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異界調整官 ~異世界で官僚、奮戦す~  作者: 水乃流
第五章

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アンナさんの実力

 人でできた囲いの中から一歩前にでたアンナさんの姿を見て、最初はちょっと戸惑った表情を浮かべた大男は、すぐ顔に嘲笑を貼り付けた。嫌らしい笑い方だ。


「Get out, little Girl, Huum?」


 嫌らしい笑いを顔に貼り付けたまま、男はシッシッと犬を追いやるように手を振った。それに対し、アンナさんは一言。


私、あなた、嫌い(I hate you)

「Want to die?」


 アンナさんの素直な感想は、男の気に障ったらしい。少しいらだったような見せると、いきなりアンナさんに向かって踏み出した。大きな身体からは想像も付かないくらい、速い。男は踏み出した勢いのまま、アンナさん目がけて腕を振り下ろす。頭を狙った、躊躇いのない拳。思わず悲鳴をあげそうになる。だけど、その一撃は、彼女に当たることはなかった。


「Damn it!」


 自分の拳がアンナさんを捉えられなかったと判るや、男はすばやい動きで腕や脚を振り回す。風切り音だけじゃなく、風圧さえも感じるかのような猛攻。だけど、アンナさんにはかすりもしない。いや、当たっちゃう、と思うようなギリギリのタイミングで避けているので、かすったりしているんじゃないかと、見ているハラハラしてしまう。


 しばらくして、ハンマーの攻撃が止んだ。少し息が上がっているようにも見える。超然と立っているアンナさんとは対照的だ。


終わった?(Done?)


 これまで私たちの前では、あまり表情を変えなかったアンナさんが、さっきのお返しと秤に微笑みを浮かべながら大男を煽った。男は無言で返す。さっきまでとは雰囲気が変わった。表情から笑いが消えている。そして、無言のままアンナさんに向かって、ボクシングのような構えを取ると、軽やかなステップを踏みながらすばやくパンチを繰り出していく。それをアンナさんが、華麗に避ける。


ハンマーが、ひときわ大きいモーションで左のフックをアンナさんの顔目がけて撃つ。避けるアンナさん。でも、その眼前に男の右ストレートが迫る。


 バシッ!


 アンナさんっ! アンナさんに男の拳が当たったと思った瞬間、アンナさんは男の腕を抱えるようにすばやく身体を捻り、するりと男の背後に立った。なんて身軽なんだろう!

 男は、振り向きざまにアンナさんを殴ろうとしたけど、アンナさんはすでに離れた場所にいる。男が再びアンナさんと向き合う。その左腕は、なぜかだらんと垂れ下がっている。まるで脱臼したみたいだ。


「Fxxxxxxk you!」


 汚い言葉を吐き出しながら、男がアンナさんを睨みつける。アンナさんは、それをニッコリ笑って受け流した。


「アンナ~とっとと終わらせるっす」

「了解」


 そう言うと、アンナさんは男に向かって右手を突き出し、クイクイッと手招きした。あ、映画とかで見る奴だ。


カモン(C’mon)、うすのろ野郎」


 日本語が分からなくても、馬鹿にされたことは判ったのだろう。雄叫びをあげながら、右腕を広げてアンナさんに向かって突進した。それを迎え撃とうと、アンナさんが構えたとき、男はいきなり方向を変えて、私たちに向かって飛びかかって来た!

 すかさず私を庇うようにヴァレリーズさんが、されにその前に《パム》が割り込む。アンナさんも、男を追おうと身を翻す。その瞬間、男はさらに方向を変えてアンナさんにタックルしていった!


「!」


 アンナさんが捕まった! でも、それは幻視だった。アンナさんが男の目の前から消えたと思ったら、股の間をくぐり抜けて男の背後に現れた。一瞬だった。


「Greaguaaa!」


 まるで魔物(クリーチャーズ)のような雄叫びをあげて、大男は男はがっくりと右膝から崩れ落ちた。地面に倒れた男は、なおも顔を巡らせ見つけたアンナさんを睨み付けた。


「Gat「もうお終い」」


 アンナさんがハンマーの太い頸を軽く叩くと、彼は白目を剥いて気絶した。


「アンナさん……何したの? 殺してない……よね?」

「さすがにこれだけの警官がいる前で殺したりしないっすよ。気絶させただけっす。あ、アンナは銃よりも暗器の方が得意で。今日は、針っすかね」


 どうやら、針を使って大男を行動不能にしたらしい。アンナ、恐ろしい()


「終わった」

「グッジョブっす。でも、女の子が汚い言葉使っちゃダメっすよ」

「あぅ」


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