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 今日もしっかりと投稿することができました。

 こんな拙い小説ですが、付き合ってくれれば幸いです。


 それでは、よろしくお願いします。



「「あははははは……」」


 自虐ネタで盛り上がる侍とトゥッリタ。そんな二人をよそにブリタニアは、この絶望的な状況に頭を抱えていた。



 ――ちゅどーん。



 そんな中、耳をふさぐくらいの爆発音が戦場を包む。皆がその音をする方向を見てみると、燃え盛るTigerⅡの亡骸があった。

 そしてその爆風から飛び出してくる一つの影。


「おお、あれは」

「まさしくボクたちの言ったことを体現するってやつだね。でも良くやるよ、マリー」


 ブロォオオオオン、という音を響かせながらそれは戦場をかける。

 ネイビーカラーの車体。二輪で走行し、頭に大きなライトが一つとそれに付随するハンドル。横から見るとUの字を描く車体。

 その姿はまさしくスクーター。


 だが、蛇足のように何かが引っ付いていた。

 股から風除け版に向かって飛び出すようにつけられた筒。車体側面にも筒のようなものがある。

 それは、バスーカ・ベスパの愛称で親しまれる、スクーターに無反動砲を付けちゃった兵器である。


「二度その車体を私に見せない事ね!」


 ベスパにまたがり、燃え盛るTigerⅡに中指を立てるマリアンヌ。

 自由の女神は、ここでは般若と化していた。


「ほら、マリーだってやっているではありませんか。次はあなたたちの番ですわ」

「いや、何言ってるでござるか」

「あんなことボクたちに求めないでよ」


 その様子を見てブリタニアが同じことを勧めてくる。しかし、二人は頑固としてどれを拒否した。


「ですから、なんでですのよ」


 ブリタニアは癇癪を起すように文句を言ってくる。

 それを見て、理由を説明しようとした二人の目にある光景が飛び込んできた。


「よくも同志カッコカリを!」

「きゃっ」


 装甲などあるはずもない車体にまたがる無防備なマリアンヌの柔肌に凶弾が刺さる。T-34の副砲である機関銃のやつだ。あんな生身でちょこまかしていれば当然の結果だろう。


「ああなるでござるからな」

「遠慮するよ」


 爆殺四散したマリアンヌを遠目に見ながら、侍とトゥッリタはお互いの意見に同意する。


「数ではこちらが優位なはずですのになんでですの」


 自分の思い通りにならないことに苛立ちを覚えるブリタニア。

 これだからボンボンは、とそれを見ていた二人は思っていた。


 事実、チーム分けをしたときの人数差は圧倒的にブリタニア側が多かった。しかしそれは、力のバランスをとっただけに過ぎない。

 正直に言うと、ベロリナ・ルーシ対その他の人でやってようやく拮抗する状態だったのだ。


「むきぃー」


 しかし、彼女はそれが分かっていなかったのだろう。数の多いほうが有利。ただそれだけで勝敗は決したと思っていたブリタニアは、今まさに負けかけている状況に納得できなかった。


