シリウスの過去
「「大翔、おめでとう!」」
僕の目の前にはホールのケーキとその上に刺さった10本のろうそくがあった。
「すぅ~~、ふぅ~~~~」
大きく息を吸った後ろうそくに灯っていた火に向かって大きく息を吐いた。
ろうそくの火が消え真っ暗になった。お母さんが電気をつけようと立ち上がった。その時…。
パリィィーン
ガラスが割れるような音がした。その音に家族一同は驚き音がした窓の方を見た。
そこには手に包丁を持った男の人が一人立っていた。その男は一番近くにいたお母さんを掴み首元に包丁を当て言った。
「お、おい、この女を殺されたくなければ金を持ってこい」
「キャーー、やめて、離して」
お母さんは必死に抵抗をした。しかし男の手から離されることはなかった。
「やめろー、手を放せ!」
お父さんは、男に飛び掛かっていった。その時。
ブシャーーーー
お父さんの左胸から血が噴き出していた。
飛び掛かった際に男の握っていた包丁が胸に刺さってしまったようだ。そして同時にお母さんの首からも大量の血が出ていた。
そしてお父さんとお母さんの全体重が男に乗り男は倒れるとともに僕の両親の下敷きになっていた。
僕はただその光景を見ていただけ、その場からは動けなかった。
倒れた男は両親を退かそうとしていたが動かないようだった。
そしてすぐに外からサイレンの音がして警察の人がやってきた。
「警察だ!窓ガラスを割っている人がいたと通報があった!」
警察の人は僕の両親の死体の下敷きになりもがいていた男を見てすぐに取り押さえた。
後に来た警察の人は座ったまま何もできなかった僕を見つけて近づいてきた。
「君、大丈夫か!怪我はしてないか!」
僕は警察の人を見て一言言った。
「お父さんとお母さんは?」
警察の人は男を取り押さえた人の方を見た。取り押さえていた人は首を横に振った。
警察の人は何も言わず僕を抱き寄せた。
「ごめんな、おじさん達がもう少し早くについていれば…」
僕はしばらくしてやっとお父さんとお母さんが殺されてしまったことに気が付いた。
「おとうさん、おかあさん、な、なんで…」
気づいた途端涙が溢れてくる。
そうしてしばらく泣き続けた僕は疲れ果て眠ってしまった。
◆
「……ここは」
そうだ、昨日オードと戦った後ミナとカナとそのまますぐに帰ったんだった。
ミナとカナのもとに戻った時すごく心配されていたな。考え事をしていたから何を話していたかあまり覚えていないけど悪いことをしたな…。
それにしても…
「この夢を見たのも久しぶりだな…」
僕の頬には目から零れた一粒の雫が伝っていった。
「…涙、泣いたのはあの時以来だな」
涙を拭おうとしたとき、ガチャン、とドアの音がした。
「シリウス、起きたのね、おはよう」
「…おはよう」
ドアが開いた後そこに立っていたのは、ミナとその後ろから顔を出したカナだった。
「二人とも、おはよう」
「元気そうでよかったわ…ってあなた泣いてたの」
「怖い、夢、見たの?」
ミナはクスッ、と少し笑い、カナは心配しながら二人は僕の方に近づいてきた。
「怖くはないけど、夢は見たよ」
僕は涙を拭って二人に言った。その時の二人は同時に首を傾げそれを見た僕は顔が緩んでいた。
「何よ、私達を見てニヤニヤして」
「いや、なんでも」
やっぱり、もっと強くなってオードにも勝てるようにならないと、守れる力が欲しい。今の家族もこうした友達も…、失いたくない。
【《加護:メニュー》が、《メニュー》になりました】
【《メニュー》のレベルが上がりました】
僕の頭の中でメアちゃんとは違う声がした。
なんだこれは、《加護:メニュー》が《メニュー》に変わった!?全く分からない。
メアちゃんこれどうなってるの?
【…………】
あれ?メアちゃんが何も返してこないのなんて初めてだ。
「どうしたの?シリウス」
「大丈夫?」
少しの間何も言わずボーっとしたいた僕を心配して二人が僕の顔を覗いてきた。
「あぁ、だい…じょう…」
二人に返事をしようと声を出したら、いきなり睡魔が襲ってきて意識を手放した。
そして僕がいたのはこの世界に来る前に訪れた真っ白な空間だった。