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黒歴史(カラーノート)  作者: 三概井那多
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田舎に集まりし、面倒臭い僕ら(オタクども)3

 数時間後、勉強会が終わったという杉田と、二つ下の弟こと実夏夜の部活が終わって合流した。


 ……実は実夏夜に関しては俺がずっと見ていたサッカー部に所属していた。気づかなかった。というか、杉田……いや夕弌の印象しかない。


 この島で最初に出会ったことや同年代、ついでに十三人兄弟という異例な人数(その半数としか面識がない)ために分かるのが顔と名前が一致するのが夕弌しかいない。


 二人と合流した俺は夕弌の自転車の荷台に乗って二人乗りで店『海の幸』へと急ぐ。


「おい、もう少し安定させろよ、尻が痛い」


「田舎の地面は汚なかけん、諦めんか」


「クッションくらい引けよ」


「置くわけなかろもん。荷台は荷物を置く場所ぞ。だけん、今そこにいるお前はお荷物なんよ、お荷物は黙っとけ」


「誰がお荷物だこの野郎!」


「わ、わ、わっ!! 揺らすな、バカチュン!! 転ぶやろうが!!」


「道ズレじゃあい!!」


「お、おま、……ま、マジ、ふざ、…けん、なあ~~~!!!」


「ぎゃああ~~~~~!!?」


 そんなやりとりもありつつ、無事に『海の幸』に到着。


「お前、マジふざくんなよ。マジで死んかと思ったじゃあねえか。あ~、痛って~」


「お前こそちゃんとハンドル切れよ。転んだ調子に(こす)れて血とか出てんじゃん。見ろこの手、ジンジン痺れるんだけど。あっちこっち痛い」


「っざけんな! (おる)だって同じやわ。というか、お前のよっか俺の方が膝とか擦りむいたわ! 血出とっとど」


「唾かけとけ」


「そるはお前(わる)ん方の傷! (おん)のは消毒液いっとや! イソジン必須!!」


「ここまでしっかり漕げたんだから大丈夫だろ、俺の方が重傷で湿布いるわ! 腕がチョー痛てえ」


「気持ち悪く、俺に抱き着いた手なら大丈夫やろもん」


「ああん? やんのか」


「……ウチ殺してやろかい?」


「……目クソ鼻クソの自業自得じゃん」


 互いに傷のなすりつけ合いする俺達二人を実夏夜は呆れたように突っ込む。


 というか夕弌、コイツ怖えな。挑発するように誘ったのは俺だけど、ガチのガンつけて『撃ち殺す』って……ヤクザかよ。


 ちょっと意外な一面にビビりつつも、友達として、男として、引くに引けなかった。


 と、まあそんなちょいと昔ながらの男の友情もありつつ、三人で店に入っていく。


「いらっしゃい……って、お前らか。……あ、なんけ? あれ、……えーと」


 出迎えてくれたのは杉田のおじさんではなく、お兄さんの方。えーと確か長男になるんだっけ? 名前は……覚えていない。十三人も覚えられるか。あっちもあっちで俺のことを覚えていないみたいだし、おあいこだ。


 茶髪の優しそうな眼鏡をかけた男性で年齢は三十代くらいか。飯屋であるが、決まった制服とかはなく、私服っぽい姿。エプロンすらしていない。


 お兄さんは俺を見つけると、名前を思い出せずに難しい顔をしている。


「仲村恭和」


 答えたのは俺ではなく、夕弌だった。お兄さんそれを聞くと思い出したように納得いった顔をする。


「そうそう、仲村さん家の。とりあえず、お前らは奥で喰え」


「はいよ」


「わかった」


「ゴチになります」


 夕弌を先行に奥といわれた席に行く。最初は初めてきた時に来た奥の座敷席にでも行くのかと思ったがそんなことはなく、奥の座敷の部屋に繋がる通路手前のテーブルに着席する。夕弌と実夏夜は隣席に俺はその向かい側に。


 昼時だというのに店内はガラガラで、厨房に立つお兄さんも今何かしら準備をしているようだが、忙しそうにしているイメージはない。飯屋なのにこの空席は経営として大丈夫なのかここ?


