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そのぼっちは今日も気配を消す

明るくて都合の良いぼっち話を書きたくなりました。

こちらもまったりとお楽しみください。

高校生になって初めてのGW明け。


教室では生徒たちが思い思いの過ごし方をしている。


既にこの1カ月程度の期間で、グループは出来上がりつつあった。


俺は、基本的にどのグループにも属していない。


というか、友達と呼べる人間は居なかった。


つまり俺は、世間一般でいうところの『ぼっち』だ。


それ自体は自分で望んでいる事なので、それ程気にはしていない。


俺は中学校時代にまあまあ酷い『いじめ』にあっていた。


だから・・という訳でもないがあまり他人を信用していない。


別に友達が欲しくない訳ではないけど、無理に作るつもりも無いと思っている。


学校に居る時は気配を消している。


幼い頃から習っている居合や古武術により、『気配を断つ』という事が出来る。


これがなかなか『ぼっち道』には都合が良かった。


『ぼっち道』を選択したもう一つの原因があった。


俺は・・・・表情に乏しいのだそうだ。


確かにあまり笑うこともないし、話し言葉も少ない。


そんな俺の姿を見て、初めて会った人間は不快感を覚えるらしいのだ。


そんな事は知った事ではない。


ヘラヘラしている人間が好きなら、そういうヤツとだけつるんでればいい。


そう思っている。




キーーーン コーーーン カーーーーンーーーー コーーーーーン


漸く今日という日が終わりを告げる。


ふうー、と一息ついて気配を戻す。


「うわっ!!」と隣の席のやつがビックリしているが、そんな事は既に日常茶飯事だ。



「タカーー!!一緒に帰ろうーーー?!」


いつもの様に教室の入り口付近で俺の事を呼ぶ声がする。


む、失礼した。俺の紹介がまだだったな。


俺の名前は『鏑木鷹正』(かぶらぎたかまさ)


ここ、私立聖生高校に入ったばかりの1年生だ。



「タカ、何してんのよ。早く帰ろうよー!」


スタスタと教室に入ってきて、俺の横で袖を引っ張っているこの女は『鏑木秋帆』(かぶらぎあきほ)


同じくこの高校の生徒で、2年生だ。


こいつは俺の幼馴染で、従姉弟になる。



「アキ、帰るぞ」


「何言ってんのよ!待ってたのは私の方なんだからね!」


そのやり取りを見ているクラスの生徒たちの視線が痛い。


早く学校を出よう。



「タカー、ちょ、ちょっと待ってよ!早いよー!」


「普通だ」


秋帆はブーブー言いながら俺の後を付いてきた。



「今日は生徒会は無いのか?」


「ええ、今日は議題も無いし、中間考査も近くなってきたので無いわね」


駅に着いた俺達は、ホームで電車を待ちながら話している。


秋帆は生徒会の実行役員をやっている。


本人はやる気が無かったみたいだが、周りからの要らぬ推薦でなってしまったらしい。


俺とは違って、嫌でも目立ってしまうのだ。



「タカもそろそろ友達作ったら?無理にぼっちになる事はないでしょう?」


「ぼっちでも特に問題はない」


「いくら愛想が悪くても、貴方ハンサムだし頭良いんだから一人や二人簡単に出来るのに・・もう」


「お前の様な、容姿端麗・文武両道・才色兼備な人間に言われても嫌味にしか聞こえない」


俺は秋帆にそう言って横を向いた。


実際に、秋帆はスラっと背が高く顔立ちも整っている。


リア充・・・そんな言葉は彼女のためにあるんじゃないかと思う。


告白された人数も今までで、三桁になるのではないだろうか?


悉く振っているみたいだが。


また勉強も出来る。


模試の成績なども常に全国50位以内には入っている。



「タカって、相変わらず自分の評価は極端に低いのね?私が美人だって言ってくれるなら、同じ血が入っているタカがハンサムじゃ無い筈ないでしょう?」


確かに従姉弟だから秋帆の言い分は間違っていない。


しかしもう過去に幾度、いや数え切れない位こんな話題の話しはしてきた。


そして幾度となく、俺は他人から人格否定の攻撃を受けていた。


だからと言って、家族や親族が嫌いな訳ではない。


人間という『生き物』が信用出来ないだけなのだ。



「電車が来たぞ」


ヒューという風切り音と共にホームへ入ってきた快速電車を眺めていた。


電車に乗り込む。


家の最寄り駅まで約50分。


俺は気配を断っていた。


秋帆も一言も話そうとはせず、そっと俺の隣に座っているだけだった。



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