「数で勝てるのであれば、今ごろ世界は赤く染まっていたでござるな」


 その考えに異論をはさむように侍はつぶやいた。となりにいるトゥッリタも、うんうんと頷いている。


 そんなことをしている間に、ルーシはこちらに迫ってくる。

 サミュエルはどうしたでござるか、と侍は思い見渡してみると、爆殺四散はしていないがほぼ戦闘不能のM4 Shermanが視界に入る。


「ブリタニア殿、あれに勝った経験は?」

「ないですわよ! そもそもあの時は味方でしたし、そのあとも直接ぶつかったことはありませんわ」

「だよね~」


 二人の頭に降参することが思い浮かぶ。しかし、それを目の前の女王陛下は許してくれるだろうか。そんな心配が頭に浮かぶ。


「こうなったら仕方ありませんわ。これを使うしかなさそうですわね」


 苦肉の表情で何かを取り出した。


 一・八トンの炸薬を本体に詰め、直系三メートルの車輪でサンドイッチにされたボビン状の鉄の塊。

 まず、この形から頭おかしいと言わしめるそれには、小学生が考え付きそうなアイデアが詰まっていた。


 車輪のリムに筒状のものがある。

 固形燃料のロケットモーター。

 推進力をもって回転させればいいじゃないか、と言わんばかりのもの。


「そ、それは……ッ」

「パ゛ン゛ジ゛ャ゛ン゛ド゛ラ゛ム゛~」

「ダミ声かどうかで、年齢がばれるらしいでござるよ」

「う、うるさいですわ。あなたに言われたくはないですわね」


 なにかの声真似をしながらブリタニアが召喚したそれは、知る人ぞ知る最強兵器(笑)のあれだった。


「行きなさい、パンジャンドラムよ。女王陛下に加護をもたらしてくださいまし」


 イギリスにはまともな物理学者はいなかったのかと疑いたくなる構造をそれはをしていた。


「ああ! 空回りを始めましたわ」


 直接推進力を与えるのではなく、あくまで車輪と地面の摩擦で動かすそれは、砂場などの摩擦が低い場所に入れば空回りし始めるのは自明の理。


「なんか違うところに」


 ジャイロスコープなどの方向を安定させるものも搭載されておらず、まずもって目標に命中しない。


 そして、最大の欠点があった。


「こ、こっちに戻ってきますわ」

「なんででござるか」

「に、逃げないと」


 二つの点じゃ面固定できないだろ、というごく普通の知識まで欠如して作ったそれは、時たま自分のほうに戻ってくるのだ。


「ちょっと、待ってくださいまし」

「自業自得故」

「一人で散ってよ」


 チハ・豆戦車ともども、紙装甲だが移動は早かった。特に逃げ足は一流。

 だが、重戦車であるChurchillⅦは――とてつもなく遅かった。


「末代まで呪って差し上げますわァ」

「物騒なことを言わないで欲しいでござる」

「そうだ――」


 がちゃん。


「……」


 その言葉に対して言い返す侍とトゥッリタだったが、足元から変な音が聞こえて硬直する。

 キュキュキュキュキュキュ、といった音がCV-33の元から聞こえてくる。見てみると、突起に乗り上げて立ち往生していた。


「わたくしを見捨てた罰ですわ」

「いやー。助けて、侍」


 ある程度の山岳地帯での戦闘を想定したチハとは違い、CV-33は市街地戦を想定されている。

 そんな車体が、爆発の痕跡が多く残る戦場でむやみやたらに走ればこんなことにもなるだろう。


「時にはあきらめも肝心。さらば」

「み、見捨てたね。僕たちは同志ではなかったのかい」

「元、でござるよ」

「卑怯者、薄情者、この万年童貞」


 侍の判断は早かった。助けられないと見るや、素早くその場を後にした。

 仲間を見捨てるのは心が痛むと言いながら、その行動に迷いは見受けられなかった。


「化けて出るか――」「覚えてなさ――」


 しゅうっ、という音に声が吸い込まれ、次の瞬間には爆発が起こった。さすが陸上爆雷と言った感じの威力だ。

 まさに、すばらしい兵器と呼称するだけはある。敵を狙ってくれれば。


「そして誰もいなくなったでござるな」


 混沌とした戦場で侍はぽつりとつぶやいた。虚しい戦いだったと。


「こんなので体育祭がどんなのか分かるでござるか?」


 そんな疑問が体中を巡っていくが知ったことじゃないということに侍は気付き嘆息する。


 そして振り返ると、



「Хорошо」



 T-34の砲塔がこちらを向いているのが見えた。


 ここまで読んでいただきありがとうございました。

 明日も昼頃には投稿したいと考えていますのでよろしくお願いします。


 よろしければ、評価や感想をよろしくお願いします。

 作者のモチベのためにぜひ!

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