 俺は一先ずお品書きを開きながら何を食おうかと選ぶことにする。


「痛ってえ~、実夏夜、おしぼりとイソジン持ってきて」


「いや、おしぼりは駄目やろ。店のなんだから。適当に濡れたタオル持ってくるけん、恭和君もそっでよかですか?」


「え、あ、うん、お願い」


 実夏夜は席を立ち、厨房の方へと消えていった。俺と夕弌のみが残される。


「というか、なんでメニュー見てんの?」


「?」


 夕弌の言っている意味が分からず、疑問符を浮かべていると、夕弌が面倒くさそうな、あるいは痛みを耐えているのか、機嫌悪そうに答えてくる。


「いやだから、お前タダ飯やけん。客じゃあなかろもん。普通に……俺達(おっだ)と一緒で残飯とかそがんとだぞ」


「はあ!? なんで? 俺、普通にエビフライとか食いたいんだけど!?」


「っるせえな。食いたかなら金払え。残飯で我慢せんか、バカチュン……ったくお前(わる)がイチバン」


「あう……」


 結構正当なことを言われた。普通に飯屋だからタダで普通のメニューを食べられると思っていた俺の方が図々しかったか。


 まさか田舎ヤンキーに礼儀を教えられるとは……。


「コラ、残飯言うな! 賄いって言え、賄いって」


 言い返せずに言い淀んでいると俺達の話を聞いていたのか、お兄さんと実夏夜が昼飯と救急箱と濡れタオルを持ってやってきた。


 お兄さんがテーブルに昼飯を置き、実夏夜が俺と夕弌に濡れタオルとイソジンやら湿布を渡してくれる。


 昼は素麺とおにぎり、沢庵、ゆで卵、素麺用のトッピングにトマトやキュウリ、シーチキン、それから……、


「エビフライはなかばってん、代わりにこっば食ってくれ」


 刺身だった。何の魚かは知らないが、……白身の部分? といえばいいのか、透明色のある色艶があって奇麗な一品。


 俺はそれを見つめながら眉を顰めて微妙な顔になる。


「コイツ刺身駄目よ」


 またも答えてくれたのは夕弌だった。濡れタオルで傷口を拭ってイソジンで消毒してながら答える。


「え、そがんなん?」


「ああ、まあ……。生もの系が無理で。……お前、覚えていたんだ」


 俺は生もの無理だ。お腹壊す。ゆで卵はまあギリギリで大丈夫でも生卵はマジで無理だ。


 俺が刺身を食えないと聞いて意外だったのか驚いたお兄さんだが、俺は俺で少し驚いた。俺が刺身を苦手なことをコイツが覚えていたことを。


 夕弌は「この間食えないって言っていただろう」と何気なく言うが、二週間くらい前の事だし、それあの日は今日のように一緒に席に着いて食べていた訳でもない。連れ違うような形で夕弌はどこかに行ってしまったし、むしろお兄さんの方が覚えておいてもおかしくないくらいだ。


