手詰まり、からの打開策?
「困った」
B国大使館を(無事に)出た私たちは、再びホテルに戻ってきた
宮崎さんは、報告のために外務省へ戻っている。当然ながら、ヴァレリーズさんの行為は(こちらの世界では)国際的に見ても蛮行で、放置すれば国際問題になってしまう。それを回避するために、根回しをしなければ。ということで、いろいろと動いてくれているのでした。宮崎さんにはご迷惑をおかけします。
それはそれとして。ヴァレリーズさん流の外交(?)によって、B国大使は犯人たちのことを話してくれた。
「まさか、誘拐犯人たちが私たちと入れ違いに逃げていたとはね」
犯人たちが意図したものか、あるいは只の偶然か。
私たちがB国大使館に到着したのと同じ頃、犯人たちは大使館から逃走していたらしい。外から監視していた人たちも、犯人たちが出て行ったことに気が付かなかったようで、汚名返上とばかりに大使館を出入りした車両を虱潰しに捜索してくれている。でも、今の所成果は出ていない。
「インタタスのことは分からないのだが、B国大使館が奴らの目的地では無かったのか?」
「そうなんですよね。警察に居場所を特定されたから? それとも別に目的があって? うーん、わかりません」
B国大使にしても、手元にカードがない状態でゲームをしていたようなもので、何をしたかったのかよくわからない。迫田さんがいれば、推測してくれるのだろうけれど。
「こちらの司法機関も頑張ってくれているのだろう? 後は待つしかないな」
「でも、何か出来ることがあるんじゃないかと、考えちゃうんですよ」
ふと、気が付いた。
「セナさん、アンナさん。戻ってから一言も喋っていないようですけど、体調でも悪くなりましたか? それならば、奥の部屋で横になられていても……」
「ちがうンす」
「ごめん、なさい」
部屋の隅に立っていたセナさんとアンナさんが、いきなり謝ってきた。私たちの目の前で、深々と頭を下げてくる。なんのことよ?
「実は、大使にこれを吹きかけるようアンナに指示したんすよ」
セナさんが、小さな瓶を差し出した。
「これは?」
「自白剤、みたいなもの。そっとスプレーした」
「自白剤って……」
実行犯のアンナさんも、どこか申し訳なさそう。自白剤かぁ。口が勝手に本音を吐くようになるとか? もしそういうことなら、大使のあの態度も納得できる。
「あんな結果になるとは、思わなかった」
「口が軽くなる程度を想定していたんすが……本当に申し訳なかったっす」
あぁ、なんてこと。他国の大使にそんなことしたなんて、ばれたら国際問題だわ。うーん、でも、この子たちもなんとか解決しようとしてくれたのだし、責めるのは違うかな。
「サクラ、彼女たちも妖精のことを考えてやったことだ。それに遅かれ速かれ、私が耐えきれずに同じ事をしていただろう」
「そうですね。でも、宮崎さんには、内緒にしておきましょう」
ヴァレリーズさんも自白剤の影響があったんじゃないか? という疑惑は言わないでおこう。
「それで、罪滅ぼしというわけではないんすが、自分にアイディアがあるっす」
□□□
セナさんのアイディアとは、動画を撮影してSNSで拡散させるというものだった。多くの人たちに、犯人の目撃情報を集めてもらうとセナさんは言うけれど、そんなに簡単に情報が集まるものなのだろうか?
「その点は大丈夫っす。自分のネットワークを、最大限に使うっすよ~。誤情報やガセも集まるでしょうが、そこはフィルタリングしたりなんだりっす」
セナさんの言葉に押し切られる形で、動画を撮影することにした。ヴァレリーズさんに喋ってもらうのかと思っていたら、なぜか私が喋ることに。
「ヴァレリーズさんは画面映えするんすが、音声が翻訳・変換されたやつなんで、こう必死さが伝わらないっす。阿佐見先輩なら、ある程度顔は知られていますし、訴求力があるっすから!」
あんまり、メディア対応してこなかったから、こういうの苦手なのよねぇ。でも、そんなことも言ってられない。
「仕方ない、やりましょう! みなさんに、すがりましょう!」




