんと選択肢がないクソ田舎クソ学校だわ。


「じゃあなんで走ってのさー!」


「部活みたかやつやけんに決まっとどもん! 外走りとかあっどがー!」


 それくらい察しがつかないのか、と眉を顰める俺。対して真理愛は「そういうのがあるんだ」と納得していた。


お前(ワル)はなんばしっとと? 水切り?」


「ううん、お絵描き! せっかくだからこの島のこと描こうと思って」


 お絵描き? アイツ絵なんて描くんだ。……そういえば死んだ親父さんが絵描きとかどうの言っていたからその影響かなんかだろうか。


 亡き父がやっていたことを追う娘とか考えれば少しロマンのある話ともいえるが、アイツがそこまで深い考え持ってやっているかどうかは謎だ。


 まあ、絵を描くことを始めたきっかけくらいにはあるだろう。俺も小説を書き始めたきっかけは似たような理由があった訳だし。


「そっか、頑張れよー」


「おうさ! ……あ、いつ終わるの?」


 別れようと思ったら呼び止められる。遊びの誘いかと思って返事をする。


「昼までだから、また店の方にこーい」


「え、なんで?」


「遊びの誘いじゃあねえのか?」


「え? あ、うんそうそう。よくわかったね。ねえ、恭和君は?」


「アイツも昼になったらタダメシ食いにくるってよ」


 分かった、と一言に俺達は別れた。ゴールの学校まではもう遠くない。歩くのをやめて俺は再び走り出した。


 学校に辿り着くと先生から今日はもうストレッチして学習室に行け、と言われ、練習を上がっていいと言われる。


 俺は適当にストレッチをして、汗を拭ってさっさとクーラーがよく効いた部屋へと戻ろうと思っていると、俺より少し後にやってきた桜美がわざわざ俺の近くまでやってきてストレッチを始めた。


 ………場所を変えるか。と俺はストレッチをやめて離れようとすると「待て待て、待て」と桜美に呼び止められる。俺は心の底から嫌な顔をして移動をやめてその場に留まり、ストレッチを再開する。普段よりも速いテンポで。


「なあ、あるは(だる)なん?」


(だる)って(だん)のこと?」


 俺よりか少し背が高く、目が細いことが特徴の桜美。名前が女っぽいのは生まれた時に女だと「桜美」と男なら「桜海」とどちらにしろ「おうみ」と名前を付けるはずが、名前の申請で間違えられたと昔語っていた。


 名前は体を現すというのか、地域のイベントで女装する時があって、その際一番女装が似合っていた男だ。


 桜美の質問にわざとぼかし聞き返す。たぶん、梶田のことだろう。俺から少し遅れてゴールしたコイツなら橋でのやり取りを見ていたのかもしれない。そうじゃなくてもこの間俺達三人と連れ違ったのだ。ここ最近で島で俺が知らない奴と一緒にいて、コイツが見かけたのは梶田と仲村だけだ。


「橋んところで話とった女子。こん間も一緒におったど?」


 やはり梶田のことだった。


「友達」


「……友達、ねえ。ふぅーん」


 意味深に呟いて、細い目をますます細めて楽しそうな顔だ。何が面白いのか分からず、俺は不愉快な気分になる。


 細い目といっても漫画とか一本線の強キャラというような細さはない。普通に細い目であるし、それに喧嘩したら俺でも普通にボコれるし、実際ボコった。小説勝手に読んで囃し立てたのってコイツらだし。


 ニヤけた面が気に入らず、舌打ちする。


「なん、喧嘩売ってんのか?」


「待て待て、待て。すぐに喧嘩に走るんじゃなかばい。未来の作家君」


「歯を食いしばらなくてよかど。そっちの方が痛いけん」


「待て待て、待て! 待ったんかーい! ごめんなさい、許してね、ね! 俺達友達!」


「個人的にお前らとの縁ば切ったつもりばってん」


「そがん悲しかことば言うなや。ただまだポケモンやってん、のか、って、言っただけ……プハハハ」


「おらっ!」


「ごべっ!」


 耐えきれなく笑い出したアホへと肩めがけてハイキックを食らわす。チッ、顔を蹴り飛ばす気でいたが背が高い分狙いが届かなかったか。ついで走ってきたばかりで足の具合も少し良くない。