 記憶力いいんだな、と言うと、普通だろ、と消毒を終えて、殻をむしってゆで卵を一口齧りつつ、自分の分のそうめんをザルから取って、つゆ皿に浸らせて食べ始める。


 実夏夜も続いて食べ始めたため、俺も手をざっと拭いてから二人に続く。


「このつゆって自家製?」


「いや、普通に店で売っているヤツ。カツオだし」


 一口をすずって感想を漏らしてみるが実夏夜から否定された。俺が馬鹿舌だと一瞬にしてバレてしまった。動揺を隠しつつ、さり気なく返してみる。


「ここ飯屋だよな?」


「飯屋が全部、自家製のつゆやらソースやら伝統の味でできとると思っとるなら違うとぞ」


「いや、田舎町だし、『この島特有の!』って感じの」


「せいぜいお前が食えん魚くらいだよ、この店じゃあ」


 と、嫌みのように刺身を食ってみせる夕弌に何にも言えなくなる。……焼けば食えるよ!と内心でそんな負け惜しみを発しながら、俺は黙ってそうめんをすすった。


「そういえばお前、少し噂になっとたぞ」


「噂?」


「ああ、そういえば」


 夕弌が食事の手を止めることなく、話を振ってくる。心当たりがあるのか実夏夜も頷いた。


 そういえば田舎ってネット並みに噂が広まりやすいってアニメとかドラマで聞いたことあるな。しかも大抵個人情報が筒向け過ぎて若干ホラーっぽいんだよな。


 さて、俺は一体どんな噂がこの田舎島に広まっていて、背筋を凍らせることになるんだろうか。


「というか、ずっとサッカー部の方ば今日ずっと見っとったよね? それで、その皆『アレは(だる)か』で、オレが少し話とったばってん、よかった?」


「お前が噂の発信源なわけ? なんて話した?」


「別に、最近きた人とか、三年やばってん二学期から学校くるとか。じいちゃんの世話で家族できたとか……その辺ば」


「まあな」


 実夏夜の場合は俺がサッカー部を見学している所を発見されて、俺について軽く説明したってことか。まあこのくらいなら特段驚くようなことはない。続けて夕弌もゆで卵を一口で呑み込んで話してくる。


「俺も似たようなもんだよ『あのイケメン(だる)』とか。そんな感じ」


「……え、それだけ?」


「他になんがあっとや?」


 夕弌は面倒くさそうな顔してもう一つ卵を呑み込んだ。というかさっきから思っていたんだが、卵を呑み込むとか蛇かコイツ。


「いや、こういう田舎かってネット並みに噂が広まるのが早いって」


「検索に引っかからんくらいに、お前の知名度がなかだけやろもん」


「いやいや、この場合むしろ今引っかかっているんでしょ?」


「やったぜ! この島のトレンド入りだぜ!」


「………トレンドってなん?」


 想像以上に俺の話題自体は広まっていないようだ、肩透かしというかなんというか……、まあ、変に噂されることないならそれならそれで。


 そんな馬鹿なやり取りをしつつ、楽しい食事が続く。食べるよりも喋る方に口が動く食事を勧めていくと、ガララ、と戸が開く音が聞こえて店に客が入ってくる。丁度、店の出入り口の向かい側の席に座っていたのでその客の様子が見える。


(あ……)


 客は二人で、女親子で、数時間前に出会った、あのサングラスの親子だ。


 サングラスの親子は「あれガラガラだ」「今営業中よね?」と店内を見渡している。ワンテンポ遅れて「いらっしゃいませ」とお兄さんが対応する。


「二人なんですけど、今大丈夫ですか?」


「はい、お好きな席へどうぞ」


 店が営業中だと知り、ホッとした顔をする母とOKだと分かるとすぐさまカウンター席へと腰かける。


「ここは夜がメインなんで、昼は観光客くらいしか来ないんですよ」


「すいません……」


 ニコッと人優しそうな笑顔で応対するお兄さんだが、笑顔の裏では静かなる圧を感じさせるもの。それを感じ取った母親は申し訳なそうな顔をする。……すいません、俺も同じこと考えてました。


 ここに立ち寄る以上お兄さんを怒らせてはいけない、と俺は心に決める。笑顔で怒れるタイプの人はガチで怖い人だ。


 そんな様子を眺め、ひそひそと夕弌達に問いかけた。


「なあ、ここって烏頭ヶ岳って所があるって聞いたんだけど、それって歩いて一、二時間程度……あ、往復で、それくらいで行けるの?」


「烏頭ヶ岳? あそこは梅雨時期で土砂が崩れたけん、今は登れんぞ」


「俺らは走ったりするときは一時間くらいだけど、歩けば片道で二、三時間かかる、かからんくらいだよね?」


「まあ、そんなもんだな。実際測ったことねえし。最後に行ったのって二月くらいにやったマラソンか? 記録覚えとらんばってん」


(おる)は小学校のお別れ遠足」


 杉田兄弟はそんな感じで最後に行った烏頭ヶ岳についてあれやこれやと話してくれる。が、俺にとってはそこらへんはどうでもよくて、夕弌の最初に言ってくれたことで俺が疑問に思っていた謎は解けた。


