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そのぼっちはクラスメイトの名前を知る

はあ、もう5時か・・・。

結局、ほとんど眠れなかったな・・・。

でももう起きてお弁当作らなきゃ。


鏑木くん・・・・。怒ってないと良いな・・・。




「彩乃ーーーーーー!!!おはよーーー!」


「あ・・純ちゃん、おはよう・・。フワッ~・・・」


「あらら~?珍しく朝から大きな欠伸ですか~?夜更かしは体に毒だよ~」


「うん。ちょっと、眠れなくてね・・。あはは・・」


「おやおや~?ついに彼氏候補発見ですか~?からの~高校デビュー!!みたいな?」


この純子という娘は、何故にこれ程他人の恋愛ものに鋭い嗅覚を持っているのか?


「い、いや・・。彼氏とか、そんなんじゃなくてね・・。クラスメイトと約束・・・」


「何とーー!!彼氏候補はクラスメイトの男子!!これは、まさにーー!!う・ん・め・いの出会い?」


だから、違うって言ってんじゃないの!!もう!

でも・・・、少しは期待している自分がいるのも否定したくはないかな・・・。


「そう・・。うん。『運命』って言うのがあるのなら、知りたい(・ ・ ・ ・)って初めて思うよ。わたし・・」


「・・・彩乃?」


「えっ?」


「私は、ずっと彩乃の味方だからね?いつでも相談、してね?」


「・・・うん。ありがとう。純ちゃん・・」



純ちゃんと廊下で別れて自分の教室へ入り、椅子に座った。


鏑木くんは・・・、やはりもう来ている!


授業以外、彼はいつも一人静かに読書をしたり、瞑想している様だ。


昨日の自分を思い出す。途端に顔が熱くなるのを感じて、両手で顔を覆った。


もっと・・・、もっとちゃんと伝えられる方法があったはずなのに。


考えれば考える程、心臓の動きが早くなり顔は熱くなる。


「はあ~・・・。すう~・・・。ふう~」


深呼吸をして落ち着こうと試みる。


・・・ああ、でも入るのよ。視界のほんの、ほんの隅っこだけど。


どうして・・鏑木くんの事ばかり・・考えるんだろう・・わたし?


彼を知ったきっかけは、本当に何と言うかドラマみたいなものだった・・。



高校に入学して、初めて電車通学をした日だった。

南口から出ないといけないのに、私は北口から出てしまった。

純ちゃんが居るはずだと思っていた私は、彼女が居ない事で軽くパニックになってしまい、間違った出口だという事すら分からなくなってしまっていた。


『おやあ、お嬢さんお困りですかあ~?』


着崩した学生服に、鞄を肩に背負った不良っぽい3人組が声を掛けてきた。


『いえ、人と待ち合わせしてますので・・。すいませ・・・』


そう言って、横を抜けて行こうとする私の肩を、その3人組の一人が掴んできた


『まあまあ、お困りごとなら俺らが解決してあげっからさあ~?ねえ?』


私は鞄をぎゅっと胸に抱きしめて、その手を振りほどこうと抵抗した。

その時、私の左肘のあたりを掴んで引っ張る力に、吸い込まれる様にフラっと後ろへ半歩移動していた。


『ああ?なんだ、てめえ?』

『どこ行ってたんだよ?探したぞ?』


不良のその声を無視する様に、彼は私にそう言ってさり気なく不良と私の間に体を入れてきた。


『彼女は俺の連れだが、お前らはこの子の知り合いか?』

『ああ?やるのか、てめえ・・』

『何をだ?殺し合いか?俺を殺したければ、それ相応の覚悟でかかって来るがいい』


彼がその言葉を言い終わらない間に、不良の仲間だと思われる人が来て『そいつとやるのは止めておけ』って呟いたのを私は聞いた。

その仲間っぽい人が、私の肩を掴んだ不良に何かを耳打ちすると、チッ!っという舌打ちと共に3人組は何処かへ行ってしまった。


『あ、あの・・あの、あ、ありが・・・ありがとうございまし・・』

『なあ、南口ってどこか知ってるか?』

『えっ?』


二人で南口へ向かって歩いている時に、彼が同じ高校の生徒だと知った。


『何やってんだか~!!このどんくさ娘!』


無事南口に着いたけど、私が純ちゃんに怒られている間に彼はもう居なくなってしまった。

だから。

だから、彼が同じ教室に居て、クラスメイトだと知った時にはビックリした。本当に。

ドラマの様な出会いでも何でもいい。

『運命』ってヤツを信じて・・・みたくなった。



でも・・、この感情が何なのか・・・。


まだ自分自身、分からない。


助けてもらった恩は感じてる(・ ・ ・ ・)


それに、あの時の感謝の気持ちも、まだちゃんと伝えられていない。


私は彼と、どうなりたいんだろう・・・?


どう?って・・・。あ、また顔が熱く・・・。


「・・・い」


クラスメイトっぽく、友達になって欲しいかな・・。


「・・い、おい!」


でもって、少しずつでも・・・進歩していければ・・なんてね。


「おい、お昼だ!」


「!!!!?????」


私が妄想の世界から戻って来た時には、鏑木くんの顔が目の前にあった。


「か、かかかかか、鏑木く・・ん。あ、はい?」


「昨日約束したからな。弁当を見せてやる」


「あ、あ、あ・・。は、はい」


え?もうお昼なの?え、授業ほとんど覚えてないんだけど・・・。

ずっと妄想少女してたの、わたし・・?


「すまんが、お前の名前を教えてくれ!」


「な、なま・・え?私の?」


「お前に決まっている。さすがに『お前』とずっと呼ぶ訳にはいかないからな」


「あ、うん、私は中条彩乃(なかじょうあやの)。あやの、って呼んでくれたら・・嬉しいかな?なんちゃって・・」


「分かった、彩乃。俺は、鏑木鷹正だ」


ぐわ~ん!!!なんて強烈!!??

いきなりの名前呼び・・・。

いや、自分で呼んでって言ったんだけどもね・・。それでもね・・。


「でだ。弁当を見せるのはやぶさかではないのだが、静かに飯を食える場所を知っているか?」


「場所・・・?静かに?」


「ああ。出来れば人が少ない方が助かる」


私は少し思案して、一つの答えを導き出した。


「うん、あるよ!とっておきの場所が!」


あ、純ちゃんに『今日のお昼は一緒出来ない』って言わなきゃ!


出会いの中身がベタ過ぎてすいません。

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