 ちなみになんで蹴ったかは、言われた通り殴るのは『待って』やったのだ。俺なりの優しさだ。


 さて、アホ蹴ったし、先生に見つかると後々面倒ださっさとズらかるか。死体を放っておいて学習室に行こうとすると、後ろから「待て」と呼び止められる。桜美はゾンビのように起き上がる。


「ほ~、いて~え。肩チョー痛て~え……。少しは手加減せんか」


「ウチ殺さんやっただけでも感謝しろ」


「あ、十分手加減されてたわ」


 ハハハ、と笑い流す桜美に、俺は目を細めて、は~、と息を吐いて立ち去ろうとする。今度は待てと言われても止まるつもりはない。


 予想通りに桜美も「待て」と告げるけど従う気がない俺は無視して歩みを止めなかった。足を止める気がないと察した桜美は先を回りして行く手を阻んできた。


 チィ、と舌打ちをする。


「マジでなんやお前はさっきから!」


 桜美のしつこさに苛立ちが募る。大体、「待て待て」と繰り返しているけど、話を進めないのはどういうことだ。


 今度本当に殴ってやろうかと思っていると、桜美は口を開いた。


「なあ、いい加減機嫌直さんか?」


 桜美は真っ直ぐ俺の目を合わせてそんなこと言ってきた。雰囲気と言葉の感じからして今のやり取りのことじゃない。これまでのことを指しているのだろう。


「………べっ、つ~に」


「だけん待てて! 馬鹿にしたり笑ったのは悪かったばってんさ。お前もそがこつで怒んなゃって……ごめんなさい。そりゃ、怒るよね~。ごめんね~。だけんその拳おろそわい、なゃ~」


 俺が拳を握りしめて、胸元辺りまで上げると掌平返しで言葉を撤回させる。ははは、笑って誤魔化しつつ、俺の機嫌を伺いなら話を戻してくる。


「あんがと。……ただの冗談だけんさ、お前も許してくれんか?」


「……正直さ、(おる)って謝ってほしかわけじゃあなかっさい」


 桜美は言葉を耳に入れつつ、俺はキレやすくなっている状態を抑えつつも、ため息を吐き出すようにして告げる。桜美は「え?」と声を漏らした。


「大体お前なんが目的ね? 今頃(おる)と仲が直したかって。別に俺が機嫌悪くなって距離があってもそこまで困ることはなかろもん」


 こいつらとの明白な距離ができたのは去年の頃の、二学期くらいだったか。俺が小説を書き始めて、囃し立てられ笑われ、喧嘩して、怒られて、教師とも喧嘩したのは。


 あれが明白に俺達の仲を絶ったっていうのは。


 それまでも保育園から中学まで一緒だったこともあって、ポケモンやってるやってないでいざこざがあったけど、それでも何だかんだで仲自体は普通に友達と接してきたはずだった。


 だからあの日の出来事自体は俺にとっても、コイツらにとっても距離を分け隔たれたのは衝撃だったのかもしれない。


 それでこの一年間は俺とクラスの微妙な距離の関係が続いて、もう関係は修繕不可能だと互いに諦めはついたはず。少なくとも俺はそう思っていたし、クラスの大半は「夕弌は意地張っているから無理。こっちも気にしない」というような空気で完結しているはずだ。


 それなのに今更なんだこいつは?


 桜美のことを見据える。本当に真意が読めずに訝しげな瞳で奴の様子を窺いながら、何を言い出すのかを考えながら待つ。


 ……梶田のことを一目ぼれしたから間を取ってほしいとか漫画みたいなことを言い出す気かコイツ?


 一番ありえそうな展開だが、それはたぶん、ないに等しい。コイツの性格からしてこの手の話はからかわれるのを分かっていて避けるタイプだ。疎遠である俺にわざわざ仲を戻してまで云々と訳でもないだろう。


 じゃあなんだ? コイツが仲を戻そうとするのは。


「……相変わらず寂しかこつば言うなお前は」


 とても残念そうな可哀想なものを見る目で俺を見てきた。


「……っ!」


 頭に血が上って殴りかかる衝撃を抑える。ただ強く舌打ちして、「ああそがんか!」と荒げた声で桜美を押しのけて俺は歩みを再開させる。


 もう真意なんて知ったことか、こんな奴に話を聞く姿勢を、優しさを出しただけで最低最悪に恥だ。あ~、あ~! 何が寂しい奴だ、コイツは。何が機嫌を直せだ、この細目は!