 ああ、だからこんなに早かったのか。


 つまりだ。夕弌たちの話と状況を解釈すると、サングラス親子は登山していたが、途中で土砂が崩れていた現場に辿り着いてしまった。仕方なく下山して、どうするかって話になって本来は夜に行く予定だった俺が勧めたこの店に早めに来たって所か。


 大方の予想を付けながらおにぎりを噛り付く。同時に親子の方もメニューを決まったのか、母親の方が先に答えてからサングラスが後に続くように言う。


「今日は海が凪いでますね」


「ブッ!!」


「おい! いきなりどうした?」


「タオルタオル!」


 思いっ切り吹き出してしまった。俺の突然の奇行に驚く二人、夕弌は汚物を見る目で睨み、実夏夜は慌ててタオルを俺へと渡してくる。


「そがんね。こがん日は泳ぐのが気持ちよかけんね」


 お兄さんは少女の戯言も店員として地元民として綺麗に流す。それに対してサングラスは不敵に笑っていた。……なんでアイツはあんなドヤ顔なんだよ!? 味の違いが分かる風格のグルメ家気どりのつもりか!?


 内心では突っ込みを入れつつ、俺は口元を拭い去る。……よし! 馬鹿やらかす所を見守らねえと。


 一旦落ち着きを取り戻して、サングラスの少女の方を見る。サングラスの少女は俺が特徴から敬称したその代名詞であるサングラスをついに外して流し目で告げる。


「本場の辛いヤツを一つ」


「ブゥ!」


「だからなんなんやお前はさっきから!! なん、あの客がそがん面白かっか!?」


 吹く俺に夕弌はキレ気味に突っ込みを入れてくる。俺は口元を抑えて込み上げてくる笑いを必死に堪える。


 マジで言ったよアイツ、マジで!!


 だけど、夕弌の声が大き過ぎたために三者がこちらへと視線を向けてくる。


「コラ、夕弌! 騒ぐな!」


「おろろ? あ、君は……さっきの」


 見つかってしまった。


 夕弌は、お前のせいで怒られたじゃあねえか、と睨みつけて、お兄さんは「ウチの馬鹿がすいません」とサングラスの母親へと謝罪する。そして、サングラスは。


「どうも、さっきぶり。君の言葉通り食べに来たよ」


 俺達のテーブルにやってきた。サングラスも外して顔がちゃんと見て取れる。童顔の顔立ちで、目は大きく開いて吸い込むような黒い瞳は輝いている印象がある。これまでの事から考えても、育ちのいいお転婆なお嬢様というイメージが相応しいだろう。


 俺は、おう、と答えるとそれ見ていた夕弌から言う。


「なん? 知り合い?」


「友達?」


 夕弌が言うと同時にサングラスの少女も被って俺へと問いかけてくる。俺は「まあ、そうだな」とどちらとも取れる返答をする。


 少女は夕弌と実夏夜の方へと振り返ってはまじまじと見つめては、俺、実夏夜、夕弌と見回してから言う。


「こんにちは」


「……おう」


「あ、はい。どうも」


 三者それぞれ緊張した趣で挨拶を交わす。


 サングラスは笑顔であるが少し強張ったもの、夕弌はぶっきらぼうに、実夏夜は二人に合わせるようにしてそれぞれ反応を示すのだ。


 ………………。


 しばし静寂が訪れる。


 ……なんだ、この空気。いや、分かるけど……。


 少し気まずい空気。


 夕弌と実夏夜に関してはいきなり知らない奴が割り込んできたから困惑するのは分かる。だけど、サングラスよ、お前も気圧されてどうする? 会っても間もないが人見知りするタイプには見えないが……。


 どうしたものかと四人でそれぞれ相手の出方を疑うように膠着状態でいると。


「真理愛いい加減にしなさい、ほらこっちにいらっしゃい。ごめんなさいね」


「あ、いやいや、ウチの馬鹿共が勝手に騒いだだけですから」


 サングラスの母がサングラスに注意して戻るように言いつつ、お兄さんに頭を下げる。お兄さんの方は気にした様子などなく、むしろこちらに非があると店員としての対応を取る。


 全くだ。夕弌と実夏夜の馬鹿二人が変に騒ぐから。ここの身内ではない俺は何一つとして関係ないし、悪くない。


 ほら、こっちに来なさいと母親からもう一度呼び掛けてくる。


「あ、うん……でも」


 けれど、母を言葉に迷いを見せる少女。母と俺らを交互に見比べつつ、眉を寄せて、ん~、と小さく唸り声を上げる。


 そして何か意を決したように告げる。


「あのさ、私もここで……食べていいかな?」


「ここって俺達と?」


「うん」


 駄目かな、と不安そうに訴えかけてくる目をこちらへと向いてくる。俺、夕弌、実夏夜の三人は顔を見合わせてどうする? と相談する。


「……俺はどがんでよかぞ」


 最初に答えたのは夕弌だった。言葉通りで他意はないのか、サングラスに関して特に気にする様子をみせず、黙々と刺身を食べている。


「俺も」


 続けて実夏夜も同意してくる。こちらは愛想のない兄貴と違い、笑顔で応対してくれる。


「だとさ」


 そんな二人に俺も倣った。


 ……本当は少しだけ、本当に少しだけ、思う事がないでもなかった。


 胸に刺さった魚の小骨のような些細なもの。それを無理矢理呑み込んで受け入れようとする。


 まあ、大丈夫だろう、その一言で呑み込んだ。


「え、ホントに? ホントに一緒に食べていいの!?」


「真理愛! 皆さんの邪魔しちゃあ駄目でしょ」


 俺達が了承するとサングラスは身を乗り出すような物凄い勢いで食いかかってくる。それにストップをかけたのはサングラス母だった。


「だけどお母さん! 私も同い年くらいの子と色々と話してみたいって!」


 サングラスも負け時に言い返す。真剣な表情で訴えてくる娘の顔を見てか、困った様子の母。俺達の方を一瞬だけ見詰めてからもう一度サングラスの方へと視線を戻し、迷いつつも最終的に折れたようで、「好きになさい」と諦めるように了承を得る。


 やった! と軽くジャンプして跳ね上がる、小さな子供みたいな行動するサングラスに母が慌てて「こ、コラ、真理愛はしたないでしょ!」と小言が飛ぶ。


 ……正直な話何故、サングラスがここまで真剣だったのかよく分からないが、まあ、知らない人と話すのが好きというタイプの人間なのだろうと適当に納得する。それで粗相をしでかして保護者が困るというパターンか。


 サングラス母は改めてこちらへと振り返って、俺たちに向けて軽く頭を下げた。


「ごめんなさいね。ウチの子の我儘に付き合ってもらって」


「あ~、よかですよかです。むしろウチのバカ(どん)が何かしたらこっちで〆ときますんで」


 返したのは俺達ではなく、お兄さんだった。笑顔の冗談調子で言うが俺にはそうとは聞こえなかった。本気でやりそうだと直感する。


「ハハ、言われているぞ」


「お前も含まれているにきまっとっどもん」


「え、マジ?」


 俺がこのバカ共に含まれるとは一体どういう了見だ!?


 わざとらしく大袈裟に表現してみせると、夕弌は呆れた顔で刺身を摘み、実夏夜とサングラスは小さく笑った。


「で、君の注文はカレーでよかったのかな?」


「はい。本場のから~いヤツで」


「ブゥ!」


「だけん、お前はさっきからなんなんや!?」


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