 俺は、俺は!!


 苛立ち。そして感情が高ぶりの反動からの涙が出てくる。昔から感情の一定値が超えると喜怒哀楽関係なく涙が出てくるのだ。


 だからだ。


 だから俺の今の感情は怒りであって、この胸に来た痛みはショックではない!


「ほんと、ガキやな。可哀想」


 桜美が小さく呟いた一言。その言葉は酷く刺さる。


 うっせえ、バーカ。


 何も聞こえなかったふりをしながらも、内心でそう言い返していた。


 ああ~、あ~~~!! イラつく、ムカつく、腹立たしい! ちくしょうちくしょう、チクチョウ!


 自分の感情が制御できない。内心で荒れた獣が叫んで暴れる。


 人気のない校舎の影に体をもたれ掛かるようにし、額を壁に押し付けて殴りつける。


 クソ、クソ、クソ、クソが!


 桜美の目が、桜美の言葉が、桜美の心が、頭の中から離れない。いや、桜美だけではない、アイツもソイツもドイツもコイツも、俺を馬鹿にしているようにしか感じられない。


 頭の中にフラッシュバッグしてくる嫌いな奴らが俺を無様ものを見るような冷えた目が次々に浮かんでくる。


 ああ、そうだよ、俺はガキだ。夢を見ているばかりのガキだ。好きなものが変わらない、好きなものが好きなままのガキだ。割り切ることができずに、大人になれない。感情任せで結果を残せないガキだ。


 強がって開き直ってみせる。


 傍から見れば、冷静に考えれば、それはただの無様で哀れなものなのかもしれない。


 そんなこと分かっていた。感情とは違う、理性的な自分がいてそいつが、俺を冷めた目で淡々と告げてくるのだ。


 せっかくのチャンスを棒に振った、と。


 大人になった方がいい、と。


 夢じゃなくて現実を見ろ、と。



 ―――うるせえうるせえうるせえうるせえ、うるせえ!



 歯を食いしばって、その声を振り払うように校舎壁を殴りつけた。


 俺は別に何も間違ってねえだろうが! 好きなものを貫いて、夢を見るのは自由だし、夢の目指すのはいいだろうが! それに、縁を切ってきたのはアイツらの方で、俺はそれに合わせただけだろうが!


 心情を大きく揺さぶってくる幻聴に吠える。


 この島の人間は俺のような奴は、夢を見ることも、目指すことも否定する。異端扱いされ、夢ばかり見続ける子供として扱われる。中高生の大切な時期だからそうなのかもしれないけど、そうじゃない。たぶん、そういうことではないのだ!


 大人達から潜在的に刷り込まれている。


 創作物関係の仕事といった類はただの子供の遊びで妄想空想の延長戦上のことでしかない。


 それが同調圧力になって夢自体を最初から見なくなってしまう。何も目指さなくなってしまうんじゃないのか?


 島に住んできたからわかる。人たちが、空気が、冷めた思考が、充満している。


 桜美は俺のことを可哀想なガキと読んだが、俺にはそっちの方ずっと可哀想に見える。


 夢と現実において、確実性しか見ないお前らの方がよっほど可哀想な奴らじゃないか!


 ………そう思っているはずなのに!


 けど、なんでだ?



 ―――なんで俺も、俺自身のことを内心で哀れだと冷めた目で見ているのは?



 島の人間達の価値観が正しいという認識している自分が存在していることがひどく煩わしい。


 治まりどころが分からない荒んだ心。


 もう何かもが分からないと頭が痛くて、苦しい体。


 どうしていいのか、答えが見つからず、現状で自分を救える方法を知らない俺は。


 ただ一つ。悩みが晴れないのに、心の中で行きついた本音があった。


 小説を書きたい。物語を描きたいと。


 同時に、現実逃避だろ、という冷めた言葉が聞こえてきた。


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